改訂新版 世界大百科事典 「センニンソウ」の意味・わかりやすい解説
センニンソウ (仙人草)
Clematis terniflora DC.
日当りのよい路傍の灌木林やブッシュ状の疎林でふつうに見られるキンポウゲ科のつる性の半灌木。茎の少なくとも下部は木化し,枯れずに越冬する。葉は対生し,羽状複葉,小葉は5枚で鋸歯はない。葉柄や小葉柄が木の小枝などに巻きつく。8~9月,枝の先端や葉腋(ようえき)より3出集散状の花序を出し,全体としてしばしば大きな円錐状になる。花は白色,上を向いて全開し,直径2~3cm。萼片は4枚,花弁はなく,おしべは多数,めしべも多数で花柱は長く,白毛がある。果実は楕円形で扁圧された瘦果(そうか)の集まりで,花柱は長くのび,銀白色の長い毛をつけて羽毛状になる。北海道南部から台湾までと南朝鮮から中国大陸南部,小笠原諸島に分布し,外国ではしばしば観賞用に栽培される。威霊仙(いれいせん)と称して薬用にされるものは,本来はシナセンニンソウ(一名サキシマボタンヅル)C.chinensis Osbeckの根であるが,センニンソウも広く用いられている。鎮痛薬などにされる。また,日本ではクレマチスの接木の台木にはもっぱらセンニンソウを用いる。
近縁のボタンヅルC.apiifolia DC.はつる性の半灌木であるが,葉は3枚の小葉からなり,小葉には鋸歯がある。花は白色で全開し,直径1.5~2cm。瘦果はあまり扁圧されない。本州から九州,朝鮮から中国大陸南部にかけて分布する。
センニンソウ属Clematis(英名virgin's-bower)は全世界の温帯を中心に分布し,200種以上が知られている。園芸植物も多く,クレマチスと総称される。日本にはセンニンソウと同様,つる性のハンショウヅルや小低木状になる草本のクサボタンC.stans Sieb.et Zucc.など20種近くが分布する。
執筆者:田村 道夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報