コルネイユ(英語表記)Pierre Corneille

デジタル大辞泉 「コルネイユ」の意味・読み・例文・類語

コルネイユ(Pierre Corneille)

[1606~1684]フランス劇作家ラシーヌと並ぶフランス古典劇の確立者。情念と義務の葛藤かっとうを意志で克服する英雄的人間像を描く悲劇を創出。悲劇「ル‐シッド」「オラース」「シンナ」「ポリュークト」、喜劇嘘つき男」など。

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精選版 日本国語大辞典 「コルネイユ」の意味・読み・例文・類語

コルネイユ

  1. ( Pierre Corneille ピエール━ ) フランスの劇作家。古典悲劇の完成者。その悲劇は、ラシーヌの情熱の悲劇に対して、意志と理性の勝利を描き、英雄的人物を題材に選ぶ。代表作は「ル‐シッド」「オラース」「シンナ」「ポリュークト」、喜劇「うそつき男」など。(一六〇六‐八四

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改訂新版 世界大百科事典 「コルネイユ」の意味・わかりやすい解説

コルネイユ
Pierre Corneille
生没年:1606-84

フランスの劇作家。モリエール,ラシーヌとともに三大古典劇作家と称される。北フランス,ルーアンの中流家庭に生まれ,イエズス会の学校で学ぶ。その後法律を修めて弁護士になり,かたわら戯曲を書いた。処女作の喜劇《メリート》(1629)がパリで成功し,以後風俗喜劇《ロアイヤル広場》(1633)やバロック喜劇の傑作《舞台は夢》(1635)などを書く。彼の初期喜劇は上流人士の登場する上品なもので,喜劇の品位向上に貢献した。やがて1637年初頭,悲喜劇ル・シッド》が初演されると,熱狂的な歓迎を受け大評判となった。ところがこの画期的成功をねたむ劇作家たちから三統一の規則への違反,盗作と非難され,ここに〈ル・シッド論争〉が起きた。3年間沈黙したのち,今度は規則に合致した三大意志悲劇の傑作,祖国愛を扱う《オラース》(1640),寛容を説く《シンナ》(1642),殉教を語る《ポリュークト》(1642)を発表,不滅の地位を築いた。以後も絶えず新しい演劇を探求し,喜劇《噓つき男》(1644),悲劇《ロドギュンヌ》(1644),《ニコメード》(1651)と傑作を発表。続く悲劇《ペルタリート》(1652)の失敗で一時筆を絶つ。7年後,悲劇《エディップ》(1659)で劇界に復帰。この間《演劇論》を執筆。その後悲劇《オトン》(1664),《アッティラ》(1667)などを書くが,時代はすでにコルネイユ的英雄から離れ,優美な恋愛を求めていた。悲劇《シュレナ》(1674)を最後に引退。

 観客の〈驚嘆〉が悲劇には不可欠と考えていた彼は,しばしば異常な状況に直面する偉大な魂を扱う。登場人物は勇敢で意志強く,名誉を求めて恋の情念をも意志の力で抑えこむ。意志悲劇と言われるゆえんである。しかし想像力豊かな彼は,悲劇のみならず,喜劇,悲喜劇にも才能を発揮した。内面の葛藤を美しく高尚な文体で描き演劇に深みを与えたことで,彼はフランス古典劇の創始者となった。弟トマThomasも劇作家(代表作は《ティモクラート》1656)で,当時は人気があった。
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百科事典マイペディア 「コルネイユ」の意味・わかりやすい解説

コルネイユ

フランスの劇作家。フォントネルの伯父に当たり,末弟トマ・コルネイユも劇作家。ルーアンの司法官の家柄に生まれ,1650年まで同地で弁護士を務めた。喜劇《メリート》(1629年)で好評を博し,悲劇《ル・シッド》(1636年)で名声を確立,続く《オラース》(1640年),《シンナ》(1642年),《ポリュークト》(1642年)はローマ時代の人間を扱って古典悲劇の傑作となった。性格喜劇《嘘つき男》も成功し,モリエールに先行。《ニコメード》《ペルタリート》以後意気が衰え,《エディップ》で再起したが,晩年は不遇だった。理想的人間を描いて崇高な意志を賛美,悲壮美を創造したコルネイユは,モリエール,ラシーヌと並んでフランスの三大古典劇作家と称される。→古典主義
→関連項目アンドロマック三統一スキュデリールーアンルイス・デ・アラルコン

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現代外国人名録2016 「コルネイユ」の解説

コルネイユ
Corneille

職業・肩書
シンガー・ソングライター

国籍
カナダ

生年月日
1977年3月24日

出生地
西ドイツ・バーデン・ビュルテンベルク州フライブルク(ドイツ)

経歴
父親がツチ族、母親フツ族で、ドイツで生まれる。裕福な家庭育ち、幼い頃からラジオやレコードで音楽に親しむ。6歳で両親の故郷ルワンダに移る。1994年17歳の時、フツ族とツチ族の民族対立によるルワンダ大虐殺で父母と兄弟が目の前で殺された。自身は危うくまぬがれ、両親の友人を頼って再びドイツに渡った。独学で作曲を学び、2002年シンガー・ソングライターとしてデビュー。メッセージ性の強い、洗練された現代的なR&Bが持ち味で、フランス語で発表した2枚のアルバムはカナダのフランス語圏やフランスで大ヒット。2007年アルバム「ザ・バース・オブ・コーネリアス」(歌詞は英語)で日本デビュー。現在はカナダ国籍を持つ。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「コルネイユ」の解説

コルネイユ
Pierre Corneille

1606~84

フランス古典主義悲劇の創始者。簡潔な構成のなかに理性と意志により情念を克服しようとする英雄的な人間を描く。代表作『ル・シッド』『シンナ』『オラース』『ポリウクト』。

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旺文社世界史事典 三訂版 「コルネイユ」の解説

コルネイユ
Pierre Corneille

1606〜84
フランスの劇作家
ラシーヌと並ぶフランス古典悲劇の代表者。理性と意志の勝利をテーマにして『ル=シッド』『オラース』『ポリュークト』などの傑作を残す。

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世界大百科事典(旧版)内のコルネイユの言及

【古典主義】より

…その文化政策であるアカデミー・フランセーズ創設(1635)や文人,芸術家の庇護は,上からの改革として古典主義の確立に大きな役割を果たし,アカデミー・フランセーズの中心人物シャプランJean Chapelain(1595‐1674)は,16世紀以来のイタリア人文学者を中心とするアリストテレス《詩学(創作論)》の読解を受けて,古典主義の理論的基準となる規則論を確立する。1637年初演のP.コルネイユの悲喜劇《ル・シッド》をめぐるアカデミー側と作者側の規則論議(いわゆる〈ル・シッド論争〉)は,40年代のコルネイユ自身の〈規則にかなった悲劇〉(《オラース》《シンナ》《ポリュークト》)の制作と成功によって,実践の領域へと超えられていく。もっとも絶対王政成立にとって最も大きな試練であったフロンドの乱の前後には,リシュリューの後を継いだイタリア人の宰相・枢機卿J.マザランによるイタリア・オペラの導入をはじめ,バロック的なものが隆盛を誇る。…

【詩劇】より

…詩的高揚のみならず,きわめて論理的・散文的思考の表現にも適したこの詩形を,彼は完璧に使いこなした。同時代スペインのローペ・デ・ベガやカルデロン・デ・ラ・バルカ,ルイ14世時代,いわゆる〈古典主義〉の時代のP.コルネイユやJ.ラシーヌも,輝かしい詩劇を作った。この黄金時代のあと衰微した詩劇の復興を図ったのはロマン派詩人たちだった。…

【フランス演劇】より

…中世から現代に至るフランス演劇の大きな特徴は,(1)歴史的には,17世紀に起こった一連の変化・断絶を軸として,それ以前とそれ以後に大別され,17世紀以降の演劇の多くのものが,劇場における上演という形にせよ,劇文学の読書という形にせよ,今日まで一応は連続して共有されてきたのに対し,17世紀以前の演劇は,少数の例外を除いて,演劇史あるいは文学史の〈知識〉にとどまること,(2)構造的には,17世紀に舞台芸術諸ジャンルの枠組み(〈言葉の演劇〉,オペラ,バレエ等)が成立し,国庫補助を含むその制度化(王立音楽アカデミーは1669年,コメディ・フランセーズは1680年に開設された)が進むと,演劇活動のパリの劇場への集中化が行われ,演劇表現内部における〈言葉の演劇〉の優位とそれに伴う文学戯曲重視の伝統が確立したことである。特に最後の点は,コルネイユ,モリエール,ラシーヌに代表される劇文学が,一般に諸芸術の内部で規範と見なされるに至ったことと相まって,以後300年のフランス演劇とフランス文化に決定的な役割を果たした。
【中世――宗教劇と世俗劇】
 中世フランスは,ヨーロッパの中でも,宗教劇・世俗劇ともに隆盛を見た地域だった。…

【ブルゴーニュ座】より

…こうしてバルラン・ル・コントValleran Le Comteの率いる〈国王付き劇団〉などが使用し,A.アルディ,J.ロトルー,J.メレらの劇作品を初演した。1634年に競争相手のマレー座Théâtre du Maraisが創設され,P.コルネイユの作品がモンドリーMon(t)dory(1594‐1653)率いる一座によって上演されるまで劇界に君臨した。モンドリーの病気引退(1636)後,力を取り戻し,座長フロリドールFloridor(?‐1672)の率いる〈ブルゴーニュ座国王付き劇団〉が発足し人気を得た。…

【ル・シッド】より

…フランスの劇作家コルネイユの戯曲。5幕韻文悲喜劇。…

※「コルネイユ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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