イギリス国教会(イングランド教会)の聖職者、社会改革者、作家。モーリスの影響を受けて社会改革に強い関心をもち、協同主義に基づくキリスト教社会主義運動を始め、数多くの小説を通して啓蒙(けいもう)に努めた。オックスフォード運動には否定的で、ローマ・カトリック教会に改宗したニューマンを批判したが、ニューマンは『わが生涯の弁明』(1864)によって反論した。児童文学の分野では『水の子』(1863)などで知られ、日本でも、片山潜(かたやません)による最初のセツルメント事業の拠点であるキングスレー館建設(1897)で知られるように、初期社会主義運動に影響を及ぼした。
[八代 崇 2018年1月19日]
イギリスの牧師,小説家,詩人。ケンブリッジ大学卒業後ハンプシャーの片田舎の牧師となり,過労と病気に悩まされながら,創作,社会改良運動,博物学の講演など精力的な活動を続けた。ケンブリッジ大学の近代史教授を務めたこともある。彼は若くしてカーライルの産業社会批判と,〈キリスト教社会主義〉を唱えたJ.F.D.モーリスの影響を受け,社会問題をテーマとした小説《イースト》(1848)および《オルトン・ロック,仕立屋詩人》(1850)を書き,農村やロンドンの貧民たちの生活を迫力をもって描いた。しかしチャーチズムの衰退後は5世紀のアレクサンドリアを舞台とした《ハイパシア》(1853),エリザベス時代のスペインとの戦いを描く《西へ出航!》(1855)などの伝奇的歴史小説,貧しい少年が海中の生活を送るファンタジー《水の子たち》(1863)などに転じた。愛すべき小品詩人でもあり,外山正一らの《新体詩抄》にも1編が収められている。
執筆者:海老根 宏
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…ただし名称も概念もはっきりした規定はない。最初イギリスで,広教会に属するモーリスF.D.MauriceとキングズリーC.Kingsleyとが市民社会の個人主義と功利主義に反対して,自由・平等・兄弟愛による〈神の国〉の理想を掲げ,これは聖書・洗礼・聖餐に対応する倫理であると唱えた。その際R.オーエンやサン・シモンの社会主義の影響があったと見られる。…
…ただし名称も概念もはっきりした規定はない。最初イギリスで,広教会に属するモーリスF.D.MauriceとキングズリーC.Kingsleyとが市民社会の個人主義と功利主義に反対して,自由・平等・兄弟愛による〈神の国〉の理想を掲げ,これは聖書・洗礼・聖餐に対応する倫理であると唱えた。その際R.オーエンやサン・シモンの社会主義の影響があったと見られる。…
…しばしば子どもたちの実態を小説に描いたC.ディケンズは《クリスマス・キャロル》を1843年にあらわし,E.リアは滑稽な5行詩による感覚的なノンセンスの楽しみを《ノンセンスの本》(1846)にまとめた。 空想の国へ子どもをさそうファンタジーは,C.キングズリーの《水の子》(1863)を経て,L.キャロルの《不思議の国のアリス(アリス物語)》(1865)でみごとな花をさかせた。少年小説もまたT.ヒューズの《トム・ブラウンの学校生活》(1857),R.バランタインの《サンゴ島》(1857),ウィーダOuidaの《フランダースの犬》(1872),シューエルA.Sewellの《黒馬物語》(1877)のあとをうけて,R.L.スティーブンソンの《宝島》(1883)で完成した。…
※「キングズリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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