シネラリア(読み)しねらりあ(英語表記)cineraria

翻訳|cineraria

精選版 日本国語大辞典 「シネラリア」の意味・読み・例文・類語

シネラリア

〘名〙 (cineraria) キク科越年草カナリア諸島原産で、日本へは明治初年に渡来、観賞用に栽培される。高さ四〇~六〇センチメートル。葉は大型の心臓形で縁は波状に切れ込み、裏面紫色を帯びる。葉柄には翼があり、基部は耳状になって茎を抱く。初夏、また、温室では冬から春にかけて、茎の上部多数の頭花を開く。頭花の周辺には一〇~一二個の舌状花があり、花色は紅・紫・藍・白色など。中心の管状花は紫色、まれに黄色。サイネリア。ふうきぎく。ふきぎ。《季・春》
風俗画報‐二七五号(1903)両陛下御巡覧「ホクシャー、チュリップ、シネラリヤ〈略〉等の洋種草花百鉢を駢(なら)べて」

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デジタル大辞泉 「シネラリア」の意味・読み・例文・類語

シネラリア(cineraria)

キク科の多年草。高さ40~60センチ。葉は心臓形に近い卵形フキに似る。冬から春に、紅・紫・白などの花を多数つける。カナリア諸島の原産。観賞用に温室で栽培される。蕗菊ふきぎく蕗桜ふきざくら。サイネリア。 春》

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シネラリア」の意味・わかりやすい解説

シネラリア
しねらりあ
cineraria
[学] Pericallis hybrida B.Nord.
Senecio cruentus DC.

キク科(APG分類:キク科)の不耐冬性一年草。シネラリアのシが死に通ずるとして嫌い、一般にはサイネリアとよばれる。和名をフキギク(蕗菊)またはフキザクラ(蕗桜)ともいう。アフリカのカナリア諸島原産。葉はフキに似た卵形の広葉で茎は直上し、その先に花柄を分枝して小ギク状の頭状花をつける。花色は紅桃、桃、藤青、紫、白色などあり、花弁の外側が有色のものや、外側が白色で蛇の目模様になるものも多い。プリムラ類と並んで3、4月の代表的な鉢花であるが、市場には最近11月下旬ころから出荷されるものがあって、開花期の幅は広がっている。また、4月以降霜のおそれがなくなると花壇やプランター用としても利用される。

 系統は、花径が7~10センチメートルにもなり花つきは多くはない大輪のグランディフローラ系、花径4~6センチメートルの小輪系であるが、花は株を覆うほどたくさんつき、丈は30~40センチメートルくらいになるマルチフローラ系、両系統の中間型とみられるダルマ系の三つに大別される。ダルマ系は日本独特の中輪系で、花つきも多く、丈も20~30センチメートルと低く、株全体がこぢんまりと締まり、もっとも多くみかける系統で、蛇の目模様の花もほとんどこの系統である。

 繁殖は実生(みしょう)により、8月下旬から9月中旬ころまで、できるだけ日よけをした涼しい所に播(ま)く。一度仮植え後、3号鉢にあげ、さらに株が発育した段階で5号鉢に鉢替えする。シネラリアは十分日に当てて育て、冬季は日中20℃前後、夜間は5~8℃くらいの温度下で栽培する。病害虫はうどんこ病が出やすく、アブラムシもつきやすい。

[鶴島久男 2022年2月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「シネラリア」の意味・わかりやすい解説

シネラリア
cineraria
Senecio cruentus DC.

キク科の多年草。死に通ずる語感を嫌ってサイネリアとも,またフウキギク(富貴菊)ともいう。シネラリアは古い属名による名称。カナリア諸島原産で,直立する短い茎から,心臓状卵形の葉が四方へ互生する。葉は緑色で,葉裏が紫紅色。散房花序で,冬から春にかけて,花軸の上にキクの花に似た頭花をつける。春の鉢花としてよく知られ,園芸品種が多数あり,高性,矮性(わいせい)のものや,花色も紅,桃,青,紫,白,黄といろいろで,絞り咲き,蛇の目咲きのものもある。多年草だが,夏の暑さに弱いため,ほとんどが一・二年草として栽培される。繁殖は種子により,7~10月に播種(はしゆ)するが,挿芽でもふえる。冬は3℃以上を保ち,よく日に当てるが,保温の温度が高すぎると徒長する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シネラリア」の意味・わかりやすい解説

シネラリア
Senecio cruentus(Cineraria cruenta); cineraria

キク科の越年草。大西洋上のスペイン領カナリア諸島原産。サイネリアともいわれ,またフウキギク,フキザクラの和名もある。葉は大きな心臓形,縁が波状になって上面緑色,下面は紫色を帯びる。春から初夏にかけて,茎の上部でよく分枝し多数の美しい頭状花を散房状につける。舌状花の色は,紅,紫,濃紫,赤紫,白などで,舌状花冠の基部で色の変る複色の品種が多い。中心の管状花は普通紫色,まれに黄色である。頭花の直径は3~4cmのものが普通であるが,品種により大輪のものや,背も低く頭花も小さいものまでさまざまである。植物分類学上はサワギク属 Senecioに入れるが,園芸界では古い属名の Cinerariaが使われることが多い。

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百科事典マイペディア 「シネラリア」の意味・わかりやすい解説

シネラリア

花屋ではサイネリアとも。カナリア諸島原産のキク科の多年草を主たる交雑親として作出された園芸品種群。普通には一年草として夏〜秋まきにして,低温室で育てる。草たけは20〜30cm。冬〜春の鉢物に好適。大〜小輪の系統があり,花色もビロード様のつやのある青,紫,紅,白の単色や蛇(じゃ)の目咲など,変化が多い。

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世界大百科事典(旧版)内のシネラリアの言及

【セネシオ】より

…鉢物や花壇材料として扱われる。シネラリアはカナリア諸島の原産で,サイネリア,フウキギク(富貴菊)の名もある。直立する短い茎から心臓状卵形の葉が四方へ互生し,葉は表が緑色で裏が紫紅色。…

※「シネラリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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