ティーム・ティーチング(読み)てぃーむてぃーちんぐ(英語表記)team teaching

翻訳|team teaching

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティーム・ティーチング」の意味・わかりやすい解説

ティーム・ティーチング
てぃーむてぃーちんぐ
team teaching

複数の教師が協力して行う授業方式の一つ。略称TT。1950年代の後半、アメリカ合衆国の小・中学校において、教育内容の高度化と教育方法の多様化に伴い、リーダーの教師を中心として、何人かの教師たちが協力組織をつくり、それぞれの能力を生かし、必要に応じ学級を解体して協力しあい、授業にあたるという方式が盛んに試みられるようになった。このような教師の協力組織による授業方式がティーム・ティーチングである。

[宇留田敬一・下村哲夫・窪田眞二]

特色

このような授業方式によって、(1)有能で経験豊かな教師の力量を十分に活用するとともに、新任で未熟な教師の弱点をカバーする、(2)児童の個人差に応じる指導をいっそう充実させる、(3)多様な教育機器の活用等により授業の効率を高める、などして、授業の改善を図ろうとした。したがって授業は、学級を単位とする形態にとらわれることなく、同学年の全学級またはいくつかの学級を合併して行われたり、そのなか一斉指導と個別指導を織り混ぜたり、各種の教育機器を活用したりして、多様な授業形態が目的に応じて実施されている。このため、オープンスペースを設けたり、教室の壁を可動式にするなど、学級の壁を取り払って、合同授業を行うことができるような新しい学校建築もくふうされている。

 従来の授業改善の発想が児童のグループ編成の方法を変えるなど、被教育者の側の条件改善に向けられていたのに対し、この協力教授組織の発想は、教師の能力や協力組織などを念頭に置いて、教育者の側に向けられていること、また従来の施設設備に対する固定観念を思いきって打破するという物的条件の側にも向けられている点が重要である。

 日本には1970年代の初めに、授業改善の方法としてティーム・ティーチングが紹介され、部分的にその方式が試みられてきたが、その全面的な導入にはさまざまな隘路(あいろ)(とくに教員数や施設)があるため、十分な展開をみるに至らなかった。しかし、1993年(平成5)からの小・中学校の第六次教職員配置改善計画で、増員分のほぼ半数にあたる約1万4000人をいわゆるティーム・ティーチング要員にあてて、実施希望校に配置したことにより、実践校は全国的に拡大した。とくに小学校では、1学級に2人の教師を配置する例が多かったため、これを複数担任制という。1993年以降のティーム・ティーチングは教職員の定数確保のために行われたという側面をもっていた。しかし、2004年度より義務教育費国庫負担制度のなかで導入された総額裁量制により、各都道府県での教員定数の弾力化が図られたため、学力向上のための方策としてティーム・ティーチングによる授業の展開がしやすくなった。学習障害LD)などをもつ児童生徒への対応や自然体験活動における安全確保、英語学習などにおける他校種の教員の協力による授業などを目的に小・中学校にとどまらず、さまざまな学校種で活用されるようになっている。

[宇留田敬一・下村哲夫・窪田眞二]

『M・ベア、R・G・ウッドワード著、吉本二郎・下村哲夫訳『ティーム・ティーチング――その理論と方法』(1966・明治図書出版)』『日俣周二著『ティーム・ティーチングの理論と方法』(1966・明治図書出版)』『釼持勉著、盛岡市立仙北小学校編『ティーム・ティーチングの新しい経営』(1997・明治図書出版)』『新井郁男・天笠茂編『ティーム・ティーチング事典――学習の総合化をめざす』(1999・教育出版)』『巽俊二著『英語授業ライブラリー(6) ティーム・ティーチングの進め方――授業改善の視点に立って』(2001・教育出版)』

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