セイタカアワダチソウ(その他表記)Solidago altissima L.

改訂新版 世界大百科事典 「セイタカアワダチソウ」の意味・わかりやすい解説

セイタカアワダチソウ
Solidago altissima L.

北アメリカ原産の帰化植物で,キク科多年草。セイタカアキノキリンソウともいう。秋の開花期には,河原土手や郊外の野山のふもとや荒地など,いたるところが黄色一面に色どられる。第1次世界大戦前に,北アメリカから観賞用としてもち帰られ栽培されていたが,戦後京阪神,九州北部を中心に急速にひろがり始めた。現在では関東,中部でも群落をつくっている姿がみられるようになった。

 地下茎が放射状にひろがり,丈が2m以上にもなる。茎は分枝せず,全体に短毛がある。葉は密に互生し,披針形で先端がとがり,縁にまばらな鋸歯がある。花は10~11月,茎頂円錐花序をつくって,たくさんの黄色い頭花をつける。頭花は中心部に両性筒状花があり,縁に雌性の舌状花が1列ある。総苞は円筒形で,長さ3.2~5mm。円柱形の瘦果(そうか)には斜上した毛が生えている。冠毛は汚白色。風によって運ばれた瘦果が発芽定着すると,本種は地下茎で栄養繁殖をするため,宅地化の進む都市近郊の路傍や放棄された田畑などで,すさまじい繁殖力を見せている。北九州の炭田地帯では,炭坑閉山が続いたころ急速にひろがったため,閉山草と呼ばれた。和名は草丈が2m以上にもなるので,背の高い〈泡立草〉の意味である。根から他の植物の生長を押さえる物質を出し,病虫害にも強い。晩秋の蜜源(みつげん)植物として養蜂業者に利用されている。一時期,花粉病の原因とさわがれたが,虫媒花であり,現在では関係がないとされている。
執筆者: よく似たカナダアキノキリンソウS.canadensis L.は夏ごろから咲き,セイタカアワダチソウほど大きくはならないが,観賞用や切花用に栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイタカアワダチソウ」の意味・わかりやすい解説

セイタカアワダチソウ
せいたかあわだちそう / 背高泡立草
[学] Solidago altissima L.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は直立し、高さ2~3メートルになる。茎の基部から四方へ走出枝を出し、その先に新苗をつくるので容易に大きな群落となる。10~11月、多数の黄色の頭花を大きな円錐(えんすい)花序につける。北アメリカ原産の帰化植物で、全国に広く帰化し、都会地に接した川原の土手や荒れ地にしばしば大きな群落をつくる。花粉アレルギーをおこす植物と騒がれたが、本種は風媒花ではなく、花粉が空気中を漂うことはないので、花粉アレルギーをおこすとは考えにくい。茎や葉にほとんど毛のないオオアワダチソウS. gigantea Ait. subsp. serotina (Kuntze) McNeillはセイタカアワダチソウによく似るが、花期が7~9月と早い。

[小山博滋 2022年3月23日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セイタカアワダチソウ」の意味・わかりやすい解説

セイタカアワダチソウ(背高泡立草)
セイタカアワダチソウ
Solidago altissima

キク科アキノキリンソウ属の多年草で,北アメリカ原産。明治の終りに西日本に侵入したといわれるが,第2次世界大戦後に京阪神の焼け跡を中心に荒れ地や都会地の周辺に広がり,その後 20年ほどの間に九州から北海道までのほぼ全域に広がった帰化植物。高さ 2m近くになり,茎はしばしば紫色を帯びる。披針形の葉を多数互生し,初秋に大きな花序をつくって多数の小さな黄色の頭状花をつける。各頭花は径数 mmで周辺には数片の線形の舌状花が並ぶ。無配生殖で種子を生じ,また根茎によっても繁殖する。同属の近縁種オオアワダチソウ S. giganteaも同じく北アメリカ原産の帰化植物で,日本各地の河原などにみられるが,本種に比べて背は低く,茎は緑色で,花は夏に咲く。

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百科事典マイペディア 「セイタカアワダチソウ」の意味・わかりやすい解説

セイタカアワダチソウ

キク科の多年草。別名セイタカアキノキリンソウ。北米原産の帰化植物で,土手や荒地に群落を作る。茎は分枝せず,高さ1〜2mになる。全体に単毛があってざらつく。頭花は小さく舌状花と筒状花からなり,10〜11月に茎頂に多くの小枝を分かち,黄色の円錐花序を作る。虫媒花。かつて花粉症の原因とされたが現在は否定。
→関連項目アキノキリンソウ

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世界大百科事典(旧版)内のセイタカアワダチソウの言及

【アレロパシー】より

…その作用は,阻害の場合も促進の場合もあるが,結果としては有害なものが多い。セイタカアワダチソウは周辺の植物を駆逐して旺盛な群落をつくるが,これはある種の阻害物質を出して周辺に生えている植物の生育を阻害しているためである。このような作用によって,近傍の他種との競争に打ち勝って繁栄している種があり,植物群落の種組成の決定や遷移の進行については,さまざまな生態的条件の一つとしてアレロパシーが大きな役割を果たしていると推定されているが,まだ研究はよく進んではいない。…

※「セイタカアワダチソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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