クレブス

精選版 日本国語大辞典 「クレブス」の意味・読み・例文・類語

クレブス

(Sir Hans Adolf Krebs サー=ハンス=アドルフ━) 生化学者。ドイツに生まれ、イギリス帰化細胞物質代謝に関する「クレブス回路」を提唱。一九五三年ノーベル生理・医学賞を受賞。(一九〇〇‐八一

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「クレブス」の意味・読み・例文・類語

クレブス(Hans Adolf Krebs)

[1900~1981]英国の生化学者。ドイツの生まれ。ナチスの迫害で英国に移住。生体内で尿素が形成されるオルニチン回路を発見。さらに、糖が分解してエネルギーを発生させるクレブス回路(トリカルボン酸回路)を発見し、1953年ノーベル生理学医学賞受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「クレブス」の解説

クレブス
クレブス
Krebs, Hans Adolf

ドイツ生まれのイギリスの生化学者.ゲッチンゲン大学,ベルリン大学,ハンブルク大学などに学び,1925年医学博士号を取得.その後,カイザー・ウィルヘルム協会生物学研究所のO.H. Warburg(ワールブルク)のもと呼吸酵素を研究した.1932年フライブルク大学に移り,尿素回路を提唱.1933年ナチスが政権をとるとユダヤ系に対する迫害を避けて渡英し,ケンブリッジ大学のF.G. Hopkins(ホプキンス)の研究室に入る.その後,1938年よりシェフィールド大学薬理学講師,1945年同大学生化学教授,1954年よりオックスフォード大学教授となる.この間,D-アミノ酸酸化酵素の発見やグルタミン代謝を研究し,またピルビン酸オキサロ酢酸が縮合してクエン酸を生じることを示し,ジカルボン酸経路を発展させてトリカルボン酸サイクル(TCA回路,クレブス回路,クエン酸回路ともいう)を提唱した.この業績に対し,1953年F.A. Lipmann(リップマン)とともにノーベル生理学・医学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「クレブス」の意味・わかりやすい解説

クレブス
Hans Adolf Krebs
生没年:1900-81

ドイツに生まれ,イギリスで活動した生化学者。ドイツ語読みではクレープス。ゲッティンゲン大学卒業後,O.H.ワールブルクの門に入り,呼吸酵素を研究。フライブルク大学に移って(1932),哺乳類などで尿素回路(オルニチン回路)を明らかにした(1933)。これは酵素のサイクル反応によって,アンモニアが尿素として放出される過程である。イギリスでG.ホプキンズの研究チームに加わってから,サイクル反応の着想は呼吸の反応にも生かされて,オキサロ酢酸が炭素化合物アセチルCoA)を取り入れてクエン酸となり,二酸化炭素を放出しつつオキサロ酢酸に戻るというクエン酸回路(TCA回路,クレブス回路)の大筋をも確立した(1940)。1954年オックスフォード大学教授となる。53年ノーベル生理学・医学賞受賞した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレブス」の意味・わかりやすい解説

クレブス
Krebs, Edwin Gerhard

[生]1918.6.6. アイオワ,ランシング
[没]2009.12.21. ワシントン,シアトル
アメリカ合衆国の生化学者。イリノイ大学卒業後,1943年セントルイスのワシントン大学で医学博士号を取得。1948年シアトルのワシントン大学で研究生活に入り,1957年生化学教授に就任。その後同大学名誉教授になるとともに,ハワード・ヒューズ医学研究所名誉首席研究員を務めた。その間の 1950年代に,エドモンド・H.フィッシャーと共同で,筋肉がグリコーゲンからエネルギーを得るプロセスを研究し,リン酸化酵素がリン酸基と結合することによって不活性状態から活性状態に転換することを発見,筋肉の収縮にはリン酸化と脱リン酸化のメカニズムが大きく関与していることを示した。リン酸基の付加反応を触媒する酵素キナーゼと,離脱反応を触媒する酵素ホスファターゼの不均衡が糖尿病や癌,アルツハイマー症などの引き金となることを明らかにした。1992年フィッシャーとともにノーベル生理学・医学賞を受賞。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「クレブス」の意味・わかりやすい解説

クレブス

ドイツ生れの英国の生化学者。ゲッティンゲン大学卒。カイザー・ウィルヘルム研究所のワールブルクのもとで呼吸酵素の研究を行う。のちフライブルク大学で動物の尿素生成に関して尿素回路(オルニチン回路)を発見。さらにケンブリッジ大学に移り,呼吸に関係のあるクエン酸回路(TCA回路)を解明した。1953年ノーベル生理医学賞。1954年以降オックスフォード大学教授。
→関連項目ホプキンズ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

367日誕生日大事典 「クレブス」の解説

クレブス

生年月日:1876年8月29日
ドイツの地理学者
1947年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクレブスの言及

【クエン酸回路】より

…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。サイトソール(細胞質基質に相当する細胞の分画成分)でグルコースあるいはグリコーゲンから嫌気性条件下で解糖反応系で生成したピルビン酸が,酸化的脱炭酸反応によってミトコンドリアマトリックスでアセチルCoAを生成すると,次にオキサロ酢酸と縮合してクエン酸が生成するステップから,このクエン酸回路が始まる。…

【クエン酸回路】より

…トリカルボン酸回路(TCA回路),クレブス回路ともいう。イギリスの生化学者クレブスH.Krebsが1930年代の後半に発見した回路。…

【呼吸】より

…呼吸とは酸素が直接に基質を〈燃やす〉のではなく,基質から奪われた水素が酸素と出会うことであるとの理解が,こうして整ってきた。細胞内で水素を授受する機構については,セント・ジェルジなどもモデルを提出したが,H.A.クレブスのクエン酸回路(1937)が正しい回答をあたえた。第2次大戦後の研究の発展で,呼吸の反応成分はすべてミトコンドリアに局在することがわかった。…

※「クレブス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android