フランスの著名な中国学者。実証的な学風で、単に正統的な古典ばかりでなく、広く未利用の資料の発見、紹介に努め、「フランス・シナ学」の名声を高め、日本にも影響を与えた。本国で中国学を修めたのち、北京(ペキン)公使館付として学術調査にあたり、帰国してコレージュ・ド・フランス教授、学士院会員に任ぜられ、1890年コルディエを助けて、ヨーロッパ学界を代表する雑誌『通報』T‘oung Paoを発刊、やがてこれを主宰した。その業績のおもなものは『史記訳解』5巻で、原書の約3分の1に及ぶ。『西突厥(とっけつ)史料』はオルホン碑文を取り扱ったもの、『泰山誌』は泰山崇拝の民俗的研究、そのほか『麻尼(マニ)経遺文考釈』から、仏教説話、卜辞(ぼくじ)にまで対象が広がった。
[宮崎市定]
フランスの東洋学者。リヨンに生まれ,パリの高等師範学校を卒業。1893年にコレージュ・ド・フランスの教授,1903年に学士院会員となる。《史記》など漢籍の翻訳のほか,研究は金石文や仏教,美術,考古等の広範囲にわたるが,その本領は新発見の資料や埋もれた文献の忠実な紹介解説にある。なかでもスタインの獲得した漢晋簡牘(かんとく)を釈読考証した《Les documents chinois découverts par A.Stein dans les sables Turkestan oriental》(1913)は,近代簡牘学の創始者とよぶにふさわしい不滅の業績である。
執筆者:永田 英正
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…中国の山西省大同市の西約15km,雲岡鎮にある北魏時代の仏教石窟。武周山に面した高さ20~30mの北の崖面(砂岩)に並び,南面した大窟21(第1洞から第20洞および第39洞),中小窟20,磨崖仏龕(がん)約120があり,全長3kmに及ぶが,主要な石窟は1kmの中に集中している。1902年(光緒28)伊東忠太が踏査して重要性を指摘。07年にE.シャバンヌがはじめて多数の写真を撮影,石窟番号を与えて発表した。…
…竹,または木の札に書かれた中国,漢時代の文書や記録。紙は後漢初に蔡倫が発明したという伝説が普及しているが,紀元前2世紀の紙も出土している。ただそれらは包紙として用いられ,書写材料は帛(はく)または簡牘(かんとく)であった。漢簡の標準は長さが当時の1尺(約23cm),幅5分程度のもので,約30~40字を1行に書く。幅を2倍に広げ2行書けるものを両行(りようこう),長さ2尺のものを檄(げき),3尺のものを槧(ざん),文書の上蓋で宛名を書くものを検(けん),物品に名称を書いて付ける絵符の働きをするもの,日本の木簡のつけ札に当たるものを楬(けつ),合わせて証明に用いる符,旅行者の身分証明である棨(けい)など形態,用途により名称が細かく分かれている。…
※「シャバンヌ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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