翻訳|Creole
スペイン語ではクリオーリョcriollo。クリオーリョの原義は〈育てられた人〉で,16世紀には新大陸生れの純粋のスペイン人を指す言葉として用いられた。その後,この言葉は拡大解釈され,ヨーロッパ以外のさまざまな植民地で生まれたヨーロッパ人,とくにスペイン人の子孫に用いられたが,イスパノ・アメリカの大部分においては,やはり新大陸生れのスペイン人を意味していた。しかし,時の経過とともに,他国出身であっても,新大陸で生まれた者,新大陸に定着した者を指す言葉としても用いられ,アフリカから連れて来られた黒人と区別するため,新大陸生れの黒人がクリオーリョと呼ばれることもあった。
これに対しスペインで生まれたスペイン人はペニンスラール(半島生れ)と呼ばれ,ガチュピンやチャペトンという蔑称で呼ばれることもある。彼らは高位聖職者,高級官吏,御用商人などとして新大陸へ来ていた。
植民地時代初期,スペイン王室はエンコミエンダの恒久化や原住民に対する民事・刑事両裁判権を求めるクリオーリョを王権を揺るがす危険な存在とみなし,彼らに支配権や重要な官職を与えなかった。しかし,やがて大土地所有者や鉱山所有者となったクリオーリョはその子弟をヨーロッパへ送り,そこで教養をつませた。その結果,自由主義思想にふれたクリオーリョたちは,依然として聖俗両界において最高権力を握っていたペニンスラールに不満を抱くにいたった。こうして,19世紀初頭にスペインからの独立を目指す戦いがクリオーリョを中心に勃発するが,クリオーリョの目的はあくまで自己の権益を守ることに向けられ,原住民や混血(メスティソ)はそのために利用されたにすぎなかった。
執筆者:染田 秀藤 クレオールはアメリカ合衆国では,ルイジアナ地方に植民したフランス人やスペイン人,およびその血を純粋にうけつぐ者をさす。ニューオーリンズを建設し,奴隷労働の上に優美なフランス的文化を育てた人たちが,その中心をなす。後には,フレンチ・インディアン戦争(1755)で,フランス領カナダのノバ・スコシア地方を追われてきた〈ケージャンCajun〉と,本来の植民者を区別する言葉としても用いられた。しかしクレオールという言葉はしばしば誤用され,フランス系やスペイン系と黒人との混血を意味するようにもなった(日本でもこの意味が通用している)。ルイジアナ購入(1803)以後,アメリカ人が大量に進出,クレオールはしだいに少数派におちいったが,排他的な努力をして,彼らの文化的優越を守ろうとつとめた。いまでは社会的な勢力を失ったが,風俗,食物,建築に,その文化は生き残っている。かつての彼らの生活は,G.W.ケーブル,L.ハーン(小泉八雲),G.キングらの作品に描かれている。
執筆者:亀井 俊介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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言語接触から生じたピジンpidginが発達して、それを母語とする話者をもつに至ったもの。言語のタイプの名称であって、一言語の名ではない。代表例はハイチのフランス語系クレオールHaitian Creoleなど。言語自体としてはピジンとはっきりした差異はないが、生活のあらゆる面で使用されるため語彙(ごい)が増え、複雑なことを表現できるようになっている。ベースになった言語からみれば、ブロークンだという感じがあり、低く評価されてきたが、近年正書法を確立し、詩や小説などを生み出しているものもある。使用されている地域のほとんどが発展途上国に属するため、目だたないが、けっしてまれな存在ではない。
[桜井 隆]
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…音楽については〈ラテン・アメリカ音楽〉の項を参照。
[言語]
アフロ・アメリカではスペイン,ポルトガル,オランダ,イギリス,フランスなどの植民列強の進出にともない,その母国語と黒人奴隷がもたらした西アフリカ部族語との混合が何世紀かにわたって行われ,その結果,現在クレオール,パピアメント,ニャニギスモなどと呼ばれるいくつかの混合言語が生まれている。クレオール語はハイチ,マルティニク,グアドループなどで話される,フランス語とアフリカ語との混合言語である。…
…多くの研究家がジャズと西アフリカの音楽との関連を探ろうとして失敗したのは,ラテン・アメリカ時代の100年を考慮に入れなかったことと,ジャズが著しくヨーロッパ音楽寄りに発展したためであろう。アフリカからの音楽は,キューバでスペイン音楽と混じってアフロ・キューバン音楽を作り出し,フランス領ハイチではシャンソン・クレオールchanson creoleを作った。そしてこれらを通してアメリカへ渡り,ヨーロッパ音楽との出会いによってジャズとなった。…
…正式名称=セーシェル共和国Republic of Seychelles∥République des Seychelles面積=455km2人口(1996)=7万人首都=ビクトリアVictoria(日本との時差=-5時間)主要言語=英語,フランス語,クレオール語通貨=セーシェル・ルピーSeychelles Rupeeアフリカ大陸東岸約1700km沖のインド洋上にある同名の諸島を中心に構成される共和国。
[自然]
100以上を数える島々は二つに大別できる。…
…フランスがイギリスとの植民地戦争で敗れた62年,ミシシッピ川の西のルイジアナとともにスペインに譲渡されたが,1800年にはふたたびフランス領に戻った。この間,植民者たちは周辺に広大な農園(プランテーション)を開き,奴隷労働をもとにして発展,ニューオーリンズに富を集め,この地にフランス系とスペイン系の混交する〈クレオール〉文化を育てた。 1803年,ジェファソン大統領のルイジアナ購入によって,ニューオーリンズはアメリカ合衆国の領土になった。…
※「クレオール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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