インドネシア共和国,ジャワ島の東部と中部で約9000万人によって話される言語。アウストロネシア語族中のインドネシア語派に属し,9世紀にさかのぼる古い文献をもつ。ソロの方言が標準的とみなされる。母音8種(a,é,è,e,i,ó,ò,u),子音21種(p,t,th[],c[tʃ],k;b,d,dh[ɖ̥],j[dʒ],g; m,n,ny,ng[ŋ];r,l,lh[],h,s;w,y)がある。無声と有声の対立がしだいに消滅し,後続母音の声調の高低に転移しつつある。またジャワ語の特徴として〈絶対敬語〉的敬語法を発達させていることがあげられる。普通語(ンゴコ)に対して約900語の尊敬語(クロモ)と,約250語の崇敬語(クロモ・インギル)とがある。下の例文は三つとも〈健康は最大の宝である〉の意味である。(1)は普通語のみからなり,(2)と(3)は尊敬語(太字)を含み,(3)は崇敬語(太字斜体)を含む。例:(1)Kewarasan iku bândhâ sing gedhé dhéwé.(2)Kesarasan menikâ bândhâ ingkang ageng piyambak.(3)Kesugengan menikâ bândhâ ingkang ageng piyambak.文頭の名詞は〈健康〉の意,iku,menikâは指示詞〈それ〉,bândhâは〈宝〉の意,sing,ingkangは関係代名詞,gedhé,agengは〈大きい〉を,dhéwé,piyambakは〈もっとも〉を意味する。
執筆者:柴田 紀男
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マライ・ポリネシア語族インドネシア語派の一言語。インドネシアの中部、東部ジャワ島を中心にして、南アメリカのスリナム、南太平洋のニュー・カレドニア、マレーシアなど国外の移住者を含め、言語人口は5000万人を下らない。
南インドのパッラバ文字で書かれた碑文が8世紀からあり、10世紀前後には『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』という二大インド文学の翻案も行われ、現在の民間芸能ワヤン(人形影絵劇)の重要な題材となっている。発達した敬語法で知られ、基本的な平常体(ヌゴコ)と尊敬体(クロモ)というレベルを中心に、二者の中間に位置する中間体(マディオ)、最上の敬意を表す最上敬体(クロモ・インギル)が使い分けられる。人称代名詞(人称接辞)、語彙(ごい)による区別が、平常体では目上から目下へ、尊敬体では目下から目上へと行われるが、平常体、尊敬体とも同じレベルの者同士でも用いられる。文法的接辞のうちでは、動詞につく-aké(平常)、-aken(尊敬)のみが区別される。
「ぼくはぼくの子供に金をやる」の尊敬体は
「わたしのお父さんがわたしにお金をくださる」となり、maring(←paring)は最上敬体語彙である。最上敬体には相手を敬う場合のほか、自分を謙遜(けんそん)しても表すことができ、paringのような敬称とsaos「さしあげる」のような謙称とが区別される。
[崎山 理]
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…表参照)。 マレー語は7世紀末から,ジャワ語は8世紀初期から,バリ語Balineseは9世紀末からの碑文があり,特にジャワ語には9世紀ころからの豊富な文学作品が現在に至るまで途切れることなく残っている。古くからインドネシア地域一帯に南インド系の文字が広く行われており,これらの碑文もこの系統の文字で書かれているが,現在ではフィリピンのタグバヌワ族(パラワン島),マンギャン族(ミンドロ島),インドネシアのバタク族(スマトラ)など,ごく限られた地域にしか使用されていない。…
…方言的には二つに分けられ,東部のカンゲアン島方言が上記の方言と対立する。文法的にはジャワ語に最も近く,ジャワ語にみられる敬語法もマドゥラ語に存在し,その語彙(ごい)的使分けもジャワ語とほぼ対応する。音韻的にジャワ語と最も異なる点は,帯気音(bh,dh,ḍh,zh,gh)と無帯気音(b,d,ḍ,z,g)の区別を有声破裂音にもつことで,言語史的には原インドネシア語からマドゥラ語がそのような対立を新たに発生させたものと考えられる。…
※「ジャワ語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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