グリルパルツァー(英語表記)Franz Grillparzer

精選版 日本国語大辞典 「グリルパルツァー」の意味・読み・例文・類語

グリルパルツァー

(Franz Grillparzer フランツ━) オーストリア劇作家芸術と人生との対立を描いた悲劇「ザッフォー」ほか、「金羊皮」「海の波恋の波」など。(一七九一‐一八七二

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デジタル大辞泉 「グリルパルツァー」の意味・読み・例文・類語

グリルパルツァー(Franz Grillparzer)

[1791~1872]オーストリアの劇作家。ロマン主義の時代にあって、古典主義への復帰を理想とした。戯曲サッフォー」「金羊毛皮」、小説「哀れな辻音楽師」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「グリルパルツァー」の意味・わかりやすい解説

グリルパルツァー
Franz Grillparzer
生没年:1791-1872

オーストリアの劇作家。ウィーンに生まれ,数回の外国旅行のほか終生ウィーンで暮らした。大学在学中に弁護士の父を失い,後年には母と末弟が自殺するなど,家庭的には不幸であった。控えめで謙虚な人柄であったが,その複雑な性格は女性に対する不幸な関係にも反映し,生涯にわたる婚約者をもちながらも独身を通した。1856年大蔵省を定年退職するまでの43年間,官吏としての生活を送った。芸術的にはゲーテシラーの後継者として自負する彼は,健全な現実感覚によってメッテルニヒを批判したが,その政治的立場は結局保守的な域を越え出るものではなかった。作品の基盤にあるものとして,ウィーン的な要素,カトリックの精神,バロックの伝統も無視できない。デビュー作は26歳のとき発表した運命悲劇《祖先の女》(1817)であった。劇作家として不動の地位を築いた名作《サッフォー》(1818),三部作《金羊皮》(1821),《海の波,恋の波》(1831)は古代ギリシアに材をとり,卓越した心理描写は近代的な陰影に富む。ハプスブルク王朝成立を主題とする歴史劇傑作《オトカル王の幸福と最期》(1825)は,当初検閲による没収憂き目にあった。童話劇《夢が人生》(1834)の成功後,喜劇《噓つきに禍あれ》(1838)の上演失敗は彼に決定的打撃を与えた。彼は深い挫折感を抱き,以後演劇界から完全に身を引き作品の公表も断念する。晩年に至り作品が再演され,ウィーンの名誉市民になる(1864)など,種々の栄誉に輝いたが,隠遁の日を送る老詩人には〈もう遅すぎる〉というのが実感であった。彼の2編の短編小説のうち《ウィーンの辻音楽師》(1847)は,独特の魅力と味わいを持っている。遺稿として残された《トレドのユダヤ女》(1872初演),《ハプスブルク家の兄弟争い》(1872初演),《リブッサ》(1874初演)は,いずれも詩人の成熟した歴史認識を内包する重要な作品である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリルパルツァー」の意味・わかりやすい解説

グリルパルツァー
ぐりるぱるつぁー
Franz Grillparzer
(1791―1872)

19世紀オーストリアの代表的劇作家。ウィーンで弁護士の子として生まれる。父の死後家庭教師をして一家を支え、やがて帝室図書館の見習いを振り出しに1856年まで官吏生活を送る。ゲーテ、シラーをはじめ、シェークスピア、ギリシア古典、スペインのカルデロン、ローペ・デ・ベーガらの文学に造詣(ぞうけい)が深い。ブルク劇場監督シュライフォーゲルに推され『祖先の女』(1817)で認められるが、この作を運命悲劇とみなされた反発からギリシア伝説に題材をとる『ザッフォー』(1818)、三部作『金羊毛皮』(1821)によって名声を確立した。しかし、メッテルニヒ体制の圧力により、イタリア紀行詩『カムポ・ウァチーノ』(1819)、歴史劇『オットカル王の幸福と最期』(1825)、『主人の忠実なる下僕』(1828)などの作品は不遇の目にあう。ほかに『海の波恋の波』(1831)、民衆劇風の『夢は人生』(1834)や『リブッサ』(1848)、『ハプスブルク家の兄弟争い』(1848)、『ユダヤの女』(1851)などの悲劇、喜劇『偽る者に禍(わざわい)あれ』(1838)など。小説では、シュティフターが短編小説の傑作と絶賛した『ウィーンの辻(つじ)音楽師』(1848)、および『ゼンドミアの僧院』(1828)がある。ベートーベンと親交があり、『ベートーベンの思い出』(1844~45)がある。

[佐藤自郎]

『実吉捷郎訳『ザッフォー』(岩波文庫)』『番匠谷英一訳『海の波恋の波』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリルパルツァー」の意味・わかりやすい解説

グリルパルツァー
Grillparzer, Franz

[生]1791.1.15. ウィーン
[没]1872.1.21. ウィーン
オーストリアの劇作家。父は厳格な弁護士で,母は芸術,音楽に関してすぐれた才能をもっていたが,1809年に父が死亡,また母も宗教的妄想にとらわれて自殺。彼自身,ウィーン独特の優雅にして華麗な,しかも一抹の哀愁をたたえた,内気で繊細な性格であった。『祖先の女』 Die Ahnfrau (1817) ,『サッフォー』 Sappho (18) が出世作。しかし,風刺的喜劇『偽る者に災いあれ』 Weh dem,der lügt! (38) が宮廷および警察から圧力を受け,観客にも理解されなかったため,それ以後演劇界の表舞台を退いた。代表作は古代ギリシアに取材した3部作『金羊皮』 Das goldene Vlies (21) で,卓越した心理分析によって複雑な人間の葛藤をみごとに描いた。そのほか『海の波,恋の波』 Des Meeres und der Liebe Wellen (31) ,『リブッサ』 Libussa (72) ,『ハプスブルク家の兄弟の争い』 Ein Bruderzwist in Habsburg (72) など。散文では短編小説『哀れな音楽師』 Der arme Spielmann (48) など。

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百科事典マイペディア 「グリルパルツァー」の意味・わかりやすい解説

グリルパルツァー

オーストリアの劇作家。19歳のとき弁護士の父を失い苦学し,長らく官吏を務めた。ゲーテやシラーの古典主義を理想とし,バロック劇の伝統,ウィーンの民衆劇,当時のロマン主義の影響も受けている。悲劇《サッフォー》(1818年),三部作《金羊皮》(1821年),《海の波,恋の波》(1831年)や歴史劇《オトカル王の幸福と最期》,短編小説《ウィーンの辻音楽師》(1847年)などがある。

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