尾崎士郎の長編小説。1933-43年《都新聞》《東京新聞》に連載。〈青春〉,〈愛慾〉,〈残俠〉,〈風雲〉,〈遠征〉の各編から成り,仁俠の世界を描いた〈残俠〉編を除き作者の自伝的小説である。35年,〈青春〉編が刊行され川端康成が絶賛するやベストセラーとなった。三州吉良(きら)に生まれた青成瓢吉が,青雲の志を抱いて早稲田に学び,野放図な青春を送り,学校騒動で主役を演じ,旗亭の娘お袖と恋仲になるが,やがて学校も女もすてるまでの〈青春〉編が傑作であり,評価も高い。
執筆者:都築 久義
〈青春〉編刊行の翌36年,内田吐夢監督により同監督のトーキー第1作として《人生劇場》は日活で映画化され,映画史上に残る名作となった。そのシナリオは新協劇団が築地小劇場で上演した戯曲にそうものであった。戦後もたびたび映画化されているが,なかでも内田の《人生劇場--飛車角と吉良常》(1968),加藤泰監督《人生劇場--青春・愛慾・残俠篇》(1972)が知られる。
執筆者:川田 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
尾崎士郎の自伝的長編小説。1933年(昭和8)『都(みやこ)新聞』(『東京新聞』の前身)に「青春篇(へん)」を発表し、以後、「愛欲」「残侠(ざんきょう)」「風雲」「遠征」の各篇を同紙に書き継ぎ、第二次世界大戦後も「夢現」「望郷」「蕩子(とうし)」の3篇を中間小説誌各誌に書き加えた。「青春篇」が刊行(1935・竹村書房)されるや、川端康成(やすなり)に「この一篇は尾崎氏が如何(いか)に立派に生きて来たか、人生を掴(つか)んでゐるかを明かにし、作家としての真価を心ゆくばかり発揮した」と激賞され、ただちに映画化、舞台化されて評判となった。三州(さんしゅう)横須賀村の辰巳(たつみ)屋のひとり息子青成瓢吉(あおなりひょうきち)が「男らしく生きよ」と育てられ、岡崎中学を経て早稲田(わせだ)大学に進み、学校騒動のリーダーとなるまでを描いたのが「青春篇」で、情熱的で野放図(のほうず)な学生たちの反骨と友情を大正初期を時代背景として活写した青春小説である。侠気(きょうき)と正義感、義理と人情といった日本的心情があふれ、それが読者の琴線を揺さぶり、時代を超えた傑作と評価されるゆえんであろう。
[都築久義]
『『人生劇場――青春篇』全2冊/『人生劇場――愛欲篇』全2冊(新潮文庫)』
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