サケマス母船(読み)さけますぼせん

改訂新版 世界大百科事典 「サケマス母船」の意味・わかりやすい解説

サケ・マス母船 (さけますぼせん)

北洋の公海上で多くの流し網漁船(独航船とよぶ)を用いてサケ,マスをとり,その漁獲物を積み取り,処理・加工する大型漁船。船内缶詰製造の設備をもち,缶詰を製造していたので,サケ・マス工船と呼ばれたこともあった。現在では漁獲物のほとんどを冷凍製品に加工し,冷凍運搬船により日本の基地に運んでいる。

 母船は8000~9000トンの大きさで,124トン型の独航船43隻とともに船団を組み出漁する。漁場においては,操業する独航船の中心に位置し,その朝漁獲したサケ,マスを魚種別に仕分けたもっこで独航船より受け取る。この荷役は片玄に2隻ずつ同時に接玄させて行うが,荒天の多い北洋の洋上であるので,すばやい積取りが必要である。この接玄の間に独航船は必要な燃料油,食料,飲料水および補充用の漁具などを受け取る。

 母船には必要な資材,たとえば燃料油,食料,飲料水,魚箱などのほか独航船に補給する資材を積み込む。漁期が進むにつれて,漁場も移動し,製品が多くなると仲積船が製品の引取りと漁業資材および生鮮食料品などの補給を行うために来る。この仲積船には,製品に缶詰が多かったときには貨物船を用いたが,今はほとんどが冷凍品になったので,冷凍魚倉をもつ冷凍運搬船を用いるようになった。母船には救命艇のほかに川崎船と呼ばれている10~15トンの作業艇を5~6隻積んでいる。これは漁場において仲積船との荷役や独航船の接玄の補助艇として使用されている。
北洋漁業
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百科事典マイペディア 「サケマス母船」の意味・わかりやすい解説

サケ・マス母船【サケマスぼせん】

北洋で流し網漁船(独航船)が漁獲したサケ・マスを積み取り,処理・加工する大型漁船。8000〜9000トン。魚体の処理から缶詰,箱詰までの缶詰製造設備,塩蔵・冷凍設備などを備える。毎年5〜8月の間独航船43隻を従えて出漁し,缶詰,新巻(あらまき),塩蔵魚をつくる。日本の母船式サケ・マス漁業は,200カイリ時代になってから母川国主義に基づく規制を受けてきて,1992年以降,北太平洋公海での操業の全面停止に合意,北洋におけるサケ・マス漁業の長い歴史に終止符を打つことになった。→北洋漁業
→関連項目サケ・マス漁業母船式漁業

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サケマス母船」の意味・わかりやすい解説

サケ・マス母船
サケ・マスぼせん

船内にサケ・マスを処理する施設と缶詰,塩蔵,冷凍などの加工設備を備えた船。「動く工場」とも呼ばれる。春季,夏季に独航船を伴って北洋に出航し,独航船から漁獲物を受取って加工処理する。

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