翻訳|typography
印刷術およびそれによる印刷物のこと。印刷術は活字印刷術の発明により大きく発展したが,タイポグラフィーの歴史もその発明とともに始まったため,本来は活版術の技法と印刷物のことをいった。近代になりオフセット(平版)印刷,シルクスクリーン(孔版)印刷,グラビア(凹版)印刷を含めた印刷技術全般とその印刷物を指すようになり,さらにそのうち文字が主体になっているものの印刷表現を主にいうようになった。文字は鉛活字によるものが長い間主流であったが,最近は写真植字によるものが加わり,手書き文字などを含めて多種の書体が登場して,タイポグラフィーの表情を豊富なものにしてきた。タイポグラフィーの主要素である書体,サイズ,配列,用紙,インキ,印刷方式の選択や全体のレイアウトを決定する作業を行う専門家をタイポグラファーtypographerと呼ぶ。タイポグラファーは,文章内容や伝達目的により諸要素を総合的に構成する演出家である。美しさや読みやすさのほかに,全体として訴求力や雰囲気をかもし出す感覚と,印刷材料や技術の専門知識が必要になる。
タイポグラフィーの分野は今までは大きく分けて本・雑誌の編集とポスター・パッケージなどの広告であった。ところが今日では印刷媒体にとどまらず,動くタイポグラフィーとして映画やテレビ,ビデオの分野が加わり,コンピューターグラフィックスが応用されるようになって,より高度で複雑な表現が可能になりつつある。文字を主体としたデザインの分野は,家庭のなかのインテリアとしてカーテン,壁紙,壁面にまで広がり,街には立体的なタイポグラフィーとしての外装レリーフ,彫刻などがあるほか,最近は文字のほかに記号,絵文字,シンボルを加えた時刻表,案内図,説明図などをその対象としている。近年タイポグラフィーはコンピューターの利用により電算写植(写真植字機)や文字設計技術などの開発が進み,組版単位や書体表現技術が大きく変容しようとしている。今後はコンピューターを駆使した新技法のタイポグラフィーの時代を迎えることになる。
執筆者:桑山 弥三郎
印刷用の文字書体をタイプフェースという。タイプtypeは活字,フェースfaceは顔,面(つら)から転じて書体をいい,タイプフェースというとき印刷用文字書体一式を指す。文字の字体と書体は異なる。字体は文字の骨格で,書体は字体を前提として,デザインされたもので,字体にかぶせられた意匠,衣装であり,したがって創作者が存在する。一字一字を問題とせず,1式,1セットを単位として考えるのであるが,このデザインについて,アルファベット,かたかな,ひらがな,漢字の一定数を創作したタイプフェースのデザイナーと,デザイナーから権利の設定を受けた文字製作販売者の権利が問題となっている。人類の共有財産である文字を扱う点からだれでも自由に使用できるのか(この観点から意匠法制度は登録を受け付けない),書体創作者の保護の観点から著作物として著作権法で保護すべきか(1979年3月9日の東京地方裁判所判決は否定),不正競争防止法で後発メーカーがただ乗りすることを禁止すべきか(1982年4月28日の東京高等裁判所判決は否定)論ぜられている。世界知的所有権機関(WIPO)が提唱し1973年6月ウィーンでタイプフェース保護協定が成立したが,94年末においてフランス,ドイツしか加入せず未発効である。
執筆者:大家 重夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(武正秀治 多摩美術大学教授 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…使用範囲が広がったことも手伝って,新書体は細線から太線までの何種類かをそろえたファミリーfamilyとして開発することが多くなった。この業界の中でも写植業界は新書体開発に積極的であり毎年新書体を発表しているので,日本のタイポグラフィーtypographyも年々変わりつつある。またタイプフェースコンテストによって書体デザイナーの育成にも力を入れている。…
※「タイポグラフィー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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