タンパク尿(読み)たんぱくにょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンパク尿」の意味・わかりやすい解説

タンパク尿
たんぱくにょう

尿中に血漿(けっしょう)タンパク質が、ある一定量以上排出される状態をいう。腎臓(じんぞう)の糸球体では分子量が1万以下の物質は比較的容易に通過するが、分子量が数万以上の血漿タンパク質などはきわめて微量しか通さない(健康人で1日平均40~80ミリグラム)。したがって、鋭敏な化学反応や試験紙でも陽性を示さない。しかし、激しい運動後や精神的ストレスがあったり、立位など一定の姿勢をとったり、発熱時などには陽性反応を示すことがある。これは腎臓内の血行変化によって尿中のタンパク質量が増加するもので、生理的タンパク尿とよばれる。

 一方、腎炎ネフローゼなど多くの腎臓疾患によって糸球体の透過性が亢進(こうしん)し、タンパク尿がみられるため、尿検査の対象となる。分子量の大きいグロブリン量が多いほど、糸球体の障害が強いことを示す。また、血漿タンパク質の関与する血漿の示す浸透圧膠質(こうしつ)浸透圧とよばれ、血液と組織液間の液体量のバランスを保つ働きをもつが、その主体アルブミンで、血漿タンパク質の尿中への喪失によってその濃度が低下すると、膠質浸透圧が低下して血管内に水分を保持することができず、血管外に移行して浮腫(ふしゅ)(むくみ)の成因となる。

[加藤暎一]

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改訂新版 世界大百科事典 「タンパク尿」の意味・わかりやすい解説

タンパク(蛋白)尿 (たんぱくにょう)
proteinuria

尿中にタンパク質がある一定量以上排出される状態をいい,排出されたタンパク質を尿タンパクという。ふつう,腎臓の糸球体では分子量1万以下の物質は比較的容易に通過するが,血漿タンパク質などのように分子量数万以上の物質はきわめて微量にしか通さない。したがって,健康人の尿中にはこのような糸球体を通過したごく微量のタンパク質と,尿細管や尿路に由来するタンパク質が微量に存在している(1日平均40~80mg)。ところが激しい運動後や精神的ストレスのあるとき,立位や臥位など一定の姿勢をとったとき,また発熱時には,尿中のタンパク質量が増加することがある。これは腎臓内の血行が変化するために起こると考えられており,生理的タンパク尿と総称される。一方,腎臓の疾患によって,糸球体での透過性が亢進してもタンパク尿が起こる。腎炎やネフローゼなど多くの腎臓疾患でみられる。尿タンパク質はアルブミンやグロブリンが主であることが多く,これら血漿タンパク質の尿中への喪失で水腫を起こすことが多い。
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栄養・生化学辞典 「タンパク尿」の解説

タンパク尿

 タンパク尿症ともいう.尿へタンパク質が出現する症状.糸球体腎炎の場合などにみられる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタンパク尿の言及

【ネフローゼ】より

…かつては尿細管の病変によってタンパク尿と浮腫を伴う腎臓の疾患を指したが,近年では,糸球体の病変によって生じ,高度のタンパク尿と低タンパク血症を伴う症候群を指し,医学的にはネフローゼ症候群nephrotic syndromeと呼ばれる。1905年,F.vonミュラーが腎臓疾患を炎症性疾患と尿細管の変性疾患に大別し,後者をネフローゼと呼んだ。…

※「タンパク尿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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