日本大百科全書(ニッポニカ) 「タムシバ」の意味・わかりやすい解説
タムシバ
たむしば
[学] Magnolia salicifolia (Sieb. et Zucc.) Maxim.
モクレン科(APG分類:モクレン科)の落葉低木または小高木。ほかの木々が冬枯れしたままのころ、葉の展開に先だって開花し、早春の山を真っ白に埋め尽くし、春の農作業の目安とされる。コブシによく似ているため、タムシバの分布域(関東地方を除く本州、四国および九州)でも、コブシと通称される場合が多い。しかしタムシバは、花弁が純白色で基部は黄緑色のことが多く、萼片(がくへん)は花弁の2分の1ほどの長さで、主幹がまっすぐであるなどの特徴があり、コブシと区別できる。また葉は卵状披針(ひしん)形で長さ7~15センチメートル、先はとがり、裏面が粉白色を帯びるなどの点でも、コブシとは違う。おもに山腹から尾根に自生し、平坦(へいたん)地や沢筋に多いコブシとは生育地を異にする。植物体にクスノキ科(APG分類:クスノキ科)のクロモジに似た強い香りがあることから、ニオイコブシともいう。つぼみは漢方の辛夷(しんい)の代用となる。
[植田邦彦 2018年8月21日]