タラヨウ(読み)たらよう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タラヨウ」の意味・わかりやすい解説

タラヨウ
たらよう / 多羅葉
[学] Ilex latifolia Thunb.

モチノキ科(APG分類:モチノキ科)の常緑高木。高さ20メートルに達し、幹は灰白色。葉は厚く、長楕円(ちょうだえん)形、長さ12~20センチメートル、低い鋸歯(きょし)がある。花は4~5月、葉腋(ようえき)から出た柄の短い集散花序につき、淡黄緑色。果実球形核果で径約8ミリメートル、赤く熟す。静岡県以西の本州から九州、および中国に分布し、山地に生える。先のとがったもので葉の下面に傷をつけると黒変して字が書けるので、経文を書くインドの多羅葉(たらよう)に例えたためこの名がある。材は器具材とし、樹皮からとりもちをとる。葉を茶の代用とすることもある。寺院や庭に普通に栽培される。

[門田裕一 2021年11月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タラヨウ」の意味・わかりやすい解説

タラヨウ(多羅葉)
タラヨウ
Ilex latifolia

モチノキ科の常緑高木で,モンツキシバともいう。西日本の暖地の山地に生えるが,庭木としてもよく栽植される。高さ約 8m,大型の楕円形で鋭い鋸歯をもつ葉が互生する。葉の表面は濃緑色裏面は明るい黄緑色で枝先などでこするとその部位が黒褐色に変色する。春から初夏にかけて,葉腋に集散花序をなして黄緑色の花を多数つける。雄花と両性花があり,雄花は4本のおしべをもち,両性花は短い4本のおしべと1本のめしべをもつ。果実は球形の核果で多数が集ってつき,赤く熟する。葉面を火であぶると黒くなり,また傷つけると黒い傷痕ができるので字が書ける。この性質から,葉に傷をつけて経文を書くバイタラジュの葉にたとえたのが和名で,モンツキシバも同義である。

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百科事典マイペディア 「タラヨウ」の意味・わかりやすい解説

タラヨウ

モチノキ科の常緑高木。東海地方〜九州の暖地にはえ,広く庭にも植栽される。葉は大型で厚く革質,縁には鋸歯(きょし)がある。雌雄異株。5月ごろ,黄緑色4弁の花を葉腋に多数密に開く。果実は球形で,秋には赤熟。多羅葉の名は,傷つけると黒くなる葉を,経文を書いたというヤシ科の貝多羅樹の葉(貝多羅葉)になぞらえたもの。

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世界大百科事典(旧版)内のタラヨウの言及

【モチノキ】より

…春・夏に樹皮をはぎとって水につけて腐らせ,それを臼で搗(つ)いてゴム状の黐をとる。モチノキ属Ilex(英名holly)のほとんどの種にこの成分があるが,モチノキのものを本黐(ほんもち)といい,タラヨウ,イヌツゲの青黐(あおもち)から区別する。和歌山,三重,奈良3県が主産地である。…

※「タラヨウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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