翻訳|chromite
クロム(Cr)のもっとも重要な鉱石鉱物の一つ。スピネル族鉱物の一員。磁鉄鉱のクロム置換体に相当する。塩基性岩の長石に乏しい部分や超塩基性岩中に塊状や層状の集合体をなし、大規模な鉱床を形成するほか、これらの岩石に伴われる炭酸塩岩中、特殊な変成スカルンや隕石(いんせき)中に産する。また月表面の月面海玄武岩mare basaltにも含まれる。塩基性岩関係のものは蛇紋石、苦土橄欖(かんらん)石、透輝石などとともに産し、変成スカルン中のものは、石英、透輝石、灰クロムざくろ石などとともに産する(石英と共存しないという従来のいい伝えは誤り)。日本では愛媛県宇摩(うま)郡土居(どい)町(現、四国中央市)の赤石鉱山(閉山)のものの一部がクロム鉄鉱にあたるほか、群馬県高崎市吉井地区でも端成分に近いものがある。命名は、紅鉛鉱中に発見された元素クロムが主成分をなしていることによる。
[加藤 昭 2016年8月19日]
クロムの重要な鉱石鉱物。化学組成はFeCr2O4であるが,多くの場合FeはMgに,CrはAlおよびFeによって一部置換されている。立方晶系。八面体,塊状,粒状。もろい。黒色,金属光沢。モース硬度5.5,比重4.5~4.8(実測値),5.09(純粋なFeCr2O4についての計算値)。条痕は褐色。クロム鉱床は大規模な層状塩基性貫入岩体中に層状をなすものと,造山帯中のカンラン岩体あるいは蛇紋岩化したカンラン岩体に伴うものがある。南アのブッシュフェルト貫入岩体,ローデシアのグレートダイクなどは前者の例であり,ロシアのウラル山脈,フィリピン,トルコ,日本のクロム鉱床などは後者の例である。日本のクロム鉱床としては北海道八田鉱山,日東鉱山,鳥取県広瀬鉱山,若松鉱山などが有名。砂鉱をなす場合もある。隕石中にも産出する。重要な用途は合金用,耐火煉瓦用,化学薬品用である。
執筆者:津末 昭生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
FeⅡ CrⅢ2O4.クロマイトともいう.スピネル族AB2X2に属す.天然には,Fe,CrがそれぞれMg,Alに一部置換されている場合が多い.かんらん岩,蛇紋岩などの塩基性岩,いん石中にしばしば見いだされる.立方晶系,空間群 Fd3m,格子定数 a0 = 0.8344 nm(人工).八面体,または塊状,へき開なし.硬度5.5.密度4.5~4.8 g cm-3.金属光沢,黒色,2.08~2.16.FeのすべてをMgで置換したものはマグネシオクロム鉄鉱(MgCr2O4)といわれる.塊状鉱床,砂クロム鉱床として産出し,合金鉄,二クロム酸,耐火れんがの原料になる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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