日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソディ」の意味・わかりやすい解説
ソディ
そでぃ
Frederick Soddy
(1877―1956)
イギリスの化学者、物理学者。イーストボーンに生まれる。オックスフォード大学に学び、1898年化学の学位を取得。1900年から1902年にカナダ、モントリオールのマックギル大学のラザフォードのもとで、トリウムやウランの放射能を研究、放射性崩壊の一般論を発表(1903)、「放射能の起源は化学的転換によるものではなく、原子よりも小さな構成要素の崩壊による」ことを提唱した。1904年、当時微小量不活性気体分析の権威として定評のあったロンドン大学のラムゼーのもとに赴き、臭化ラジウムからヘリウムの分離に成功し、ラザフォードによるα(アルファ)粒子の本性の検証の基礎を与えた。この業績によって放射化学、物理化学の講師としてグラスゴー大学に招かれ、1904年から1914年、フレックA. Fleck(1889―1968)の協力を得て、短寿命の放射性元素の崩壊過程の研究を行った。1913年、放射性変換の化学を支配する原理である放射性核種の変位則を発見、同位元素(アイソトープ)の概念を初めて世に示した。1914年アバディーン大学化学教授、1919~1937年オックスフォード大学教授。1921年同位元素の研究によりノーベル化学賞を受けた。『放射能』Radioactivity(1904)、『ラジウムの説明』The Interpretation of Radium(1909)、『原子の説明』The Interpretation of the Atom(1932)、『科学と生命』Science and Life(1920)など多くの名著を残した。経済学に関する業績もある。
[大友詔雄]
『物理学史研究刊行会編『放射能』(1970・東海大学出版会)』▽『B・スコーランド著、広重徹・常石敬一訳『原子の歴史――ドルトンから量子力学まで』(1971・みすず書房)』▽『T・J・トレン著、島原健三訳『自壊する原子 ラザフォードとソディの共同研究史』(1982・三共出版)』