現在では一般に,体罰を含む厳格な教育法の代名詞として使われる語。本来,特定の歴史状況の中で生まれ,共同体国家の維持と密接に結びついていた古代ギリシアのスパルタにおける教育制度に由来するもの。スパルタは前7世紀半ばの第2次メッセニア戦争後,平等者の共同体を形成した。そしてこの体制を維持し,圧倒的に数の多いヘイロータイの反乱を防ぐために社会全体が精強な軍隊形成に向けて組織された。健康な新生児の養育のみが許され,男児は満7歳になると親元を離れ共同生活に入った。最初の5年間は文字を習得し,裸や裸足で過ごす習慣をつけるなどの準備期間であった。12歳から訓練は本格化し,少年たちは年齢級に編成された。食事は身体の発育に必要な量に限られ,1年を1枚の上着だけで過ごし,沐浴や塗油もまれに許されるのみで,夜は藺草(いぐさ)を敷いて寝た。少年は6年に及ぶこの訓練期間中に兵士としての肉体的鍛練を積み,服従と忍耐の徳目を身につけ,簡にして要を得た話しぶりや思考法を習得したのである。スパルタでは18歳で法律上の成人となり非戦闘員として軍隊内で訓練を受け,20歳で名実ともに成人となったが,30歳まで常備軍として兵営生活をした。一方,女子は丈夫な子どもを産むように鍛練され,競走,槍投げ,ビバシスという跳躍運動などの訓練を受けた。このような厳しい訓練はスパルタをギリシア最強の陸軍国としたが,そのあまりの徹底性は古典期スパルタの文化を前古典期の文化に比して見る影もないものとした。さらに,スパルタが衰退するにつれてこの教育制度は形骸化し,アルテミス神殿の鞭打ちの儀式のごとくにローマ時代には見世物に堕した。
→スパルタ
執筆者:古山 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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