シジュウカラ(読み)しじゅうから(英語表記)great tit

改訂新版 世界大百科事典 「シジュウカラ」の意味・わかりやすい解説

シジュウカラ (四十雀)
great tit
Parus major

スズメ目シジュウカラ科の鳥。全長約15cm。頭の上部とのどが黒く,ほおは白い。上面は青灰色で,後頸(こうけい)が緑灰色,下面は白く,腹部の中央を黒色の太い帯が縦に走っている。翼には1本の白帯がある。雌雄は同色だが,下面の黒帯は雌より雄のほうが太く,頭部の黒色も雄では光沢がある。落葉広葉樹林にもっとも多いが,下層木層に落葉広葉樹があれば針葉樹林にも見られ,樹木の多い市街地にもすむ。繁殖期には雄が見通しのよい枝にとまって,ツツピー,ツツピーと繰り返しさえずる。4~6月に,雌は天然の樹洞巣箱の中にコケ類を用いて営巣し,獣毛,シュロ毛,ゼンマイの綿毛などを敷いた産座に1腹7~10個の卵を生む。抱卵は雌が行い,13~14日で雛がかえる。雛は雌雄から昆虫類を与えられ,19~21日で巣立つ。巣立雛は両親の給餌を受けながら生活し,約1ヵ月で独立する。独立した若鳥は夏の間,若鳥だけの群れを形成し,秋に成鳥とともに冬の群れをつくる。冬の群れは構成員が一定していて,それぞれはっきりした行動圏をもっている。他のカラ類がいる林では混群をつくり,林の中を移動しながら,おもに地上で採食し,昆虫類のほかに木の実も食べる。ツンドラや砂漠を除いたユーラシア大陸の全土と北アフリカに分布する。日本では北海道から琉球列島までの各地に留鳥として生息する。

 シジュウカラ科Paridaeの鳥は一般にカラ類と呼ばれ,全長10~20cmの小鳥で,短いががんじょうなくちばしとしっかりした脚をもっている。羽色はじみだが,頭部にはっきりした黒と白の模様がある。森林の樹上につがいか小さな群れですみ,身が軽く,動作が活発で,細い枝先に逆にぶら下がったり,樹幹にとりついたり,ときには羽ばたきながら空中にとまっておもに昆虫類をとる。秋から冬には木の実も食べ,かたい実は両脚の指の間にはさんで,くちばしでたたき割って食べる。繁殖期には天然の樹洞などを巣穴にするために,巣箱をかけると営巣場所によく利用する。冬の間は,カラ類のほかにエナガキクイタダキ,ゴジュウカラコゲラメジロなどが加わった混群をつくり,地上から樹冠部までに広がって採食する。ヨーロッパアジア,アフリカ,北アメリカに約45種が分布するが,多くの種はアジア,ヨーロッパにすみ,サハラ砂漠以南のアフリカに黒色のクロガラ類10種と北アメリカにアメリカコガラ類10種が分布する。日本には,シジュウカラ,ヤマガラコガラ,ハシブトガラ,ヒガラの5種が繁殖している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シジュウカラ」の意味・わかりやすい解説

シジュウカラ
Parus minor; Japanese tit

スズメ目シジュウカラ科。全長 15cm。頭は黒色で頬が白く,背面は灰青色で,後頸と上背が緑色を帯びている。下面は白色で,喉から胸,腹にかけて中央が帯状に黒く,この帯模様は雄のほうが雌より太い。シベリア東部やサハリン島カムチャツカ半島南部,東アジア中国南部,インドシナ半島北部に分布し,日本にも全国に留鳥として生息している。落葉樹林に多く,都会の公園や庭などでもよく見られる。樹洞などの穴内に営巣し,巣箱もよく利用する。秋から冬の間は群れをつくって生活し,冬には庭先の餌台をよく訪れるのでなじみ深い鳥である。冬季はヤマガラエナガコゲラのほかコガラメジロなどと混群になっていることが多い。なお,シジュウカラ科 Paridaeは世界に 59種が知られており,そのうち日本にはコガラ,シジュウカラ,ハシブトガラヒガラ,ヤマガラの 5種が生息している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シジュウカラ」の意味・わかりやすい解説

シジュウカラ
しじゅうから / 四十雀
great tit

広義には鳥綱スズメ目シジュウカラ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのシジュウカラParus majorは全長15センチメートルの小形の鳥で、背面は青灰色、腹面は白くのどから腹部の真ん中を通る幅広い1条がある。頭は黒く頬(ほお)は白い。ユーラシアの中緯度地方から、東南アジア、北アフリカにかけて広く分布する。日本ではほとんど全土にみられ、小笠原(おがさわら)諸島を除く多くの島々にもいる留鳥。沖縄のものは黄色みが少なく、頭の黒色部が幅広い。ヨーロッパのものは腹面が黄色である。落葉広葉樹林、常緑広葉樹林にすみ、とくに林縁や二次林に多く、公園や人家周辺の樹木の多い所にもよく現れる。樹木の幹や大枝、林床の低木の中や地上に食物を探すが、嘴(くちばし)で樹皮をはがしたり、落ち葉を取りのけてみたりする。食物は昆虫やクモ、果実、種子などいろいろで、枝の上でそれらを足指で押さえ、つついて食べる。イギリスでは朝配達された牛乳瓶の蓋(ふた)をあける事件をおこしている。冬は小群から大群までの群れをつくって過ごし、繁殖期はつがいに分かれて強い縄張り性を示し、雄は盛んにさえずる。巣は樹洞やキツツキの古巣につくり、巣箱をよく利用する。

 シジュウカラ科Paridaeはユーラシア、北アメリカ、アフリカに広く分布し、46種が知られる。とくにユーラシアに多くの種が集中し、色彩もいろいろのものがいる。北アメリカにはアメリカコガラP. atricapillusなどコガラ型のものが多く、アフリカにはクロガラP. nigerのように黒色のものがいる。

[中村登流]


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百科事典マイペディア 「シジュウカラ」の意味・わかりやすい解説

シジュウカラ

シジュウカラ科の鳥。翼長7cm。頭と喉(のど)が黒く,頬(ほお)の白色が目だつ。ユーラシア大陸中・南部に広く分布し,日本では全国の低地〜山地の林で繁殖する留鳥。市街地の公園や庭園にも多い。樹洞,石垣のすき間,巣箱等にコケを用いて巣を作る。おもに昆虫,クモ等を食べる。ツツピーツツピーとさえずる。
→関連項目ヒガラ

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