サンマルタン(英語表記)〈フランス〉Saint-Martin/〈英〉Saint Martin

デジタル大辞泉 「サンマルタン」の意味・読み・例文・類語

サン‐マルタン(〈フランス〉Saint-Martin/〈英〉Saint Martin)

西インド諸島東部、小アンティル諸島北部に位置するセントマーチン島の北部を占めるフランスの海外準県。1648年にフランス人入植グアドループ県に属していたが、2007年に離脱し単独の海外自治体となった。主要産業は観光中心地は準県政庁が置かれるマリゴ。面積54平方キロメートル、人口3万人(2021)。→シントマールテン

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改訂新版 世界大百科事典 「サンマルタン」の意味・わかりやすい解説

サン・マルタン
Louis-Claude de Saint-Martin
生没年:1743-1803

フランスの哲学者,神智学者。啓蒙の世紀,18世紀後半における神秘思想の一大潮流,いわゆるイリュミニスムilluminismeを代表する人物。マルティネス・ド・パスカリ教団への加入を契機に思想家としての生涯を歩みはじめ,処女作《誤謬真理》(1775)の成功により社交界に出入りして,フランス内外に多くの支持者を得た。その後《望みに駆られた人》(1790),《霊人の使命》(1802)ほか,ほとんどの著書を〈無名の哲学者〉の名の下に発表。後期の作品においてはベーメの哲学から多くの発想を借りている。その思想は信仰と科学の両立を第一目標に置き,哲学的には啓蒙思想の機械論的・唯物論的傾向,宗教的には狂信カトリック教会ドグマに反抗したヒューマニズムに特徴付けられる。〈転落〉状態にある人間が本来の〈神人〉の地位を徐々に回復し,神-人間-宇宙を結ぶ統一的照応関係の復原を目ざす,という神話的救済論に立つ自然哲学を難解な文体に包んで説いた。論考の対象は人文・自然科学全般にわたり,中国,インドなどの非キリスト教文化にも重要な位置が与えられた。また1789年に始まったフランス革命には,神智学的観点から鋭い論評を加えている。彼の思想は19世紀ロマン派の哲学・文学に受け継がれ,ドイツではバーダーシュレーゲル兄弟,フランスではセナンクール,ノディエ,バルザックらの上に影響を跡付けることができる。
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