ガンビールノキ(英語表記)gambier
gambier catechu
Uncaria gambir(Hunt)Roxb.

改訂新版 世界大百科事典 「ガンビールノキ」の意味・わかりやすい解説

ガンビールノキ
gambier
gambier catechu
Uncaria gambir(Hunt)Roxb.

アカネ科のつる性木本。ガンビールはマレーシアの現地名である。タンニン主成分とするガンビール(阿仙薬(あせんやく)ともいう)をとり,鞣皮(じゆうひ)料,褐色染料薬用などとして使う。日本のカギカズラに似て,茎には鋭いかぎ状突起がある。枝は強靱で折れにくい。葉は常緑で対生し,両端のとがった楕円形で,光沢がある。肉白色の小さい花が集まって球状となる。花冠は筒状で5裂し,花柱は長く飛び出る。果実は紡錘形,長さ約3cmで,縦に裂ける。種子には両端に伸びた翼があり,小さいが多数できる。マレー半島スマトラジャワボルネオに分布するが,古くから栽培されているため,栽培していたものが野生化したものもあり,自然分布はよくわかっていない。おもな生産地はマレー半島南部スマストラ,ボルネオである。葉のついた枝をかくはんしながら煮沸し,浸出液を煮詰めて,よく練りながら冷やすと黄色くなり,粘りがでてきて,粘土状の塊となる。この凝固したものがガンビール阿仙薬と呼ばれ,カテコール,タンニンのほか,ガンビリンなどのアルカロイドを含む。木綿羊毛,絹などを黄褐色に染色するが,綱,網,帆布などに用いることが多い。また収れん剤として薬用とされ,下痢止め,浣腸(かんちよう)などに用い,仁丹など清涼薬品に多く使われる。マレーシアでは葉をキンマといっしょにかんだり,葉を茶の代用ともする。

 なおマメ科Acacia catechu Willd.(英名catechu tree/cutch tree)の心材からも同様の方法で阿仙薬がとれ,アセンヤクノキといわれている。
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百科事典マイペディア 「ガンビールノキ」の意味・わかりやすい解説

ガンビールノキ

アカネ科の木本(もくほん)性の常緑つる植物。東南アジアに分布し,古くから栽培されている。葉は対生し,白色の小さい花が集まって咲く。葉,枝,樹皮の浸出液を煮つめて乾燥させたものがカテコールやタンニンを主成分とするガンビール(阿仙薬)である。収斂(しゅうれん)剤として,下痢どめ,浣腸(かんちょう)などの薬用とされ,仁丹(商品名)などの清涼薬品に使われる。また,皮なめし料,染料のほか原産地では茶の代用にもされる。

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