翻訳|slow food
スローフードは、標準化、画一化された安価なファストフードfast foodなどの食べ物とは異なることを意味することばである。単にファストフードの対極のことばとして紹介されていることもあるが、大きくは「食」と「食文化」についての根源的なところを考える活動を意味する。
スローフードとは、(1)消えてゆくおそれのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、酒類を守る、(2)質のよい素材を提供する小生産者を守る、(3)子どもたちを含め、消費者に味の教育を進める、というテーマを掲げ、イタリアのブラBraという地方からスタートしたNPO(民間非営利組織)による活動である。その設立は、1989年にさかのぼる。その年、スローフードインターナショナルは、パリのオペラコミークで世界の15か国から支持された『スローフード宣言』を発表した。2002年時点で、その活動は世界の45か国に広まり、「コンビビア」とよばれる560の集まりが組織され、6万5000以上の人たちが参加している。たとえば、イタリアのスローフードでは、隔年に一度、世界各地の食材やワイン、料理、文化的情報を集め、味の発見と確認をしようという食の祭典「Salone del Gusto」を開催している。
日本では、活動ということばに置き換えなくとも、古くから自然で低カロリーな米食や郷土食、そして地方の特色ある食材や日本酒(清酒)、焼酎(しょうちゅう)があり、日常のなかでスローフードが実践されてきた。しかし一方では、流通や販売の方法により、北海道から沖縄まで同じ食材で同じ味の食事をするといった画一化が進んでいる。そこで、日本のスローフード活動は、伝統的な食材や各地の郷土料理を体験したり、日本酒を酒米から研究し調査するといったことから、小規模生産のよい素材を守っていくことなどの活動を進めている。また、子どもたちや消費者に対して味覚の教育を行う「食育」という活動も進めている。現在は「農業や漁業そして醸造といった食の生産の場」から「人の食事」に至る道程がみえなくなり、さらに自分自身の生活スピードの把握も困難になってきている。そのような状況のもとで、スローフードの意味すること、「一度立ち止まって、しっかりと『生活』と『食』を見直すこと」が、未来につながる道をつくると考えられている。
[國本桂史]
『日本食生活協会編・刊『食生活指針ガイド 2002』(2002)』▽『中島章夫監、こどもくらぶ編・著『食べもので国際交流――地域でできるこれからの国際交流3』(2002・岩崎書店)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(中島富美子 フード・ジャーナリスト / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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