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フランスの異色の作曲家。パリ音楽院を中退して,生活のために世紀末のパリの芸術家のたまり場となった酒場〈黒猫〉などのピアニストとして働きながら,中世的な神秘主義の世界をうかがわせるピアノ曲《三つのジムノペディ 3gymnopédies》(1888),《三つのグノシェンヌ》(1890。のち3曲が発見され1968年に出版)などを作曲。また一時,文学者ペラダンが主宰した神秘主義的秘密結社〈カトリック薔薇十字団〉に入り,公認作曲家となり,同団の音楽や,ペラダンの戯曲《星たちの息子》の音楽(1892)を作曲する。このような音楽はドビュッシー,ラベルにも影響を与えた。〈もっとフォルムの感覚をもつべきだ〉というドビュッシーの忠告にこたえて,ピアノ連弾曲《梨の形をした三つの小品》(1903)を作曲。鋭い批評精神とユーモアのセンスをもっていたサティは,その後,奇妙な曲名の作品を数多く生みだした。ピアノ曲《馬の装具で》(1911),《(犬のための)ぶよぶよした真の前奏曲》《不愉快な概要》(ともに1912),《乾からびた胎児》(1913),《官僚的なソナチネ》(1917)などといった曲名である。自分で台本を書き,作曲したナンセンスな音楽劇《メデューサの罠》(1913)は,ダダ(ダダイスム)以前のダダの作品として,今日高く評価されている。コクトーの台本,ピカソの舞台美術によるバレエ《パラードParade》(1917)の音楽には,タイプライター,汽笛,ピストルその他の騒音を加えて,スキャンダルとなる。1920年以後は,ピカビア,デュシャンらのパリのダダ運動に参加。24年にはピカビアの台本によるバレエ《本日休演Relâche》を作曲したが,これが最後の作品となった。晩年,サティは座りごこちのよい椅子のように人にくつろぎと安らぎを与える〈家具の音楽〉という思想を打ちだした。これはバックグラウンド・ミュージックの先駆ともみられるが,むしろ第2次世界大戦後のケージの環境の芸術化の思想と結びつく注目すべき音楽観である。
執筆者:秋山 邦晴
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出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報
…フランスの作曲家E.サティの初期のピアノ連弾のための作品で,1903年に作曲された。独特な神秘思想をもっていたサティは,小節線を取りはずした自由な形式のピアノ曲などを作曲していたが,あるときドビュッシーに形式について配慮するように忠告され,その忠告に対する回答としてこの作品を完成した。…
…このほかデュカース,F.シュミット,C.ケクラン,A.カプレの名をあげておこう。 サティは,ドビュッシーとほぼ同年輩であるが,第1次世界大戦後その単純でむきだしな音楽が,戦前の美意識――ワーグナー,ロマン派,ドビュッシー――への反逆の先鞭をつけた。そしてJ.コクトーを仕掛け人としてオネゲル,ミヨー,プーランクらの〈六人組〉が戦後最初の前衛活動をおこし(1918),次にきたソーゲHenri Sauguet(1901‐89)はR.デゾルミエールらとサティを先達と仰ぐグループ〈アルクーユ楽派〉を結成した。…
※「サティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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