歌唱練習の一種で,旋律を歌詞なしで,音名や階名で歌うこと,またそのための練習曲。広義には読譜と表現に関する音楽の基礎教育全般を指す。
高さの違う種々の音を区別して単純なシラブルで呼ぶことをソルミゼーションsolmizationといい,音階の各音を表せば音名や階名の機能をもつ。旋律の記憶や教習の手段として,古来,種々のくふうがなされている。日本の唱歌(しようが)や口三味線もソルミゼーションに近いものである。ヨーロッパの近代的ソルミゼーションの基礎は11世紀のグィード・ダレッツォによって作られた。彼は歌唱指導のため〈聖ヨハネ賛歌〉から抽出した(これには異説もある)ウト,レ,ミ,ファ,ソ,ラのシラブルを音階の各音に当てはめ旋律を歌う方法を創始した。近代的な音階・調性感の確立とともに,〈ウト〉の位置は〈ハ〉に固定し,〈シ〉が加えられた。またフランスを除いて歌いにくい〈ウト〉が〈ド〉に変わった。
ソルミゼーションのシラブルを歌唱練習に用いることは,18世紀にイタリア,フランスで声楽の教育体系として完成し,ソルフェージュと呼ばれ,初歩から高度な水準に至る練習曲が編まれた。19世紀に各地に音楽学校が創設されると,フランスを中心として,ソルフェージュに他の科目を加えた音楽の基礎教育が全音楽学生を対象に整備され,それをソルフェージュと総称するようになった。音楽の基礎教育としての広義のソルフェージュは楽譜の完全な読解力と正確な表現力の習得を目的とする。内容としては楽典(音楽理論,和声分析,調分析),聴音(音の聴取と記譜),ソルフェージュ(楽譜の視唱,各種音部記号,音程,フレージング,ニュアンス等の総合的な学習),種々な方法によるリズム練習等がある。
ソルミゼーションのシラブルの用法には固定ド唱法(音名唱法の一つで,ドをつねにハ音に固定して歌う唱法)と移動ド唱法(階名唱法ともいい長調の場合には主音をドとし,短調の場合は主音をラとして歌う唱法)の2種がある。固定ド唱法はイタリア,フランスで行われている。移動ド唱法は19世紀イギリスで音楽の大衆化をはかる啓蒙主義的な音楽教育法であるトニック・ソルファ法から広まり,ドイツでも採用されている。調性感の体得に効果があるが,複雑な転調を含む音楽には適さない。したがって初歩の教育における歌唱指導には移動ド唱法が効果的であり,専門教育の分野では固定ド唱法や,ドイツ音名によって歌うアー,ベー,ツェー,ディーレンが用いられている。
→音名
執筆者:永冨 正之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
音楽の基礎教育の一つで、旋律や音階などを母音のみ、あるいは階名などのシラブルで歌うこと(母音のみで歌う場合には、とくにボカリーズとよぶこともある)。18世紀にイタリア、フランスで声楽の教育体系として、特定のシラブルを歌唱練習に用いることが完成された。これがソルフェージュとよばれるようになり、多くの練習曲がつくられた。19世紀にはフランスを中心として、この狭義のソルフェージュに他の科目を加えた音楽の基礎教育が音楽学生を対象に整備され、その全体をソルフェージュと総称するようになった。この広義のソルフェージュは、完全な読譜力と正確な表現力の習得を目的としている。内容としては、楽典(音楽理論、和声分析など)、聴音(音高や和音、音価などの識別とその記譜)、ソルフェージュ(楽譜の視唱、音程やフレージングなどの総合的な学習)、さまざまな方法によるリズム練習などがある。
[卜田隆嗣]
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