エストニア共和国北部にある同共和国の首都。人口40万(2003)。旧称はレバルReval。フィンランド湾に臨む港で,共和国の政治,経済,文化の中心である。古城のそびえる〈トーンペアToompeaの丘〉を中心に旧市街が北へ延び,それを城壁が取り囲んでいる。現在も20の塔が並び立つ2.3kmの城壁の中に14世紀にできた市庁舎,13世紀に建てられた大聖堂や高い塔を備えたオレビステン教会などが古都の面影を伝えている。旧市街の東側にはビルViru広場から商業地帯が広がり,ホテル,デパート,劇場などが建設されている。市の南側と西側は住宅地区へとつながる。トーンペア城内には18世紀の後期バロック様式の宮殿があり,ここで共和国の最高会議が開催される。タリンには教育,工芸,音楽,芸術の4大学と歴史博物館や市立博物館がある。
1154年デンマーク王バルデマー2世が十字軍を率いてトーンペアのエストニア人のとりでを奪い,ここに築城した。タリンの名は〈デンマーク人の市〉から由来している。1285年ハンザ同盟に加わりロシア貿易により繁栄した。1346年バルデマー4世がタリンと北エストニアをドイツ騎士修道会に売り渡したが,1561年にはスウェーデンの手に移り,1631年スウェーデン王グスタブ2世アドルフはタリンにギムナジウムを開いた。北方戦争中の1710年にはロシア領となり,ピョートル大帝はタリンを軍港に定めた。1918年エストニアの独立とともにエストニア共和国の首都となったが,40年ソ連領に編入された。タリンにはエストニア工業の4割を占める工場群が海岸沿いに集中していて,食品工業,軽工業,機械・金属・化学工業などが盛んである。タリン港は年間1万6000もの船が出入りし,スカンジナビアや西ヨーロッパ諸国とつながっている。フィンランドのヘルシンキとの間に旅客航路をもち,サンクト・ペテルブルグとリガとは鉄道で結ばれている。また旧ソ連の各都市との航空路もひらけている。
執筆者:小泉 保
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エストニア共和国の首都。フィンランド湾に面し、湾を挟んでヘルシンキと対峙(たいじ)する位置にある。人口40万3981(2000)。ドイツ語名レーバルReval。エストニア共和国の政治、経済、文化の中心地。バルト海の重要港湾の一つで、大規模な港湾施設をもつ。軍事的にも重要で、造船所をはじめ海軍軍事施設がある。電気機械、紙、パルプ、家具、繊維、皮革、ピアノを生産する工業都市でもある。古い歴史のある都市で、デンマーク王バルデマー2世が1219年に要塞(ようさい)を建設した。ヨーロッパとロシアの海上貿易の中継地として地理的に優れた位置にあるため、13~14世紀にはバルト海沿岸の大都市に発展した。13世紀末にはハンザ同盟に加盟し、貿易港として発展したが、1346年にチュートン騎士団の手に落ち、のちにスウェーデン、ロシアと支配者が変わった。1918年には独立したエストニア国の首都となり、レーベリRevel'とよばれた(1940まで)。40年ソ連邦に編入。第二次世界大戦中ドイツ軍に占領され、重大な戦禍を受けた。エストニアは、91年にはふたたびソ連からの独立を達成した。市域は次の三つの地区からなり、歴史的建造物が多い。13~14世紀の城塞のある丘陵地区、14~16世紀に建造された城壁に囲まれた旧市街、その外側に広がる新市街の3地区である。科学アカデミー、各種研究所、大学、劇場、博物館など文化施設も多い。1997年に旧市街は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[山本 茂]
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…正式名称=エストニア共和国Eesti Vabariik∥Republic of Estonia面積=4万5100km2人口(1996)=147万人首都=タリンTallinn(日本との時差=-7時間)主要言語=エストニア語(公用語),ロシア語通貨=クローンKroonバルト海北東岸にある共和国。旧ソ連邦のもとでのエストニア・ソビエト社会主義共和国Eesti Nõukogude Sotsialistik Vabariik(ロシア語ではEstonskaya SSR)が,1991年独立したもの。…
※「タリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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