テーラー(Richard E. Taylor)(読み)てーらー(英語表記)Richard E. Taylor

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

テーラー(Richard E. Taylor)
てーらー
Richard E. Taylor
(1929―2018)

カナダの実験物理学者。メディシン・ハット生まれ。高校までは数学好きの目だたない青年であった。エドモントンのアルバータ大学で数学や物理学を学ぶうちに実験物理に開眼した。1950年に大学を卒業。アルバータ大学大学院では、素粒子軌跡を調べるウィルソン霧箱を使い、原子核が壊れるときに二つの電子を同時に出す「二重β(ベータ)崩壊」を研究した。1952年に修士。結婚の後、アメリカのスタンフォード大学で研究を続行。実験を開始したばかりの線形加速器をもつ高エネルギー物理学センターでの研究活動に参加した。1958年に渡仏。1961年にアメリカに戻ってカリフォルニア大学のローレンスバークリー研究所のスタッフ。1962年にスタンフォード大学で博士。1962~1968年スタンフォード線形加速器研究所(SLAC:Stanford Linear Accelerator Center)のスタッフ。1968年にスタンフォード大学に移り、1970年から教授となる。

 1960年代なかばから10年ほどは、カリフォルニア工科大学(CIT)やマサチューセッツ工科大学MIT)の研究者たちと共同で、電子散乱についてのさまざまな実験装置の開発や測定を進め、この時期の研究がノーベル賞の受賞につながった。その後も、ヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))やドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY(デージー):Deutsches Elektronen-Synchrotron)などの国際研究機関で研究を進めた。1990年に、J・フリードマン、H・ケンドルとノーベル物理学賞を共同受賞。陽子や中性子が「クォーク」とよばれるより小さな粒子で構成されていることを実験で確認した業績による。

[馬場錬成 2018年3月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例