ゴスペルソング(その他表記)gospel song

デジタル大辞泉 「ゴスペルソング」の意味・読み・例文・類語

ゴスペル‐ソング(gospel song)

米国のキリスト教音楽。20世紀前半に、黒人霊歌ブルースジャズなどの要素が加わって生まれたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「ゴスペルソング」の意味・読み・例文・類語

ゴスペル‐ソング

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] gospel song ) 二〇世紀前半のアメリカ合衆国で、黒人霊歌とブルースが融合して生まれた福音歌。
    1. [初出の実例]「古いニグロ・スピリチュアルやゴスペル・ソングのメロディから取った曲を」(出典:さらばモスクワ愚連隊(1966)〈五木寛之〉二)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴスペルソング」の意味・わかりやすい解説

ゴスペル・ソング
gospel song

(1) キリスト教礼拝を目的とした賛美歌とは区別された伝道集会用の歌曲。日本では福音唱歌と訳される。18世紀後半から 19世紀にかけて起こったアメリカ合衆国の信仰覚醒運動を背景としてその集会の宗教的高揚に適応した新しい音楽が要請されるに及んで生まれたが,直接には大衆伝道者として知られるドワイト・L.ムーディとその協力者アイラ・D.サンキの諸集会に用いられた『サンキ・ムーディ聖歌集』(1873)に由来する。大衆伝道の単純明快な説教に適応した民謡風でしかも起伏に富んだ美しい旋律に特徴がある。1910~20年代頃から厳粛さが薄れ始め,ピアノやほかの楽器が使われるようになり,より明確な歌詞で構成され,神聖さと世俗さとの境界が曖昧になっていった。世俗化されたゴスペルは,南部では一種のカントリー音楽(→カントリー・アンド・ウェスタン)として新たな地位を確立し,21世紀に入っても多くの聴衆をひきつけた。
(2) 19世紀後半から 20世紀初頭にかけてアメリカの黒人の間に生まれた聖歌で,黒人霊歌(→スピリチュアル)の一種。19世紀初頭に黒人の教会で使われた,イギリスの聖職者アイザック・ウォッツとチャールズ・ウェスリー作の賛美歌に,メソジスト派の黒人聖職者リチャード・アレンの詩を加えた賛美歌集に由来する。初めは有名な賛美歌に合わせて詠唱されていたが,南北戦争後,簡単なリズムと旋律に合わせてうたわれるようになった。19世紀後半になると,詩は多様で引喩に富んだ文体へと変化し,シンコペーションが強調され,より黒人的な音楽の感性に合う編曲がなされた。この発展の背景には,集会に異言とアフリカのサークルダンスを取り入れたペンテコステ派の興隆があったと考えられ,その説教を記録したレコードは 1920年代に黒人の間で大いに人気を博した。タンブリン,ピアノ,オルガン,バンジョー,ギター,その他弦楽器,金管楽器を取り入れ,聖歌隊はコールアンドレスポンスや即興,メリスマ的な歌唱法,また表現力豊かなうたい方などを特徴とする。代表的な曲として "Precious Lord, Take My Hand"や,公民権運動を象徴する歌『ウィ・シャル・オーバーカム(勝利を我等に)』We Shall Overcomeの元となった "I'll Overcome Someday"などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴスペルソング」の意味・わかりやすい解説

ゴスペル・ソング
ごすぺるそんぐ
Gospel song

正規の賛美歌とは別に、伝道師や音楽家がポピュラー・ソングのような形でつくった福音(ふくいん)唱歌。ゴスペルとはキリストの教えと福音、あるいは「福音書」の意。今日では一般的に、アフリカ系アメリカ人の教会で歌われる新しい福音唱歌をさす。これは黒人霊歌の近代化といえる。

 19世紀初頭ごろから形成された黒人霊歌は、19世紀末ごろから20世紀初頭にかけて、ブルースの影響を受けたリズミカルな歌い方によって変化し始め、さらにジャズの影響と、黒人庶民感情の注入によって独自のゴスペル・ソングが生まれ、1930年代から盛んになった。ジャズ的手法が取り入れられ、強烈なスウィング感と活力でたくましく歌われる。歌詞は『新約聖書』中の福音に関係あるものが多い。なお、ゴスペル歌手としてマヘリア・ジャクソンが有名だが、普通は少人数のグループで合唱する。代表的な名歌に『いざ高き天国へ』『プレシャス・ロード』『歌のように生きよう』などがある。

[青木 啓]

『チェット・ヘイガン著、椋田直子訳『魂のうたゴスペル――信仰と歌に生きた人々』(1997・音楽之友社)』『アンソニー・ヘイルバット著、中河伸俊・三木草子・山田裕康訳『ゴスペル・サウンド』改訂版(2000・ブルース・インターアクションズ)』

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百科事典マイペディア 「ゴスペルソング」の意味・わかりやすい解説

ゴスペル・ソング

正規の賛美歌に対し,アメリカの大衆の間で生まれた福音(ゴスペル)を主題にした民俗音楽ポピュラー音楽で,その担い手は主に黒人である。そのスタイルや起源はさまざまであるが,リズム・アンド・ブルースソウル・ミュージックジャズなどの黒人大衆音楽を吸収し,独自の発展を続けている。→黒人霊歌
→関連項目チャールズブラウンフランクリンブレーキー

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改訂新版 世界大百科事典 「ゴスペルソング」の意味・わかりやすい解説

ゴスペル・ソング
gospel song

正規のキリスト教賛美歌に対し,大衆の間で生まれた福音唱歌を指す。もともと,19世紀後半にアメリカ各地で起こった信仰復興運動で歌われた歌を意味したが,今日では民俗音楽の範疇に入るようなキリスト教音楽,とくに黒人のリズム感や叫ぶような歌唱法を特徴とする歌を〈ゴスペル・ソング〉,その歌い手を〈ゴスペル・シンガー〉と呼んでいる。ふつう4~5人のグループで歌い,エレクトリック・ギターやドラムなどが伴奏につき,〈リズム・アンド・ブルース〉などと共通の第2次世界大戦後の黒人大衆音楽のスタイルで歌唱され演奏される。世界的に知られた歌手にジャクソンMahalia Jackson(1911-72)がいるが,黒人社会内部において人気があるのは,〈ディキシー・ハミングバーズ〉〈ファイブ・ブラインド・ボーイズ〉などの男性グループである。1980年代以降,ゴスペルを題材にしたミュージカルなどが現れ,それが日本でも公演されて,日本にもゴスペルに親しむ若者が増えた。
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音楽用語ダス 「ゴスペルソング」の解説

ゴスペル・ソング [gospel song]

1920年代黒人霊歌(ニグロ・スピチチュアル)から派生した黒人独特のの賛美歌のこと。黒人独特なリズミックソウルフルな内容で、それ等は新約聖書に基ずくものが多い、後にリズム・アンド・ブルースに大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内のゴスペルソングの言及

【黒人霊歌】より

…もちろん,キリスト教は黒人が白人から学び取ったものであるから,白人の賛美歌のたぐいから歌詞や旋律の多くを得ているのは事実だが,それをアフリカ的伝統であるリズム感や交互唱,シャウトする歌い方といった鋳型にはめこんで作り変えた(ポール・オリバーによる比喩)のが黒人の宗教歌であり,そこから再び旋律など白人的要素を重点的に抽出したのが黒人霊歌だったといえる。 奴隷解放後は,南部各地さらに北部・東部都市の黒人居住区に数多く生まれた黒人教会を拠点として独自の宗教音楽が発展を続け,ことに1920年代から50年代にかけて,シャウト唱法や強いビートをさらに強調したゴスペル・ソングgospel songが大きな盛上がりを見せ,女性ソロ歌手のマヘリア・ジャクソンが非黒人間にも高い評価を得たほか,数多くのコーラス・グループが黒人教会を巡回したりレコードを出すなど活発に活動した。60年代にはモダン・ジャズ界でゴスペル・ソングの曲調を取り入れることが流行し,リズム・アンド・ブルースにゴスペルの影響が深く入り込んでソウル・ミュージックを生み出すなど,黒人民衆音楽の重要な柱のひとつとして今日まで生き続けている。…

【黒人霊歌】より

…もちろん,キリスト教は黒人が白人から学び取ったものであるから,白人の賛美歌のたぐいから歌詞や旋律の多くを得ているのは事実だが,それをアフリカ的伝統であるリズム感や交互唱,シャウトする歌い方といった鋳型にはめこんで作り変えた(ポール・オリバーによる比喩)のが黒人の宗教歌であり,そこから再び旋律など白人的要素を重点的に抽出したのが黒人霊歌だったといえる。 奴隷解放後は,南部各地さらに北部・東部都市の黒人居住区に数多く生まれた黒人教会を拠点として独自の宗教音楽が発展を続け,ことに1920年代から50年代にかけて,シャウト唱法や強いビートをさらに強調したゴスペル・ソングgospel songが大きな盛上がりを見せ,女性ソロ歌手のマヘリア・ジャクソンが非黒人間にも高い評価を得たほか,数多くのコーラス・グループが黒人教会を巡回したりレコードを出すなど活発に活動した。60年代にはモダン・ジャズ界でゴスペル・ソングの曲調を取り入れることが流行し,リズム・アンド・ブルースにゴスペルの影響が深く入り込んでソウル・ミュージックを生み出すなど,黒人民衆音楽の重要な柱のひとつとして今日まで生き続けている。…

※「ゴスペルソング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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