改訂新版 世界大百科事典 「コブナグサ」の意味・わかりやすい解説
コブナグサ
Arthraxon hispidus (Hack.)Makino
小鮒草の意味で,卵形で小型の葉を小さなフナに見立てた。田の縁や原野の湿地に多いイネ科の一年草。茎は細く,やや横にはった基部から,節で屈曲しながら立ち上がる。この茎の折れ曲がった形を関節した腕に見立てて腕草(かいなぐさ),脚藺(あしい)の名もついた。茎はよく枝分れして長さは30~40cmであるが,立ち上がった部分の丈は10~30cmにすぎない。葉は卵形で先はとがり,基部は心形となって茎を抱き,長さ3~5cmで,縁と両面に長い毛がある。秋に葉腋(ようえき)から細い枝を出して,その頂に3~10個の総(ふさ)を放射状につける。総は線形で,長さは4cmくらい,暗赤褐色か白色である。小穂は対をなした片方が退化して短いとげとなるため,1個単生するように見え,長さは5~7mmで,小花の芒(のぎ)は1~2cmに及ぶ。温帯から熱帯アジアに広く分布する。八丈刈安(はちじようかりやす)とも呼ばれるが,カリヤスとともに黄色染料とされ,とくに八丈島では本種の煎汁を用いてツバキの灰で発色させ,黄八丈の染色をするからである。中国では薬草として鎮咳剤,洗瘡に用いられる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報