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ゴスペル・ソング gospel song

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ゴスペル・ソング
gospel song

(1) キリスト教礼拝を目的とした賛美歌とは区別された伝道集会用の歌曲。日本では福音唱歌と訳される。18世紀後半から 19世紀にかけて起こったアメリカ合衆国の信仰覚醒運動を背景としてその集会の宗教的高揚に適応した新しい音楽が要請されるに及んで生まれたが,直接には大衆伝道者として知られるドワイト・L.ムーディとその協力者アイラ・D.サンキの諸集会に用いられた『サンキ・ムーディ聖歌集』(1873)に由来する。大衆伝道の単純明快な説教に適応した民謡風でしかも起伏に富んだ美しい旋律に特徴がある。1910~20年代頃から厳粛さが薄れ始め,ピアノやほかの楽器が使われるようになり,より明確な歌詞で構成され,神聖さと世俗さとの境界が曖昧になっていった。世俗化されたゴスペルは,南部では一種のカントリー音楽(→カントリー・アンド・ウェスタン)として新たな地位を確立し,21世紀に入っても多くの聴衆をひきつけた。
(2) 19世紀後半から 20世紀初頭にかけてアメリカの黒人の間に生まれた聖歌で,黒人霊歌(→スピリチュアル)の一種。19世紀初頭に黒人の教会で使われた,イギリスの聖職者アイザック・ウォッツチャールズウェスリー作の賛美歌に,メソジスト派の黒人聖職者リチャード・アレンの詩を加えた賛美歌集に由来する。初めは有名な賛美歌に合わせて詠唱されていたが,南北戦争後,簡単なリズムと旋律に合わせてうたわれるようになった。19世紀後半になると,詩は多様で引喩に富んだ文体へと変化し,シンコペーションが強調され,より黒人的な音楽の感性に合う編曲がなされた。この発展の背景には,集会に異言とアフリカのサークルダンスを取り入れたペンテコステ派の興隆があったと考えられ,その説教を記録したレコードは 1920年代に黒人の間で大いに人気を博した。タンブリン,ピアノ,オルガン,バンジョー,ギター,その他弦楽器,金管楽器を取り入れ,聖歌隊はコールアンドレスポンスや即興,メリスマ的な歌唱法,また表現力豊かなうたい方などを特徴とする。代表的な曲として "Precious Lord, Take My Hand"や,公民権運動を象徴する歌『ウィ・シャル・オーバーカム(勝利を我等に)』We Shall Overcomeの元となった "I'll Overcome Someday"などがある。

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百科事典マイペディアの解説

ゴスペル・ソング

正規の賛美歌に対し,アメリカの大衆の間で生まれた福音(ゴスペル)を主題にした民俗音楽,ポピュラー音楽で,その担い手は主に黒人である。そのスタイルや起源はさまざまであるが,リズム・アンド・ブルースソウル・ミュージックジャズなどの黒人大衆音楽を吸収し,独自の発展を続けている。
→関連項目チャールズブラウンフランクリンブレーキー

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ゴスペル・ソング
ごすぺるそんぐ
Gospel song

正規の賛美歌とは別に、伝道師や音楽家がポピュラー・ソングのような形でつくった福音(ふくいん)唱歌。ゴスペルとはキリストの教えと福音、あるいは「福音書」の意。今日では一般的に、アフリカ系アメリカ人の教会で歌われる新しい福音唱歌をさす。これは黒人霊歌の近代化といえる。
 19世紀初頭ごろから形成された黒人霊歌は、19世紀末ごろから20世紀初頭にかけて、ブルースの影響を受けたリズミカルな歌い方によって変化し始め、さらにジャズの影響と、黒人庶民感情の注入によって独自のゴスペル・ソングが生まれ、1930年代から盛んになった。ジャズ的手法が取り入れられ、強烈なスウィング感と活力でたくましく歌われる。歌詞は『新約聖書』中の福音に関係あるものが多い。なお、ゴスペル歌手としてマヘリア・ジャクソンが有名だが、普通は少人数のグループで合唱する。代表的な名歌に『いざ高き天国へ』『プレシャス・ロード』『歌のように生きよう』などがある。[青木 啓]
『チェット・ヘイガン著、椋田直子訳『魂のうたゴスペル――信仰と歌に生きた人々』(1997・音楽之友社) ▽アンソニー・ヘイルバット著、中河伸俊・三木草子・山田裕康訳『ゴスペル・サウンド』改訂版(2000・ブルース・インターアクションズ)』

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