コウボウムギ(英語表記)Carex kobomugi Ohwi

改訂新版 世界大百科事典 「コウボウムギ」の意味・わかりやすい解説

コウボウムギ
Carex kobomugi Ohwi

海岸砂浜群落を作って生えるカヤツリグサ科スゲの一種で,初夏に太い雄の穂に黄色いおしべが著しくつき,夏から秋には雌の穂の実が熟す。和名弘法麦の意味で,熟した穂が麦の穂に似ているからであり,異名の筆草(ふでくさ)は,根茎の節に茶色の繊維が太く集まって筆の穂先の形になるからいう。強剛多年草で,茶色で長い根茎を四方に伸ばす。葉は幅1cmくらいで硬く,縁はざらつき,外側へ反って広がる。雌雄異株で,雄花序・雌花序ともに楕円形で,葉の中心から出る高さ20cmほどの太い茎の先につき,多数の花をつける。果胞は長さ1cmくらいで,3個の柱頭を出し,熟して茶色になり,長い嘴がある。北海道を北限とする日本全土の海岸から中国の黄海東シナ海の沿岸にみられ,南限は台湾である。筆の形をした根茎を雅味を好む人が用いたといわれるが,最近中国では,繊維の多い茎や葉を製紙原料とする。

 コウボウシバ弘法芝C.pumila Thunb.は同じく砂浜に生えるスゲで,コウボウムギよりずっと小さく,1本の茎に雄と雌の穂が数個つく。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウボウムギ」の意味・わかりやすい解説

コウボウムギ
こうぼうむぎ / 弘法麦
[学] Carex kobomugi Ohwi

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の多年草。高さは10~20センチメートル、葉は堅く幅は5ミリメートル程度。雌雄異株で、4~6月に茎の先に4~6センチメートルの穂状花序をつける。果胞は堅く長さ1センチメートルくらいで、先端が長く伸びる。根茎は長く伸び、節には古い鱗片葉(りんぺんよう)が分解して繊維状に残っている。そのようすを筆に見立てて、フデクサ(筆草)の名もある。北海道西海岸、本州四国、九州の砂浜に普通に生え、群生することが多い。海浜植物の代表的な種で砂防に用いられることもある。日本以外では、朝鮮半島、中国に分布する。北海道北東部からオホーツク海沿岸および北アメリカ西海岸にはエゾノコウボウムギC. macrocephala Willd.が分布する。コウボウムギに似ているが、果胞が著しく反り返ることで区別できる。

[木下栄一郎 2019年7月19日]


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百科事典マイペディア 「コウボウムギ」の意味・わかりやすい解説

コウボウムギ

日本全土,東アジアの海岸の砂地にはえるカヤツリグサ科の多年草。茎は太く,高さ10〜20cmで,地中を横走する根茎から出る。葉は堅い革質で線形,幅4〜6mm。雌雄異株。春,茎頂に多数の小穂を密生し,淡黄緑色,長さ4〜6cmの頭状花序をつくる。根茎の節に繊維があり,古く筆の代用としたので〈弘法〉の名があり,〈麦〉は熟した花序の形による。またフデクサともいう。近縁のコウボウシバも海岸の砂地にはえ,根の基部は暗赤色となる。果穂は2〜3個離れてつき,短円柱状で柄がある。
→関連項目海岸植物

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