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正規の賛美歌とは別に、伝道師や音楽家がポピュラー・ソングのような形でつくった福音(ふくいん)唱歌。ゴスペルとはキリストの教えと福音、あるいは「福音書」の意。今日では一般的に、アフリカ系アメリカ人の教会で歌われる新しい福音唱歌をさす。これは黒人霊歌の近代化といえる。
19世紀初頭ごろから形成された黒人霊歌は、19世紀末ごろから20世紀初頭にかけて、ブルースの影響を受けたリズミカルな歌い方によって変化し始め、さらにジャズの影響と、黒人庶民感情の注入によって独自のゴスペル・ソングが生まれ、1930年代から盛んになった。ジャズ的手法が取り入れられ、強烈なスウィング感と活力でたくましく歌われる。歌詞は『新約聖書』中の福音に関係あるものが多い。なお、ゴスペル歌手としてマヘリア・ジャクソンが有名だが、普通は少人数のグループで合唱する。代表的な名歌に『いざ高き天国へ』『プレシャス・ロード』『歌のように生きよう』などがある。
[青木 啓]
『チェット・ヘイガン著、椋田直子訳『魂のうたゴスペル――信仰と歌に生きた人々』(1997・音楽之友社)』▽『アンソニー・ヘイルバット著、中河伸俊・三木草子・山田裕康訳『ゴスペル・サウンド』改訂版(2000・ブルース・インターアクションズ)』
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正規のキリスト教賛美歌に対し,大衆の間で生まれた福音唱歌を指す。もともと,19世紀後半にアメリカ各地で起こった信仰復興運動で歌われた歌を意味したが,今日では民俗音楽の範疇に入るようなキリスト教音楽,とくに黒人のリズム感や叫ぶような歌唱法を特徴とする歌を〈ゴスペル・ソング〉,その歌い手を〈ゴスペル・シンガー〉と呼んでいる。ふつう4~5人のグループで歌い,エレクトリック・ギターやドラムなどが伴奏につき,〈リズム・アンド・ブルース〉などと共通の第2次世界大戦後の黒人大衆音楽のスタイルで歌唱され演奏される。世界的に知られた歌手にジャクソンMahalia Jackson(1911-72)がいるが,黒人社会内部において人気があるのは,〈ディキシー・ハミングバーズ〉〈ファイブ・ブラインド・ボーイズ〉などの男性グループである。1980年代以降,ゴスペルを題材にしたミュージカルなどが現れ,それが日本でも公演されて,日本にもゴスペルに親しむ若者が増えた。
執筆者:中村 とうよう
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…もちろん,キリスト教は黒人が白人から学び取ったものであるから,白人の賛美歌のたぐいから歌詞や旋律の多くを得ているのは事実だが,それをアフリカ的伝統であるリズム感や交互唱,シャウトする歌い方といった鋳型にはめこんで作り変えた(ポール・オリバーによる比喩)のが黒人の宗教歌であり,そこから再び旋律など白人的要素を重点的に抽出したのが黒人霊歌だったといえる。 奴隷解放後は,南部各地さらに北部・東部都市の黒人居住区に数多く生まれた黒人教会を拠点として独自の宗教音楽が発展を続け,ことに1920年代から50年代にかけて,シャウト唱法や強いビートをさらに強調したゴスペル・ソングgospel songが大きな盛上がりを見せ,女性ソロ歌手のマヘリア・ジャクソンが非黒人間にも高い評価を得たほか,数多くのコーラス・グループが黒人教会を巡回したりレコードを出すなど活発に活動した。60年代にはモダン・ジャズ界でゴスペル・ソングの曲調を取り入れることが流行し,リズム・アンド・ブルースにゴスペルの影響が深く入り込んでソウル・ミュージックを生み出すなど,黒人民衆音楽の重要な柱のひとつとして今日まで生き続けている。…
…もちろん,キリスト教は黒人が白人から学び取ったものであるから,白人の賛美歌のたぐいから歌詞や旋律の多くを得ているのは事実だが,それをアフリカ的伝統であるリズム感や交互唱,シャウトする歌い方といった鋳型にはめこんで作り変えた(ポール・オリバーによる比喩)のが黒人の宗教歌であり,そこから再び旋律など白人的要素を重点的に抽出したのが黒人霊歌だったといえる。 奴隷解放後は,南部各地さらに北部・東部都市の黒人居住区に数多く生まれた黒人教会を拠点として独自の宗教音楽が発展を続け,ことに1920年代から50年代にかけて,シャウト唱法や強いビートをさらに強調したゴスペル・ソングgospel songが大きな盛上がりを見せ,女性ソロ歌手のマヘリア・ジャクソンが非黒人間にも高い評価を得たほか,数多くのコーラス・グループが黒人教会を巡回したりレコードを出すなど活発に活動した。60年代にはモダン・ジャズ界でゴスペル・ソングの曲調を取り入れることが流行し,リズム・アンド・ブルースにゴスペルの影響が深く入り込んでソウル・ミュージックを生み出すなど,黒人民衆音楽の重要な柱のひとつとして今日まで生き続けている。…
※「ゴスペルソング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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