食べることや食べ物を作ること,楽しみながら食べようという考え方。あるいは,こうしたライフスタイルを意味する。〈味の画一化〉をもたらすファーストフードを批判する意味で〈スロー〉という言葉が使われたが,ファーストフードを単純に否定するのではなく,食文化をいま一度見直そうという意識が底流には流れている。イタリア北部の町ブラ(Bra)で1980年代に始まった運動がきっかけ。ローマにファーストフードのチェーン店が誕生した際にイタリアの伝統的な味や家庭の味が忘れ去られてしまうのではないかと運動が起こり,これが1986年の特産品の保護と伝統を掲げた組織〈アルチゴーラ〉の設立へとつながり,国際的なスローフード協会(本部イタリア)の誕生をもたらした。〈伝統的な食材や料理,質のよい食品,ワイン(酒)を守る〉〈子供たちを含め消費者に味の教育をすすめる〉〈質のよい素材を提供する小生産者を守る〉の3つが活動指針として掲げられている。日本では2001年10月にニッポン東京スローフード協会が設立されるなど各地に支部がつくられているほか,2004年6月には機関誌《slow》の日本語版《スローフード》(季刊)が創刊された。さらに,〈スロー〉という言葉を生活全般に適用した〈スローライフ〉,アメリカで2000年ごろから導入されはじめた市場戦略用語〈ロハス(LOHAS。Lifestyle of Health and Sustainability)〉も,日本では健康や環境問題に関心をもつ人を中心に流行した。