翻訳|gluon
クォークやその反粒子(反クォーク)を結合させる力を媒介する粒子。物質を構成する素粒子の多く(陽子、中性子、π(パイ)中間子など)は互いに強い相互作用をする粒子でハドロンと総称され、いずれもグルーオンが媒介する力によってクォークや反クォークが結合した束縛系である(グルーは膠(にかわ)の意)。
よく知られるように、光子は電子や陽子などの荷電粒子と電荷を通じて相互作用をして荷電粒子の間の電磁気的な力を媒介する。グルーオンも3種類の「色(いろ)電荷」をもつクォーク、反クォークと色電荷を通じて相互作用をするが、さらにグルーオン自身も色電荷をもつので他のグルーオンとも相互作用をする。グルーオンによる力はクォークや反クォークの間の距離が大きくなるにつれて急激に増大し、その結果クォーク、反クォーク、グルーオンは大きさが10-13cm程度で色電荷のないハドロンの内部に閉じ込められると考えられており、実験室では観測されていない。逆にこの力はハドロンの内部にいくほど減少するため、そこではクォーク、反クォーク、グルーオンはほとんど自由に運動し、この性質は間接的ではあるが実験結果を解析して確かめられている。
荷電粒子の力学が量子電磁力学で記述されるように、色電荷をもつ粒子の力学は量子色力学で記述される。両者とも局所ゲージ変換に対して不変なゲージ理論で、前者のゲージ粒子が光子、後者のそれがグルーオンで、ゲージ粒子の特性としてともに質量はゼロ、スピンは1、パリティ(偶奇性)は負である。光子は電荷をもたないが、量子色力学はクォークの3種類の色電荷の自由度に基づく非可換ゲージ群SU(3)に従うので、グルーオンも8種類の色電荷をもち、その結果前述したグルーオンどうしの相互作用が生じる。
[大槻昭一郎]
『坂井典佑著『物理学基礎シリーズ10 素粒子物理学』(1993・培風館)』▽『藤川和男著『岩波講座 現代の物理学20 ゲージ場の理論』(1993・岩波書店)』▽『南部陽一郎著『クォーク――素粒子物理はどこまで進んできたか』第2版(講談社・ブルーバックス)』
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