シャリンバイ(読み)しゃりんばい

改訂新版 世界大百科事典 「シャリンバイ」の意味・わかりやすい解説

シャリンバイ (車輪梅)
yeddo hawthorn
Rhaphiolepis umbellata Makino

おもに海岸に見られるバラ科の常緑低木または小高木。和名は,枝と花の形からついた。高さ1~4m,枝は車輪状にひろがり,灰黒色になる。葉は厚く堅くて暗緑色,縁には鋸歯がまばらにあるかほとんどなく,長さ5~10cm,形は狭卵形から円形に近い広卵形まで変異が多い。とくに葉の丸いものは,マルバシャリンバイの名で区別されることもある。花は枝先に5月ころ咲き,花冠は径1~1.5cm,花弁は5枚で白色,円形または倒卵形おしべは20本。球形果実は,秋に黒く熟す。本州中部以南,九州まで分布し,朝鮮にも知られている。古くから庭に植えられ,また近年は,街路ぞいに栽培されているところも多い。変種のホソバシャリンバイvar.liukiuensis Koidz.は,南西諸島にあり,奄美大島地方では大島紬つむぎ)を染めるのに,この木(地方名テーチキ)の樹皮を使用する。シャリンバイはインド北部から中国に分布するR.indica(L.)Lindl.に似ていて,同種とする意見もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャリンバイ」の意味・わかりやすい解説

シャリンバイ
しゃりんばい / 車輪梅
[学] Rhaphinolepis indica (L.) Lindl.
Rhaphiolepis umbellata (Thunb.) Makino

バラ科(APG分類:バラ科)の常緑低木。高さ1~4メートル。多くの枝に分かれる。葉は単葉で枝の先に集まって互生し、倒卵形から楕円(だえん)形で、有柄で縁(へり)にすこし鋸歯(きょし)があるかまたは全縁である。托葉(たくよう)は線形で早く落ちる。5~6月、枝先に円錐(えんすい)花序をつくり、白色の5弁花を開く。雄しべ20本。雌しべは2本、子房は下位。果実はなし状果、球形で径約1センチメートル、やや光沢があり、黒く熟す。暖地の海岸に生え、本州から九州に分布する。形態的な変異が大きい。葉身が広倒卵形から広楕円形でほとんど全縁の変種をマルバシャリンバイといい、よく庭園や道路の植え込みに用いる。名は、葉が輪生状につくことから車輪になぞらえ、また花がウメに似ることからつけられたという。シャリンバイ属は、アジアの亜熱帯から暖温帯に約15種分布する。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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百科事典マイペディア 「シャリンバイ」の意味・わかりやすい解説

シャリンバイ

東北地方南部〜沖縄の海岸にはえるバラ科の常緑低木。東アジアにも分布。葉は広楕円形で厚くて堅く,表面には光沢があり,縁には微鋸歯(きょし)がある。4〜6月,枝先に円錐形の花序をつけ,径1〜1.5cmの白色5弁の花を開く。果実は球形で10〜12月,黒熟する。庭木とし,また奄美(あまみ)大島では樹皮を大島紬(つむぎ)の染料とする。車輪梅の名は,一見輪生状の葉とウメを思わせる花にちなむという。

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世界大百科事典(旧版)内のシャリンバイの言及

【大島紬】より

…その結果総蚊絣文様による精巧緻密な製織,色大島,摺込み抜染技術などによる多色染大島,あるいは白大島の開発などをみるにいたった。大島紬は経絣,緯絣,経緯絣と種類も多く,またテーチギ(和名シャリンバイ)の煎汁液に糸を浸し,鉄分の多い泥水につけて媒染し,焦茶色に発色させる泥染は伝統的な技法として今日も受けつがれている。現在は名瀬市を中心とする奄美産地のほかに鹿児島市でも広く生産され,奄美地区は経緯絣を,鹿児島地区は緯絣を生産の主体としている。…

※「シャリンバイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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