硬骨魚綱スズキ目タカベ科に属する海水魚。茨城県から九州南岸までの太平洋沿岸域、若狭(わかさ)湾から九州北岸までの日本海沿岸域、八丈(はちじょう)島、小笠原(おがさわら)諸島、朝鮮半島、済州(さいしゅう)島(韓国)に分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で、側扁(そくへん)する。体高は低い。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下まで伸びる。吻(ふん)は丸い。背びれ棘(きょく)部と軟条部の間に深い欠刻(切れ込み)がある。背びれ軟条数が26~29本、臀(しり)びれ軟条数は22~23本と多い。尾びれの基部付近は鱗(うろこ)で密に覆われる。尾びれは深く二叉(にさ)する。体は背側面が青緑色で、腹側面が銀白色。やや幅広い黄色縦帯が、目の後方から尾びれ基部まで走る。腹面に細かな数本の暗色縦線がある。背びれ、臀びれおよび尾びれは黄色。最大全長は約25センチメートル。沿岸岩礁地帯の中層水域に群生する。プランクトン食性の魚である。産卵期は8~10月。孵化(ふか)したたくさんの仔魚(しぎょ)が表層域に出現する。おもに定置網、釣りなどで漁獲される。伊豆七島、伊豆半島では春から夏にかけて漁獲量が多い。肉は脂けが強く、焼くとやや臭みがあるが、慣れると好まれる。刺身、煮魚、干物などにもする。1科1属1種の魚で、南日本とその周辺に限られて分布する、日本固有種である。タカベ科をイスズミ科Kyphosidaeの亜科とする研究者もいる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年4月18日]
スズキ目タカベ科の海産魚。本州中部以南に分布しているが,伊豆七島などでは漁獲量も多く,水産上重要な種の一つ。伊豆半島でシャカ,高知県柏島でベント,鹿児島県でホタと呼ぶ。鮮やかな青緑色の体に,眼の後方から尾びれに走る鮮やかな黄色縦帯のある美しい魚である。全長25cmに達する。潮通しのよい,やや深い岩礁域の中層に大群をなして群れている。おもに浮遊性の甲殻類などの動物プランクトンを食べている。産卵期は8~10月で,直径1.1~1.3mmの浮遊性の球形卵を産む。幼魚は翌年の春に岩礁地帯に出て,大群を形成する。釣りによっても漁獲されるが,大群を形成することや潮のたいへん速いところにいるため,伊豆七島ではおもに追込網により大量に漁獲している。身はやや軟らかであるが,白身で,夏には脂肪ものりとくに美味である。塩焼きなどにする。しかし,鮮度が落ちると体色も黒ずみ,また磯くさくなる。
執筆者:望月 賢二
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