写真植字(読み)しゃしんしょくじ(英語表記)phototypesetting

翻訳|phototypesetting

日本大百科全書(ニッポニカ)「写真植字」の解説

写真植字
しゃしんしょくじ
phototypesetting

写真技術を利用して、文字をフィルム印画紙などの感光材料上に所定の指示(割付け)どおりに配列し、印刷用の文字版下とする方法。その装置を写真植字機という。これには手動式と自動式とがあり、後者は電算植字とよばれる。手動写真植字機は大型机にのる程度の大きさで、作業者は座ったまま原稿を見て文字を選びレバーを操作する。ガラス文字盤の文字像はレンズを通り、開いたシャッターを通過して印画紙に到達する。順次、文字を選んでレバー操作をすることにより、印画紙上に文字像を投影することができる。この印画紙を暗室内に持ち込んで現像、定着、水洗、乾燥すれば、白地に黒い文字群を得る。これを印字物といい、原稿として写真製版を行い、オフセット印刷用の平版としたり、グラビア版とする。

 文字の印刷は、従来活版が大部分であったが、手間がかかるうえに印刷速度が遅いので、1960年代以降写真植字にかわった。写真植字はオフセット平版、グラビア版との組合せにより、カタログ、ポスターなどの商業印刷物の文字部分はもちろん、パンフレット、雑誌のグラフページ、グラビア雑誌(グラフ)の全面などから、一般書籍、文庫本、新聞にまで用いられるようになった。

 欧米では1910年ごろから各種の写真植字機の考案がなされたが、あまり実用化されなかった。しかし、1950年ごろからアメリカのライノタイプ社などの新型機が相次いで現れ、書籍、雑誌、新聞などの製版に利用されるようになった。

 和文用の写真植字機は1924年(大正13)石井茂吉(もきち)(1887―1963)、森沢信夫(のぶお)(1901―2000)が協力して発明、完成してからしだいに改良が加えられてきた。1970年代以降マイクロコンピュータを内蔵して、たとえば決められた長さの行の中に文字を大きさに従ってどのように配置すればよいかといった計算を行わせたり、ディスプレーを搭載して文字が印字されてゆく状況を表示して、印字しようとする文字の形状まで確認できるようにしたものも製造されている。

 文字盤の文字は一定の大きさであるが、レンズにより拡大または縮小してさまざまの大きさの文字像を生み出すことができる。一般の写真植字機では20~24本ほどのレンズがつき、文字の大きさを「級」または「ポイント」の単位で表す。1級は0.25ミリメートルで、最小の文字は7級、最大の文字は100級である。20級の文字は5ミリメートル正方の大きさ、10字並べば50ミリメートルの長さとなる。

 文字を並べるためには、印画紙の位置をずらす必要があり、歯車を回転させて行う。この歯車の1ピッチを1歯(いっぱ)といい、級と同じ0.25ミリメートルに設定してある。したがって、20級の1文字を印字して20歯分印画紙を移動し、続いて次の文字を印字すれば、字と字との間隔のない、いわゆる「べた組み」ができる。この場合、かりに30歯移動させれば、字と字との間が10歯分あく、2分(ぶ)あき(2分の1字分のあき)組ができる。また特殊レンズを併用することにより、長体(字の左右を縮小した縦長の字体)あるいは平体(字の天地を縮小した横長の字体)、斜体(右肩上がりもしくは左肩上がりに変形させた字体)の文字ができる。

 ワードプロセッサー、パソコンの普及により、1970年ごろには手動の写真植字は文字のサイズ、書体などのシステムを残して消滅し、電算植字に移行した。電算植字機のキーボードで必要な文字を選び、ディスプレー上で校正、版組をし、プリンターでフィルムあるいは印画紙上に出力する。現在ではパソコンおよび、ワープロソフトやページレイアウトソフトを使ったDTP(デスクトップ・パブリッシング)にかわり、手動・電算写植ともにほとんど使われなくなった。

[山本隆太郎・中村 幹]


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百科事典マイペディア「写真植字」の解説

写真植字【しゃしんしょくじ】

文字原稿を写真技術によって印画紙またはフィルムに再現する方法。活字による植字と違いこれから直接印刷はできないから,オフセット印刷グラビア印刷などの写真製版による印刷方式に多く使われる。写真植字機は,光源,文字盤,レンズ,暗箱,送り装置などからできている。文字盤は約5mm四方のネガ文字が集合したものからなり,複数のレンズにより拡大,縮小,変形を行う。そのため字の大きさはふつう7〜62級(1級は1辺1/4mm)まで20種類が可能となり,また平体,長体,斜体など書体の変化も多くなる。活字ほど収納場所をとらないことも利点。現在,コンピューターと写真植字機を組み合わせた電算写植機とその編集システムが主流になり,書籍,雑誌,新聞の編集・製作に利用されている。印刷以外にテレビジョン放送などでも使われる。
→関連項目活字書体罫線(印刷)校正CTS植字製版タイポグラフィー文選

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図書館情報学用語辞典 第5版「写真植字」の解説

写真植字

活字を用いずに写真技術を応用して植字を行う方式.写植ともいう.写真植字機を用いて,ネガの文字盤に光を透過し,1文字ずつ文字・記号などを印画紙・フィルムに焼き付け,印刷用版下を作成する.コンピュータ化された写真植字機を用いた作業は,電算写植という.なお,印刷を行うためには,この文字組みされた印画紙・フィルムで校正・修正を行った後,さらにこの版下から凸版・凹版・平版のいずれかの版(刷版)を製版する必要がある.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

化学辞典 第2版「写真植字」の解説

写真植字
シャシンショクジ
phototypesetting

写植ともいう.活字を用いず,光学的手段により文字画像を印画紙,または写真フィルムに植字し,文字組版を行うことをいう.文字,記号類のネガ原画像を集積配列した文字盤から所定のものを選択し,感光体面上に投影複写する操作を繰り返す.文字画像の拡大,縮小,変形が容易である.作製された文字写真像は印刷の製版用写真原画像として用いられる.コンピューターと写真植字を組み合わせたシステムを電算写植ということもある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「写真植字」の解説

写真植字
しゃしんしょくじ
photocomposition

写植とも略称される。印刷用の版をつくる一方法。活字表の中から原稿の活字を探し出し,これをフィルムに焼き付ける。古くからの鉛活字による方法に比べて,誤植の訂正などのめんどうな欠点はあるが,レンズの操作で,いろいろの字体や大きさの字が簡単に印字できるし,熱処理過程がないなどの利点が大きい。 (→CTS )  

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精選版 日本国語大辞典「写真植字」の解説

しゃしん‐しょくじ【写真植字】

〘名〙 活字を用いないで、写真植字機によって印字し、版下をつくること。写植。〔造本と印刷(1948)〕

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デジタル大辞泉「写真植字」の解説

しゃしん‐しょくじ【写真植字】

活字を使わずに、文字・数字・記号などを植字し、印画紙やフィルムに撮影して文字組版を作ること。写植。

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世界大百科事典内の写真植字の言及

【印刷】より

…シルクスクリーン印刷は,友禅染の発達した技法があったにもかかわらず日本では低調であったが第2次世界大戦後,ぬりどめや写真製版によるステンシルの製法が輸入されて,さかんになった。印刷機凹版孔版凸版平版
[文字の印刷と写真や絵画の印刷]
 印刷を文字の印刷とそれ以外の写真や絵画などの印刷とにわけてみると,文字は同じパターンがくりかえし使用されるので,活字や写真植字のように,あらかじめ製作し貯蔵しておいた印刷用文字を必要に応じ呼び出して使用する。この考えのもっとも古いものは活字である。…

※「写真植字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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