テラコッタ(その他表記)terracotta

デジタル大辞泉 「テラコッタ」の意味・読み・例文・類語

テラ‐コッタ(〈イタリア〉terracotta)

《焼いた土の意》
粘土素焼きにして作った器物塑像そぞうなどの総称先史時代から各地で見られ、古代ギリシャのタナグラ人形ルネサンス期にドイツイタリアで作られた胸像などが有名。日本埴輪はにわもこの一種。
建築材料で、装飾に用いる素焼きの陶器。

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精選版 日本国語大辞典 「テラコッタ」の意味・読み・例文・類語

テラコッタ

  1. 〘 名詞 〙 ( [イタリア語] terracotta 元来は焼いた土の意 )
  2. 高温で粘土を焼成して作った塑像、器などの総称。釉(うわぐすり)をかけないものは黄または赤褐色。先史時代から行なわれたが、古代ギリシア末期のタナグラ人形やイタリア‐ルネサンス期の胸像彫刻、中国古代の陶俑や日本の古墳時代の埴輪などが有名。〔外来語辞典(1914)〕
  3. 建築物の外装に用いる装飾用の素焼きの陶器。

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改訂新版 世界大百科事典 「テラコッタ」の意味・わかりやすい解説

テラコッタ
terracotta

イタリア語で〈焼いた土〉〈素焼〉の意。一般には粘土を成形して焼いた無釉の彫像,もしくは建築用,装飾用に制作されたものをいう。テラコッタの素材である粘土は比較的容易に入手でき,また可塑性に富んでいるところから新石器時代以後メソポタミア,小アジア,エジプト,ギリシア,中国,日本,メキシコなど世界の各地で制作されている。なかでもメソポタミア地方では前3700年ころ,グロテスクな頭部をもつ裸体の男女像がつくられ,エジプトではすでに先王朝時代(前3000年以前)に素朴な小像が多数制作されている。また古代ギリシアではクレタ・ミュケナイ時代に,著しく単純化された加彩の女神像が出土している。これら古代のテラコッタの小像はその多くが一種の宗教的,呪術的目的で制作されたものと推察される。一方,これらと異なりボイオティア地方東部のタナグラの墓地から出土した前5世紀ころから前3世紀ころにかけての加彩の小像,および小アジアのミュリナ,スミュルナ,ペルガモンなどで制作されたヘレニズム時代の小像は,神々,騎士,楽人,農夫,職人,婦人,子どもなどさまざまな人物を表している。とくにタナグラ出土の一連の優美な婦人像は,それまでの小像と違って日常的なくつろいだポーズや甘い感傷的な顔だちなど生気に満ち,用途は必ずしも明らかではないが,全体に高い芸術性を示すものである(タナグラ人形)。これに対し,小アジアのミュリナではアフロディテビーナス),マイナス,飛翔するニケなど動きのある像が好んで制作されている。これらタナグラやミュリナの小像はいずれも前面と背面の二つの型を用いて成形され,顔部や手足はさらに別の型が用いられている。さらにイタリア半島でもローマ人に先立って古代文明を樹立したエトルリア人は,前6世紀に,ギリシアの青銅像や大理石像に代わって等身大の人物像をテラコッタで制作,陶芸における彼らの卓抜した技量を示した。

 一方,東洋では日本の縄文時代の土偶や古墳時代の埴輪,さらに中国の戦国時代から唐代にかけて制作された土製の(よう)もテラコッタである。日本の土偶や埴輪は〈手づくね〉であったが,とくに埴輪は粘土を輪状に積み重ねて形成する〈輪積法〉もしくは粘土を紐状にして積み上げる〈紐作り法〉であるのに対し,中国の俑はタナグラの小像と同様に型による成形で,唐代の加彩人物像,騎馬像などはテラコッタの最もすぐれた作例とされる。これら埴輪や俑はいずれも副葬品として墳墓を飾ったものであるが,兵士や婦人の衣装,騎馬像,家屋の様式など,これらは考古学上,また美術史上貴重な遺品である。このほかメキシコのトラティルコ文化の形成期(前1450-前600)に制作された裸体もしくは腰布をつけた婦人像がある。これらの多くはメキシコ市周辺の往時の村落の遺跡から出土したもので,極端にデフォルメされた像や比較的写実的な像などさまざまであるが,臀部が誇張されているところからおそらく豊穣や安産を祈願した地母神像と考えられる。

 中世以降テラコッタはほとんど見るべきものもなかったが,ルネサンス期に再び浮彫や胸像の制作に用いられ,フィレンツェのルカ・デラ・ロッビアが釉薬で彩色したテラコッタのレリーフを制作するに及んで,以後テラコッタは建築装飾に新たな方向性を見いだした。また近代彫刻においてもマイヨールやJ.エプスタインをはじめ多くの彫刻家が大小のテラコッタの作品を手がけている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テラコッタ」の意味・わかりやすい解説

テラコッタ
てらこった
terracotta イタリア語

原語では焼いた土、赤土焼、素焼の意。泥塑に次ぐ原始的な塑造で、石器時代から並行してつくられたと考えられる。砂質の多い鉄分を含む粗粘土で造形したものを乾燥させ、800~1000℃の低温で焼成する。古代から壺(つぼ)や瓦(かわら)、れんがなどに用いられ、メソポタミアやエジプトなどの遺跡から発見されている。日本の埴輪(はにわ)や、中国の俑(よう)などもテラコッタの一種である。とくに、ギリシアの古代都市タナグラの墓地から多く発見された小像はタナグラ人形とよばれて有名である。およそ紀元前8世紀ごろの製作で、着衣の婦人像が多く、着色もされており、当時の風俗を写実的に伝えている。またエトルリア美術における「夫妻像棺」や、神殿の屋根を飾っていた『ベイオのアポロン像』も優れたテラコッタの作品である。14世紀以後のドイツ、15世紀のイタリアでも盛んにつくられ、ドナテッロやルカ・デッラ・ロッビアの佳品が残されている。現代においてもデスピオの『クラクラ』、藤川勇造の『シュザンヌ』などはテラコッタであり、木内克(きのうちよし)も手捻(てひね)りの小品を多く残している。

[三田村畯右]


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百科事典マイペディア 「テラコッタ」の意味・わかりやすい解説

テラコッタ

元来はイタリア語で〈焼いた土〉の意。良質の粘土による素焼の容器や小彫塑などをいう。釉(うわぐすり)はかけず,赤褐色の肌(はだ)をしているのが普通。焼く前には加工しやすいが,焼成後は硬く,風雨にも耐えるので,古くは建築装飾にも用いられた。日本の土偶埴輪や,中国の俑も製法的にはテラコッタにあたる。
→関連項目エトルリア美術木内克タナグラ人形

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色名がわかる辞典 「テラコッタ」の解説

テラコッタ【terracotta】

色名の一つ。JISの色彩規格では「くすんだみの」としている。テラコッタはイタリア語で焼いた土の意味。一般に、赤土で焼いた素焼きの焼き物のようなみの薄茶色のこと。煉瓦れんがより薄く淡いイメージ。日本の埴輪はにわも広い意味ではテラコッタに含まれる。建築物の装飾に用いられることもあった。現代ではタイルとして製作されることがある。またプランターなどの色名として使われている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テラコッタ」の意味・わかりやすい解説

テラコッタ
terra-cotta

彫刻用語。イタリア語で「素焼」の意 (→彩色テラコッタ ) 。メソポタミア,古代ギリシア,エトルリアにおいてみられ,15世紀に復興し,現在も手がけられている。古代ギリシアのタナグラ人形や中国の俑 (よう) や,日本の土偶,埴輪は代表的な例である。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「テラコッタ」の解説

テラコッタ【terracotta〈イタリア〉】

良質の粘土を素焼きにして作った器物の総称。古代ギリシアのタナグラ人形、イタリア・ルネッサンス期の胸像などの塑像や陶器類のほか、煉瓦(れんが)やタイル状のものを建築材料として外壁や床などに使用する。◇「焼いた土」の意。

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リフォーム用語集 「テラコッタ」の解説

テラコッタ

素焼きの焼き物のもの。イタリア語の「焼いた土」に由来する言葉。焼成温度によって出来上がりの色彩が変化する。800度程度で焼成されたものがよく見られる。

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世界大百科事典(旧版)内のテラコッタの言及

【塑造】より

…いずれの場合も,指,掌,手の触覚によって造形されるが,へら類も補助用具として用いられる。塑造の歴史は旧石器時代までさかのぼり,土器文明期には,日干しあるいは素焼きの手法によって偶像,動物像が多く製作された(テラコッタ)。泥塑像は,インド,中国,日本でも用いられた手法で,火による乾燥過程なしに空気乾燥で最終作品となっている。…

※「テラコッタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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