クー・クラックス・クラン(英語表記)Ku Klux Klan

翻訳|Ku Klux Klan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

クー・クラックス・クラン
Ku Klux Klan

アメリカ合衆国の,テロリズムを通じて白人至上主義を実現しようとした二つの団体。一つ目は南北戦争直後に結成され,二つ目は 1915年に組織された。略称 KKK。キュー・クラックス・クランとも呼ばれる。19世紀の KKKは元南軍兵士の社交団体として 1866年テネシー州で結成された。組織名は,サークルを意味するギリシア語のキュクロスに由来すると思われる。まもなく,再建法に不満をもつ白人の地下抵抗運動の団体となり,1867年に旧南部全体の組織に発展。構成員は迷信深い黒人をおびえさせるため白装束に身を包み,夜間に解放奴隷や白人支援者を襲って暴行殺害した。連邦議会は 1870,1871年に相次いで KKKに対抗する法を定めたが,南部で白人による支配を回復するという KKKの所期の目的はほぼ達成され,活動は 1870年代に収まった。
20世紀の KKKは 1915年にジョージア州で組織された。ロシア革命や急増する新移民を脅威とみる白人プロテスタントの反発を代弁し,1920年代には 400万人以上の構成員を擁した。十字架を燃やす行為は KKKの象徴となり,カトリック教徒,ユダヤ人,外国人なども敵対的存在に位置づけられた。その後大不況の際に構成員が激減,1944年に一時解散したが,1960年代の公民権運動の際に南部で復活し,爆破・銃撃事件を繰り返した。しかし南部でも民族融和が進むと KKKは孤立し,20世紀末には数千人に減少,さらに分裂を繰り返し,一部はネオ・ナチズムや極右組織に合流していった。(→アフリカ系アメリカ人

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クー・クラックス・クラン
くーくらっくすくらん
Ku Klux Klan

アメリカ合衆国の人種差別主義的秘密組織。KKK(ケーケーケー)と略称される。南北戦争(1861~65)後、共和党急進派主導の南部民主化に抵抗するため、特権を奪われた旧奴隷主が白人大衆を扇動して組織した暴力的秘密結社の一つ。白いガウンと覆面を着け、十字架を燃やす黒人脅迫の儀式は有名。民主党がこれを利用したため、全南部に一挙に広がり、数千の人々を殺害し、傷つけた。彼らの暴力的な選挙介入に助けられ、民主党は次々と勝利、彼らの暴力を取り締まるための連邦法ができた1870年ごろには、クランはすでにその目的を達成し、形式的には消滅する。しかし、黒人に対する暴力的脅迫は日常的社会現象として、その後むしろ強まりさえした。そして、第二次クー・クラックス・クランが第一次世界大戦中に組織され、戦後の社会不安の波にのって急成長した。一時は200万の会員を擁し多数の上院議員、知事らの政治家が公然とクランを名のった。第二次クランは、黒人ばかりか、カトリック系移民、ユダヤ人、東洋人を攻撃し、伝統的価値観を守ると称して全国の中小都市に勢力を拡大した。大恐慌期には、反共、反ニューディールを強調、ナチスと協力したが、戦後支持を失い、一時消滅した。第三次クランは、1960年代公民権運動の最中に再建され、数多くのテロ事件を起こした。一時はFBIの取締りにより活動は抑制されたが、70年代後半以後ふたたび息を吹き返し、活動を継続している。

[上杉 忍]

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百科事典マイペディア の解説

クー・クラックス・クラン

略称KKK。米国のテネシー州で南北戦争後の1865年に創設され,〈白人による支配の復活〉を標榜して南部諸州に広がった秘密結社。白い頭巾とガウンを身にまとい,黒人や黒人支持の白人に対し集団でリンチを加えた。政府に解散を命じられ1870年代に衰退したが,第1次大戦中に,自由主義・社会主義に敵対し反ユダヤ・反カトリック主義を呼号する国粋主義的反動団体として復活,1950年代にも公民権運動の高まりとともに復活した。→黒人問題
→関連項目秘密結社

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デジタル大辞泉プラス の解説

クー・クラックス・クラン

アメリカの白人至上主義団体。南北戦争後の1865年に組織された秘密結社。主に旧南部地域を中心に組織を拡大。顔を隠す白い三角頭巾と白装束に身を包み、黒人や黒人を支援する白人を襲い、集団暴行や殺害を繰り返した。こうした活動は1870年代に一度収束するが、20世紀に入り、黒人だけでなく移民全般を敵視する白人プロテスタントの秘密組織として復活。幾つかの組織に分派しながら、今日に至るまで活動を続けている。略称はKKK。

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