オックスフォード運動(読み)おっくすふぉーどうんどう(英語表記)Oxford movement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オックスフォード運動」の意味・わかりやすい解説

オックスフォード運動
おっくすふぉーどうんどう
Oxford movement

イギリス国教会における信仰復興運動。19世紀初頭、無能な国教会首脳部にかわって、一連改革を押し付けようとした政府に反発したオックスフォード大学教授キーブルによる「国家的背教」と題する説教(1833)によって始められた。キーブルとその同調者らが『時局小冊子(トラクト)』Tracts for the Timesを刊行し、教会理解の深化による体質改善を訴えたため、「トラクト」運動ともよばれた。イギリス国教会が使徒継承による真のカトリック教会の枝であり、俗権の干渉を受けない霊的存在であるとするその主張は、政府、新聞だけでなく、教会の権威聖奠(せいてん)を軽視しがちな国教会内の低教会派や、キングズリーのような自由主義的傾向をもつ広(こう)教会派の人々から厳しく批判された。しかし、無気力な当時の国教会に活気を与え、礼拝に荘厳さを取り戻し、聖職者の教育および道徳の水準を高め、労働者や貧民に慰めの手を伸べ、海外伝道を積極的に推進するなど、この運動が国教会の自己革新と信仰復興のために果たした役割は大きい。

八代 崇]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オックスフォード運動」の意味・わかりやすい解説

オックスフォード運動
オックスフォードうんどう
Oxford Movement

トラクト運動 Tractarianism,ピュージー運動 Puseyismともいう。 19世紀にオックスフォード大学を中心に起ったイギリス国教会内の刷新運動で,カトリック的要素の復活によって,国教会の権威と教権の国家からの独立回復を目指すアングロ・カトリシズムの運動。 1833年キーブルの説教が改革の機運をつくり,J.ニューマンを主に,時局小冊子"Tracts for the Times"を刊行して世論に訴え,ピュージーもこれに参加。 41年反プロテスタント的内容が反発を招きトラクトは終刊,理論的指導者ニューマンはローマ・カトリック教会に帰正。一方ピュージーはキーブルとともに国教会を固守,運動の精神を継いで実践活動に努めた。国教会の権威を取戻させ,礼拝に生気を与えた点で,この運動は評価される。

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