ドイツの建築家。ハンブルク生れ。ミュンヘン,パリ等で学んだ後,イタリア,ギリシアを旅行。30歳代初期からドレスデン王立芸術アカデミーの建築科教授として活躍。ネオ・ルネサンス様式の代表者とされるが,他の様式も用いた。作曲家R.ワーグナーの友人で,ともに共和主義者として三月革命に参画したため,パリ,ロンドンに亡命。その間ロンドン万国博(1851)で展示計画に参加,その後チューリヒ,ウィーンで設計,教育活動に携わる。ワーグナーのために新形式の劇場建築案を作成し,バイロイト祝祭劇場に影響を残した。代表作にはドレスデンの宮廷劇場(1841。焼失後1878再建),ウィーンの皇帝フォルム(1881着手),ブルク劇場(1888),宮廷博物館(1876)などがあり,明快な平面計画を特徴とした。また,建築を工芸制作の基本に戻って再検討する理論的試みとして《様式論》(1861-63)を著し,唯物論的美学者とされた。
執筆者:杉本 俊多
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ドイツの建築家、建築理論家。ハンブルク生まれ。ゲッティンゲン大学で法律と数学を学んだのち建築に転じ、ミュンヘンの建築家ゲルトナーに師事して古典主義の感化を受けた。フランス、イタリア、ギリシアを研究旅行後、1834年ドレスデン美術学校教授となり、同地のオペラハウス(1838~41)を設計した。49年以後ロンドン、チューリヒ、ウィーンに住み、ウィーンのブルク劇場や美術史博物館、自然史博物館の設計にあたった。著書『科学、工業および芸術』『工学および工学技術的芸術における様式』などで時代をリードする理論を発表した。ローマで没。
[野村太郎]
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…ウィーンにある美術館。マリア・テレジア広場に面して建つネオ・ルネサンス様式の建物で,ゼンパー,ハーゼナウアKarl Hasenauer(1833‐94)が設計し,1872‐81年に建設。コレクションは皇帝ルドルフ2世やレオポルド・ウィルヘルム大公など,歴代のハプスブルク家の熱心な美術愛好家によって収集された。…
…形式偏重の傾きをはらみながら,この芸術観は各方面を刺激し,美術史ではウェルフリンがとりいれて,様式の変遷を純粋な視覚的直観形式の自律的展開とみる形式主義的理論を樹立した。他方ゼンパーは芸術作品を使用目的,材料,技巧による型にはまった産物と規定したが,この唯物論的把握をしりぞけてリーグルは,一定目的を意識せる芸術意思の成果が作品であるとした。しかも様式の展開をウェルフリンのごとく純粋視覚の次元にとどまらせず,様式の根底にはそれぞれ固有の芸術意思をおき,芸術意思は世界観に根ざすとみた。…
…19世紀前期のヨーロッパで起こったルネサンス建築様式の復興をいう。ドイツのゲルトナーFriedrich von Gärtner(1792‐1847)はミュンヘンに建てたルートウィヒ教会(1829‐40)および国立図書館(1831‐40)で,イタリアのロマネスク様式やルネサンス様式に近い単純な煉瓦造りの半円アーチ様式を採用したが,これが石材に乏しいドイツの状況によく適合して流行し,やがてゼンパーによるドレスデンの宮廷歌劇場(1838‐41)のような優雅なルネサンス様式の採用に変化した。イギリスでは,C.バリーのロンドンの旅行家クラブ(1830‐32)や自由党クラブ(1838‐41)のような,パラッツォの様式を採用したクラブ建築が流行し,フランスでも,ラブルーストのサント・ジュヌビエーブ図書館(1838‐40)や,デュケネーのパリ東駅(1847‐52。…
…J.J.ウィンケルマンは,晩年の労作《古代美術史》(1764)において,メソポタミア,エジプト,ギリシア,ローマなど,地域と時代によってはっきり整理された歴史区分と,それぞれの区分のなかで一定の発展形態を示す様式の原理に基づく最初の美術史を確立した。19世紀に入ると,ヘーゲル哲学の強い影響の下に,芸術発展の歴史を技術の進歩によって説明しようとするG.ゼンパーの《技術による諸芸術様式論》(1861‐63)や,芸術を民族,環境,時代の条件に還元しようとするH.テーヌの《芸術哲学》(1865)のような体系化の試みが進められる一方,19世紀後半,個々の作品をとくにその細部表現の特徴によって作者決定をしようとしたG.モレリをはじめ,B.ベレンソン,M.J.フリートレンダーなどの優れた鑑識家たちによる作品の〈戸籍調べ〉の進歩により,独立した学問としての美術史の基礎が築かれた。また,図版(版画)を組織的に利用することは,セルー・ダジャンクールの《モニュメントによる美術史》(1811‐29)で最初に試みられたが,世紀末には,すでに写真図版が重要な役割を果たすようになっていた。…
※「ゼンパー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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