チェルノーゼム(その他表記)chernozem

翻訳|chernozem

デジタル大辞泉 「チェルノーゼム」の意味・読み・例文・類語

チェルノーゼム(chernozem)

温帯の半乾燥気候下の草原地帯に発達する肥えた土壌黒色の厚い腐植層、その下に炭酸カルシウム集積層が重なる。ウクライナから西シベリア南部にかけて広く分布するほか北アメリカにも分布。黒土黒色土

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改訂新版 世界大百科事典 「チェルノーゼム」の意味・わかりやすい解説

チェルノーゼム
chernozem

温帯の大陸性半乾燥気候下の多年生イネ科高茎草本を主とする自然草原(ステップ)に発達する土壌。ロシア語で〈黒い土〉を意味する言葉に由来し黒土(こくど)と訳されることもあるが,単なる黒色の土壌ではなく,日本で一般に黒土(くろつち)と呼ばれるものとはまったく異なる。ステップでは春先の融雪水と初夏降雨によって草本類が急速に生長し,多量の有機物が土壌に供給される。しかし夏季の乾燥と冬季の凍結によって微生物の活動が中断されるため,有機物の無機化が妨げられる結果,土壌中に多量の腐植が集積する。さらにステップマーモット,ジネズミ,ミミズなどの土壌動物の盛んな活動によって腐植と母材がよく混合されるので,団粒構造がよく発達した厚い(50cm以上)均質な灰黒色のA層(表層土)が形成される。降雨が少ないため塩基の溶脱作用は微弱で,土壌は塩基で飽和され中性反応を保っている。塩基の中でもとくにカルシウムが多く,腐植はカルシウムと結合して安定化し,腐植化度が進んで黒色を呈する。A層直下の母材の層(C層)には炭酸カルシウムが菌糸状または丸みを帯びた白色の結塊として析出している。またC層上部にはクロトビナといわれる腐植で充てんされた動物の通路巣穴が多数存在するのが特徴である。ユーラシア大陸ではハンガリールーマニアの一部,ウクライナ,西部ないし中央シベリアに広く分布し,北アメリカ大陸では西経95°以西のアーカンソー川以北の平原に分布している。チェルノーゼムはきわめて養分に富んだ肥沃な土壌で,大干ばつの年を除けば生産力も高く,いわゆる黒土地帯と呼ばれる穀倉地帯を形成している。
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百科事典マイペディア 「チェルノーゼム」の意味・わかりやすい解説

チェルノーゼム

冷温帯ステップに発達する土壌型。黒土を意味するロシアの俗語が語源。きわめて肥沃でヨーロッパの穀倉地帯を形成(黒土地帯)。団粒構造の発達した黒色の厚い腐植層,炭酸塩集積層,母材(ふつうレスなどの石灰質堆積物)の順に重なり,炭酸塩集積層中には特徴的な形の炭酸カルシウム沈殿がみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のチェルノーゼムの言及

【ウクライナ】より

…キエフ以北の地方で,ウクライナ全体の19%を占める。(2)森林ステップ地方 肥えた黒土(きわめて肥沃な黒色土壌チェルノーゼム。最高16%までの腐植土を含み,180cm程度の層をなしている)地帯で,ドニエプルをはさんでウクライナの中央にひろがる地方。…

【草原】より

…夏の乾燥と冬の低温のためこの大量の植物遺体はゆっくり分解される。したがってステップの土壌はチェルノーゼム(黒土)と呼ばれるように腐植に富み,草本の根の密な発達で保水性や通気性もよく豊かである。黒土地帯にはコムギ,オオムギ,トウモロコシなどの作物が栽培され,世界有数の穀倉地帯となっている。…

【土壌型】より

…レシベ土は土壌中に浸透する雨水によって表層の細かい粘土が機械的に下方に移動して集積するため(このような作用はレシベ化作用といわれる),粘土の洗脱された明色のA3層と粘土が集積した濃褐色のBt層(アルジリック層)の分化が肉眼でも認められる。 冷温帯でも雨量の少ない大陸性乾燥気候下の多年生イネ科草本を主とする草原(ステップ)の代表的土壌型はチェルノーゼムである。ロシア平原からウクライナにかけて広く分布するこの土壌は,厚い黒色のA層が1m近くもあるきわめて養分に富んだ肥沃な土壌である。…

※「チェルノーゼム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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