サザンカ(読み)さざんか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サザンカ」の意味・わかりやすい解説

サザンカ
さざんか / 山茶花
[学] Camellia sasanqua Thunb.

ツバキ科(APG分類:ツバキ科)の常緑小高木。高さ5~10メートルで、若枝や葉柄に毛がある。葉は互生し、革質で光沢があり、長楕円(ちょうだえん)形、長さ3~6センチメートルで両端がとがり、縁(へり)に細鋸歯(さいきょし)があって、両面の主脈上に毛がある。10~12月、枝の先に白色5弁、径5~7センチメートルの花を開く。花弁倒卵形または狭倒卵形で平開し、散るときはばらばらに落ちる。雄しべは多数で、大部分が離生する。果実は球形、長さ約2.5センチメートルの蒴果(さくか)で細毛があり、果皮は厚く、9~10月に熟して3裂する。山口県の指月(しづき)山、四国南西部、九州、沖縄県に分布し、本州の東北地方以南の庭園や公園に広く植栽される。

 耐陰性、耐潮性があり、刈り込みに耐え、生け垣にする。繁殖は実生(みしょう)、挿木による。種子から油をとり、食用、頭髪用とし、材は器具、機械、彫刻などに用いる。

小林義雄 2021年4月16日]

種類

江戸初期には園芸品種が栽培されていた。ツバキに比べ品種は少ないが、昭和10年(1935)の目録『茶梅』に118品種が記載されている。シノノメ(東雲)は淡紅色半八重咲きで香りがよく、花弁は10~15枚で、径12~15センチメートルの極大輪である。フジノミネ(富士の峰)は径6~8センチメートルの白色八重咲きで、花弁は25~30枚ある。カンツバキ(寒椿)は関西地方でシシガシラ(獅子頭)とよんでいる品種群で、樹形が横広がりになり矮性(わいせい)で、紅色八重咲きの小輪の花が11月下旬から2月に開く。この品種群には樹形が立ち性のものもあり、タチカンツバキ(立寒椿)の名をもつカンジロウ(勘次郎)や、ショウワノサカエ(昭和の栄)がある。ハルサザンカはツバキとサザンカの中間的な性質をもつ品種群で12月から3月にかけて花を開く。この群のサンダンカ(三段花)は花の中に花が重なり、二段、三段咲きになり、ヤマトニシキ(大和錦)、ヒリュウ(飛竜)など約30品種が知られている。

[小林義雄 2021年4月16日]

文化史

水野元勝(もとかつ)の『花壇綱目(かだんこうもく)』(1681)には、ツバキの品種が66載っているが、サザンカの名はない。ところが、伊藤三之丞(さんのじょう)の『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)では36品種のサザンカが解説されており、さらに名だけが14あげられている。木本であるサザンカの品種がこの短期間で一挙に作出されたとは考えられず、したがって栽培歴は、江戸時代以前にさかのぼると思われる。古名はコカタシあるいはヒメカタシだが、中国のツバキの呼び名山茶花と取り違えられてサザンカとなった。サザンカの中国名は茶梅である。

[湯浅浩史 2021年4月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「サザンカ」の意味・わかりやすい解説

サザンカ (山茶花)
Camellia sasanqua Thunb.

本州西端(山口県),四国南西部,九州および沖縄諸島に自生するツバキ科の常緑樹。花の少ない晩秋から冬にかけて開花するため,古くから庭木生垣として利用され,多数の園芸品種がある。古木では樹高が10mに達するものがある。葉は互生し,長さ3~7cm,幅2~3cmで,表面は光沢があり,周縁には細かい鋸歯をもつ。葉の主脈,葉柄および若枝には細かい毛がある。花はその年に伸びた枝の先端近くに1~数個つき,10月から12月にかけて開花する。自生種の花は6~7弁,径5~7cmの白花で,花心には多数のおしべがある。めしべの花柱は上部で3本に分かれ,子房には白色の毛が密生している。枝,葉,子房に毛があること,おしべが筒状にならないこと,花弁とおしべがばらばらに散るなどの特徴から,ツバキと区別できる。果実は倒卵形から球形で,長さ2cm前後,表面には毛がある。開花翌年の10月ごろ成熟し,先端から3裂して中から黒褐色の種子があらわれる。園芸品種には白花のほかに,桃,紅,紅と白のぼかしなどがあり,おしべが花弁に変わった八重咲きも多い。花の直径が12cm以上となる大輪品種もある。12月から3月ごろまで咲きつづける八重咲きのカンツバキや,さらに遅咲きで4月ごろまで咲くハルサザンカにもたくさんの品種があり,これらも園芸上からはサザンカに含められている。ハルサザンカはサザンカとツバキの雑種と考えられており,花の特徴もツバキに近いものが多い。庭木,生垣のほかに鉢物としても利用でき,ときには盆栽としても仕立てられる。主として北関東より西の暖地で栽培されているが,暖かい場所に植えれば東北地方南部でも戸外で越冬する。

 種子からとれる油は食用となり,ツバキ油と同様の用途があるが,現在はほとんど利用されていない。材は堅く,建築,器具,彫刻などに用いられ,良質の木炭ができる。
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百科事典マイペディア 「サザンカ」の意味・わかりやすい解説

サザンカ(山茶花)【サザンカ】

本州(山口県)〜沖縄に自生するツバキ科の常緑小高木で,約10mの高さになる。庭木として植込みや生垣にし,切花にも用いる。ツバキとの違いは,一般にサザンカのほうが葉が小さく,小枝から葉柄,主脈に毛がある点,晩秋から咲き始め,花に芳香があり,花弁が薄く波うち,ばらばらに散る点,子房,果実に毛がある点などである。園芸品種は120種余り,花色は白,淡紅,濃紅等の変異がある。代表品種には一重咲の御美衣(おおみごろも)・緋の袴(ひのはかま)・月の笠(かさ)・明月,八重咲・千重咲の富士の峰・昭和栄(しようわのさかえ)等。観賞以外の用途としては材が楽器や折尺にされ,種子からは油をとる。なお,ハルサザンカは本種とツバキの雑種と考えられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サザンカ」の意味・わかりやすい解説

サザンカ(山茶花)
サザンカ
Camellia sasanqua

ツバキ科の常緑小高木。四国,九州から南西諸島の山中に自生する。庭木としても普通に栽植される。ツバキとともに日本で改良された花木の一つである。 10~12月頃,枝先に柄のないやや大きい5弁の花をつける。ツバキの花に似ているが花弁の基部がツバキのように癒着せずほぼ平開する。多数あるおしべの基部もごく浅く癒合するだけである。自生品の花は白色であるが,園芸品には紅色,淡紅色,絞り,八重咲きなどいろいろある。材質はじょうぶで農・工具の柄やいろいろな細工物に使われ,また薪炭材としてもすぐれている。

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世界大百科事典(旧版)内のサザンカの言及

【ツバキ(椿)】より

…ユキツバキとヤブツバキとの中間型も多く,またユキツバキ由来の園芸品種もある。このほか沖縄には,花の外形がツバキに似るが,著しく小型の白い花を咲かせるヒメサザンカC.lutchuensis T.Itoが分布していて,花に芳香がある。 ツバキ属Camelliaは,中国原産のものが多く,いくつかの種が日本へ導入されている。…

※「サザンカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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