シアン化ナトリウム(読み)シアンカナトリウム(英語表記)sodium cyanide

デジタル大辞泉 「シアン化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

シアンか‐ナトリウム〔‐クワ‐〕【シアン化ナトリウム】

シアン化水素水酸化ナトリウムの反応によって得られる、潮解性のある白色の結晶。水によく溶け、アルコールにも溶ける。猛毒。金・銀の冶金やきん、鋼の表面硬化めっきなどに利用。化学式NaCN 青化ナトリウム青酸ソーダ

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共同通信ニュース用語解説 「シアン化ナトリウム」の解説

シアン化ナトリウム

青酸ソーダとも呼ばれる毒物で、金属のメッキなど工業用に広く用いられている。常温では白っぽい固体。水や酸などと反応すると、有毒で引火しやすい青酸ガスを出す。口に入れたりガスを吸い込んだりすると、呼吸困難やめまいを引き起こし、数秒で死亡することもある。化学兵器製造にも転用可能とされる。(北京共同)

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精選版 日本国語大辞典 「シアン化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

シアンか‐ナトリウムシアンクヮ‥【シアン化ナトリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( ナトリウムは[ドイツ語] Natrium ) ナトリウムのシアン化物。化学式 NaCN 等軸晶系の無色の結晶。猛毒。鋼の焼入れ、金・銀の冶金有機合成の中間体の製造、シアン化物・シアノ錯塩の製造、農薬などに広く用いられる。青酸ナトリウム。青酸ソーダ。青化ナトリウム。青化ソーダ

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改訂新版 世界大百科事典 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム (シアンかナトリウム)
sodium cyanide

化学式NaCN。俗に青酸ソーダまたは青化ソーダと呼ばれる。無色立方晶系の潮解性結晶。岩塩型構造。15℃以下では低温型菱面体結晶。猛毒である。融点563.2℃。沸点1496℃。比重1.857(23.5℃)。屈折率1.452。水100gへの溶解度34.2g(15℃),45.0g(35℃)。34.7℃以下では2水和物を析出する。液体アンモニア100cm3に-33℃で34.2g溶ける。メチルアルコール100gに15℃で6.05g溶け,エチルアルコールには微溶。水溶液中では加水分解し,アルカリ性を示す。乾燥空気中では370℃まで安定であるが,微量の鉄,ニッケルとの接触で急速に酸化されシアン酸ナトリウムNaOCNと炭酸ナトリウムを生ずる。このため溶融塩はよい還元剤で,鉛,スズ,銅などの酸化物を容易に還元する。また強酸化剤とは爆発的に反応する。水溶液中では強酸化剤により,シアン酸ナトリウムまで酸化される。アルカリ性水溶液中で塩素を反応し,無毒のシアン酸ナトリウムと塩化ナトリウムに変化する。この反応は工業的シアン化ナトリウム廃液の中和(無毒化)に応用される。硫黄または硫黄化合物と反応して無毒のチオシアン酸ナトリウムNaSCNになる。水および二酸化炭素の作用で徐々にシアン化水素を遊離する。水溶液は空気または酸素の共存で金および銀を溶解し,シアノ錯塩をつくる。

 工業的には,溶融ナトリウムに300~400℃でアンモニアを作用させてナトリウムアミドをつくり,これを炭素と反応させてナトリウムシアナミドとし,さらに700℃に熱してシアン化ナトリウムに変える(カストナー法Castner process)。シアン化水素酸と水酸化ナトリウムの作用でもつくられる。

 おもな用途は,メタクリル酸樹脂,有機合成中間体,各種シアン化物,シアノ錯体の製造用で,ほかに鋼の焼入れ,金,銀の製錬(シアン化法),電気めっき用にも用いられる。

 青酸カリ自殺と呼ばれているものの多くは工業用シアン化ナトリウムによるものであり,その保管・取扱いにはとくに厳重な注意と規制が必要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム
しあんかなとりうむ
sodium cyanide

ナトリウムのシアン化物。青酸ソーダ、青酸ナトリウムなどといわれる。従来は金属ナトリウム、アンモニアおよび木炭を原料とするカストナー法などが製造法の主流であったが、近年ではシアン化水素酸(青酸)が安価、多量に得られるようになったので、これを直接水酸化ナトリウム溶液に吸収させる方法が行われている。

  HCN+NaOH―→NaCN+H2O
そのまま液状品とするか、濃縮あるいは冷却固化して製品とされる。無色結晶性固体。潮解性で、水に溶けやすく、水溶液は強アルカリ性である。酸によって分解し、シアン化水素を発生する。アルカリ溶液中で塩素または次亜塩素酸ナトリウム溶液と反応してシアン酸ナトリウムと塩化ナトリウム(いずれも無毒)に変化する。この反応はシアン廃液の処理法として利用されている。鋼の熱処理、金、銀の精錬、金、銀、鉛などのめっき、農薬などに用いられるほか、有機合成の中間体の製造、各種シアン化合物の合成などに利用される。シアン化カリウムと同様、きわめて有毒で、一般に「青酸カリ自殺」のとき用いられるのは、実はシアン化ナトリウムであることが多い。

[鳥居泰男]



シアン化ナトリウム(データノート)
しあんかなとりうむでーたのーと

シアン化ナトリウム
  NaCN
 式量  49.0
 融点  563.7℃
 沸点  1496℃
 比重  1.857(測定温度23.5℃)
 結晶系 立方(15℃以下では菱面体)
 溶解度 34.2g/100g(水15℃)

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化学辞典 第2版 「シアン化ナトリウム」の解説

シアン化ナトリウム
シアンカナトリウム
sodium cyanide

NaCN(49.01).青酸ソーダ(sodium prussiate)ともいう.以前は溶融したナトリウムにアンモニアを反応させてナトリウムアミドNaNHをつくり,これに赤熱したCを反応させると得られた.現在は,シアン化水素HCNが多量に得られるので,これとNaOHとの反応でつくられる.無色の立方晶系結晶.塩化ナトリウム型構造.C-N約1.1 Å.無水物は,密度1.86 g cm-3.融点563.7 ℃,沸点1496 ℃.乾燥空気中では370 ℃ まで安定である.潮解性があり,水に易溶.水溶液は加水分解のために強アルカリ性を示す.酸で(CO2でも)HCNを発生する.水溶液は空気の存在下で金,銀を溶かす.また,水酸化鉄(Ⅱ)と加熱するとNa4[Fe(CN)6]を生じる.水溶液を濃縮すると,二水和物の単斜晶系の結晶が得られる.硝酸塩などの強酸化剤と混合すると爆発することがある.代表的なシアン化物として有機合成,医薬品,農薬,顔料などの原料,金,銀の青化法による精錬,めっき,鋼の焼入れ,写真,殺虫剤,分析試薬などに広く用いられる.猛毒.[CAS 143-33-9]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム
シアンかナトリウム
sodium cyanide

化学式 NaCN 。青化ソーダ,青酸ナトリウムともいう。市販品は 95~98%程度の純度をもつ。潮解性の無色粉末。激毒 (→青酸中毒 ) 。乾燥状態では無臭であるが,湿った空気中ではいくぶん潮解し,青酸臭を呈する。融点 564℃,沸点 1496℃。水に易溶,アルコールにいくぶん溶ける。水溶液は加水分解して強アルカリ性を示す。この溶液は空気の存在下で容易に錯塩をつくって,金,銀を溶解する。鉱石から金,銀を抽出するのに使われ,メッキ液用として広く使用される。果樹,船舶,鉄道貨車,倉庫などの薫蒸,シアン化水素や他のシアン化物の合成などに用いられる。

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百科事典マイペディア 「シアン化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

シアン化ナトリウム【シアンかナトリウム】

化学式はNaCN。比重1.857,融点563.2℃,沸点1496℃。俗に青酸ソーダ,シアン化ソーダとも。無色,潮解性の結晶。水に易溶,アルコールに可溶。猛毒。鋼の浸炭,金・銀の製錬(シアン化法),めっきなどに使用。工業的には融解ナトリウムにアンモニアを反応させて得たナトリウムアミドNaNH2と炭素とを加熱するなどの方法で製造。
→関連項目青酸中毒

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