コンパス(読み)こんぱす(その他表記)compass

翻訳|compass

デジタル大辞泉 「コンパス」の意味・読み・例文・類語

コンパス(〈オランダ〉kompas/〈英〉compass)

製図用具の一。主に円を描くためのもので、適当な角度に開閉できる2本の脚からなる。ぶんまわし。円規。
船などで、方位を測定する計器。磁気コンパスジャイロコンパスがある。羅針盤羅針儀
人の両足の開き。歩幅。両足の長さ。「コンパスが長い」

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精選版 日本国語大辞典 「コンパス」の意味・読み・例文・類語

コンパス

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] kompas [ポルトガル語] compasso )
  2. 円を描くための製図用具。二本の脚からなり、一方の脚を固定させ、もう一方を回転させて円を描く。ぶんまわし。
    1. [初出の実例]「又それよりこんぱっすといふものを思ひ付ぬ。これ径を引にゆがまず、引うちにこんぱっすのうちより、墨よいかげんにながれいでて、くらがりにても引てもゆがむ事なし」(出典:浮世草子・子孫大黒柱(1709)三)
  3. 転じて、歩くときの足の開きの大きさ。歩幅。また、両足の長さ。
    1. [初出の実例]「コンパスの長い脚で大股に歩かるるのについて歩いて」(出典:俳諧師(1908)〈高浜虚子〉五五)
  4. 船などで、方位を知るのに用いる器械。羅針盤。羅針儀。
    1. [初出の実例]「船中第一の器をコンパスといふ。日本にて磁石といふと同じ」(出典:西域物語(1798)上)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コンパス」の意味・わかりやすい解説

コンパス(羅針盤)
こんぱす
compass

船舶や航空機の針路を定め、方位を測定するための計測器。羅針儀、羅針盤ともいう。地球の磁場の方向を基準として磁石を使って方位を測定する磁気コンパスmagnetic compassと、地球の自転軸の方向を基準にして、こまの原理を応用して方位を測定するジャイロコンパスgyro compassの2種類が普及している。新しい方式としてGPS(global positioning system=全地球測位システム)衛星を用いるGPSコンパスGPS compassやレーザージャイロlaser-gyro、ジャイロシンコンパスgyro-syn compass(航空機で使用)など各種のものが試みられている。ラジオコンパスradio compassといわれる装置は無線方位測定機をさし、電波の到来方位を探知する装置である。

[飯島幸人]

磁気コンパス

コンパスの始まりは紀元前11世紀ごろ中国の周代につくられた指南車であるといわれていた。しかしこれは、回転しても一定方向をさす機械的な歯車装置であって、磁石を使ったものではないとされ、コンパスの元祖であるという説は否定された。コンパスの語源はラテン語のcompassusで、comは「円」を、passusは「くぎり」を表し、「円を方位に分割する」という意味である。

 磁気コンパスは、散見される記録によると、初期のものは陸上で八卦(はっけ)などに使われたが、船用のものは11世紀の初めに中国でつくられ、12世紀の終わりごろにはヨーロッパに伝えられていたらしい。これらの磁気コンパス以前に、北欧バイキングは、太陽を用いるバイキングコンパスを使っていたことが明らかになっている(1948年にグリーンランドで発掘され、1978年にコンパスと断定された)。初期のコンパスは、針を磁石でこすって磁化させ、この針を紐(ひも)で吊(つ)るしたり、針を藁(わら)に刺して水に浮かべたりして北を検知したものと思われる。13世紀に入るとコンパスはかなり発達し、方位の目盛りもできてきたようであるが、コンパスとしてのいちおうの形をなしたのは14世紀に入ってからである。イタリア人ジョヤFlavio Giojaが1300年ごろに、磁針と方位を書いたカードを一体にしたコンパスをつくり、持ち運びが可能になったといわれているが真偽のほどは定かではない。さらにイタリア人カルダーノがジンバルリング(遊動環)を発明し、船が揺れてもコンパスは水平を保つようになり、コンパスとして完成された。

 今日のような精度の高いものになったのは19世紀後半で、1873年にイギリスの物理学者ウィリアム・トムソン(後のケルビン卿(きょう))によってつくられた。彼は、鉄船のもつ磁気によって生ずる磁気コンパスの誤差、すなわち自差の研究をして自差修正装置を完成させ、現在の磁気コンパスの原型となるものをつくりあげた。トムソンのつくったコンパスは、カード全体を支針の先端で支える乾式コンパスdry compassだったが、さらに船の振動に耐えるため、カードを液の中で支える液体コンパスliquid compassに改良された。

 現在、磁気コンパスは主役をジャイロコンパスに譲り、補助的航海計器となってしまった。

[飯島幸人]

電子磁気コンパス

電子技術の発達により可能になったもので、地磁気をフラックスゲートや半導体などにより電子的に検出して、コンパスを構成するものである。

[飯島幸人]

ジャイロコンパス

ジャイロコンパスは、高速に回転するこま、すなわちジャイロが一定方向をさす性質を利用したコンパスである。地球の自転に感応して真北をさし、磁気コンパスのような自差がないので、コンパスの主役となった。1906年、ドイツのアンシュッツHermann Anschütz(1846―1931)が初めてジャイロコンパスの試作機をつくった。アンシュッツは薬学者であったが、当時盛んであった北極探検に興味をもち、潜水艦によってこれを試みることを計画した。しかし、潜水艦の中では地磁気が遮断され、しかも極地方では水平磁力が弱くなるので磁気コンパスが使用できなくなることから、ジャイロコンパスの製作を志したという。1911年に初めて実用できるジャイロコンパスを完成させた。同じころアメリカのスペリーもジャイロコンパスの研究をして、1912年に完成させた。日本に輸入されたのはアンシュッツ式が最初で、1913年(大正2)に軍艦金剛がインド洋を経て持ち帰っている。同年には、日本海軍はスペリー式とアンシュッツ式の比較試験を行っている。この二つのジャイロコンパスはつねに競争しながら進歩、発展を続け、今日でも世界の主流の地位を保っている。1990年代に入ると、カーナビゲーション(car navigation=自動車経路誘導システム)で用いられるGPSから到来する電波の位相差を測定することによって方位を知ることができるので、GPSコンパスは船舶でも利用されるようになってきている。

[飯島幸人]

『茂在寅男・小林實著『コンパスとジャイロの理論と実際』(1971・海文堂)』『伊関貢・庄司和民著『ジャイロコンパス及オートパイロット』(1973・海文堂)』『飯島幸人・林尚吾著『航海計測』(1986・成山堂書店)』『西谷芳雄著『コンパスと自動操舵』(1988・成山堂書店)』『前畑幸弥著『ジャイロコンパスとオートパイロット』(1993・成山堂書店)』


コンパス(製図用具)
こんぱす
compass

製図用具。両脚器、ぶんまわしともいう。円や円弧を描くのに使用され、また直線などを等分割するときにも利用される。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「コンパス」の意味・わかりやすい解説

コンパス
compasses

円や円弧を描くときに用いる道具。古来はぶんまわし(規)といったが,ポルトガル語に基づくコンパス(compasso,根発子とも書かれた)という呼名もすでに《日葡辞書》《和漢三才図会》などに見え,早くから用いられていたらしい。起源についてはさだかではないが,ギリシア幾何学がコンパスと定規の上に築かれているところからみても,その発生の古さがうかがわれる。日本で西洋の近代的なコンパスが作られるようになったのは,鉄砲鍛冶の出であった和田貞一郎が,1869年(明治2)ころにフランス式のコンパスを作ったのが最初である。なお,明治の前半までは,製図器機を総称してコンパスと呼んでいた(製図用具)。また羅針儀をコンパスということもあり,これについては〈羅針盤〉の項目を参照されたい。
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パラグライダー用語辞典 「コンパス」の解説

コンパス

方位磁石。雲中飛行や方向を見失った時の為の必需品である。通常、雲中飛行はしないものであるが、誤って入ってしまったり、突然ガス(霧)が発生する事も少なくない。また他所のフライトエリアに行って風向きや地形を知る為にも役立つ。コンパスは針式(磁石式)のものから電子コンパスまたGPSのコンパスモードなどがある。針式や電子コンパスは現在の北を示すのに対し、GPSは軌跡に対して北を示し、その違いに注意が必要。また、針式は、オリエンテーリングなどで使われる平面タイプのものやカーショップなどで数百円程度で買えるものは空中では機能しないと考えた方が良い。3次元を移動しているパラグライダーの場合、指針が大きく揺れたり、空回りしてしまい、かえってパニックに陥ることにもなりがねない。

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百科事典マイペディア 「コンパス」の意味・わかりやすい解説

コンパス

(1)製図用具。主として円を描くのに使用。両脚の角度を変えて円の半径を変化させる。脚の片方を交換,鉛筆と墨に兼用できるものがある。特に大きい円を描くときにはビームコンパスを用いる。(2)羅針盤のこと。
→関連項目航海計器

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コンパス」の意味・わかりやすい解説

コンパス
compass

羅針儀 (らしんぎ) 。船の方向を測定する計器類で,磁気コンパスとジャイロコンパスとがある。磁気コンパスは磁石を使って,地球の磁場の方向を測定し,ジャイロコンパスは高速回転するコマ gyroscopeを使って地球の自転軸の方向を測定する。地球磁場の方向を基準にした方位を磁気方位といい,地球自動軸を基準にした方位が地理学上の方位で,真方位という。磁気方位と真方位との間を偏差,または偏角といい,海図にも示されている。このため磁気コンパスで磁気方位をつかみ,海図でその場所の偏差を知れば,真方位を求めることができるようになっている。

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デジタル大辞泉プラス 「コンパス」の解説

コンパス

2000年に台風委員会により制定された台風の国際名のひとつ。台風番号、第103号。日本による命名。星座の「コンパス座」から。

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世界大百科事典(旧版)内のコンパスの言及

【航法】より

… 航法の基本機能である繰返性については,紀元前から経験則の集積である航路誌により,2点間の方向と距離(航走日数で表現されていた)の情報を得て,あまり確実性が高くはなかったが一応保たれていたようである。 また針路と航走距離から推測位置を求めることも,コンパス(羅針儀)などの利用で一般化していった。このコンパスは,中国で指南針と呼ばれ,11世紀に航海用として用いられており,これがヨーロッパに伝えられたといわれている。…

【羅針盤】より

…羅針儀,コンパスとも呼ばれる。船や航空機などで方位を測定するために用いられる器具で,原理から,磁石の指極性を利用して方位を知る磁気コンパスと,高速で回転するこまの運動を利用するジャイロコンパスに分けられる。…

【リズム】より

… リズムと拍子,拍,形式の関係はスペインのフラメンコにおいてより自由な形を示している。コンパスcompasと呼ばれるリズム周期をもつフラメンコでは,不均等な音価から構成される不均等5拍子を形成している。 リズムと形式の関係は西欧以外ではもっと多様な形でみられる。…

※「コンパス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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