ギュイヨー(英語表記)Guyau, Jean Marie

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ギュイヨー」の解説

ギュイヨー
Guyau, Jean Marie

[生]1854.10.28. ラバル
[没]1888.3.31. マントン
フランス道徳宗教哲学者,美学者。生の哲学を代表する一人。 19歳で道徳政治科学アカデミー賞を受賞し,翌年コンドルセ高校で哲学を講じた。胸を病み 33歳で夭折したが,道徳,芸術,宗教,教育の分野に重要な作を残した。主著義務制裁もなき道徳』 Esquisse d'une morale sans obligation ni sanction (1885) で彼は,進化論の批判に立脚して創造的で利他的な生の力を道徳の原理とし,義父 A.フイエの観念力の思想を発展させた。『社会学の立場より見た芸術』L'Art au point de vue sociologique (89) では美を生の力の表現とみ,芸術によってわれわれは普遍的生にあずかるとして,生の拡張の場である社会のなかで芸術を考察すべきことを主張して美学史上新境地を開いた。彼の道徳論,宗教論はニーチェに影響を与え,『時間論』 La genèse de l'idée de temps (90) はベルグソンに先駆した。また詩人として"Vers d'un philosophe" (81) を残している。他の著作"L'irréligion de l'avenir" (87) ,"Education et hérédité" (89) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「ギュイヨー」の解説

ギュイヨー
ぎゅいよー
Jean Marie Guyau
(1854―1888)

フランスの哲学者。のちに義父となるA・フイエに学ぶ。19歳のときエピクロスおよび功利主義道徳の研究によってフランス・アカデミーより賞を受けた早熟の天才。しかし肺結核のため夭折(ようせつ)した。進化論的世界観の立場にたち、進化の根本的原動力として生を考えた。生はそれ自体が原因かつ目的であり、自由に発展し、拡大していく。生の進化は各個人の連帯性の進化であり、これは同時に道徳、宗教、芸術に共通の原理である。たとえば道徳においては、義務からの道徳であるカント的道徳は、生命の溌剌(はつらつ)たる展開、発展を阻害するとみなし、かわりに義務なき道徳を提唱した。彼の生中心の考えは、後の「生の哲学」にも影響を及ぼしている。著書に『義務も制裁もなき道徳の素描』(1885)、『将来の無宗教』(1887)、『社会学的見地よりみた道徳』(1889)などがある。

[足立和浩 2015年5月19日]

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精選版 日本国語大辞典「ギュイヨー」の解説

ギュイヨー

(Jean Marie Guyau ジャン=マリー━) フランスの哲学者。社会連帯性の方向を目ざす生の原理に立ち、義務と制裁のない道徳を提唱。また芸術を生に基づく社会的共感の発現とみなした。主著「社会学上から見た芸術」「将来の無宗教」など。(一八五四‐八八

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デジタル大辞泉「ギュイヨー」の解説

ギュイヨー(Jean Marie Guyau)

[1854〜1888]フランスの哲学者・詩人。スペンサーらの進化論哲学と生の哲学とを結合する立場から生の本質と発展をとらえようとした。著「義務も制裁もない道徳」「社会学的見地からみた芸術」など。

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世界大百科事典 第2版「ギュイヨー」の解説

ギュイヨー【Jean Marie Guyau】

1854‐88
フランスの道徳哲学者。《義務も制裁もなき道徳》(1885)を主著とする。生物進化の動因たる生は本質的に自己を外部へと拡大させてゆくものであり,そのさい利他性にもとづいて社会的な連帯が意識されるようになるという。同じ見地から美も生の表出であり,芸術の目的は人々を広い生活に参入させることにあるとして《社会学上より見たる芸術》(1889)では芸術と社会の緊密な相関を論じた。【細井 雄介】

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