シュルレアリスムの画家が好んで用いた技法のひとつ。つやのある紙に流動性のある絵具を塗って,もう1枚の紙をあてて押しつけ,紙をはがすと偶然の生むさまざまなイメージの形が得られる。ドミンゲスOscar Dominguez(1906-57)が1935年ころに初めて試みた手法で,〈対象不在のデカルコマニー〉と名付けられた。岩や花,水,雪,溶岩などを思わせるイメージがあらわれ,その後,多くのシュルレアリストたちによって使われ,機関誌《ミノトール》8号にその集大成が発表された。人格検査法のロールシャハ・テストでは,紙を二つ折りにして開き,対称的なイメージを作る点で少しちがうが,意識下の連想を刺激する面では似通っている。デカルコマニーを油絵の中に積極的にとり入れたのはM.エルンストで,第2次大戦中にアメリカで制作された密林のようなイメージの大作が有名である。フロッタージュなどとともに,この手法もシュルレアリスムが物質や偶然という外的世界と内部世界を重ね合わせようという志向を反映している。また,デカルコマニーは陶磁器へ図柄を転写する方法および転写紙,あるいはその移し絵をも示すことばとして用いられる。
執筆者:東野 芳明
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転写法と訳される。一般名詞としては、薬品処理を行った紙の上に描かれた絵を器の表面に押し当ててそっくり転写する、陶器やガラスの絵付(えつけ)に用いられる方法をいう。シュルレアリスムにおいては、「コラージュ」や「フロッタージュ」と並んで用いられた美術の一手法。ガラス板やアート紙など滑性の紙の上に絵の具を塗り、上から別紙を押さえて像を写し取ったり、あるいは絵の具を塗った紙を二つ折りにして開くことによっていろいろな形を得る方法をさす。これらは、まえもって計算されたり意識されたことのない、まったくの偶然によってできあがる無意識像であり、その抽象形体はさまざまな連想を呼び起こすため、シュルレアリストにとってかっこうの表現手段となった。1935年オスカー・ドミンゲスによって発見されたといわれるが、多くの人が手がけ、とくにエルンストに優れた作品がある。なお心理学ではロールシャッハ・テストに使われている。
[千葉成夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…とくに現代では版画というよりも造形的表現手段の一つとなっている。 1点制作という点で,モノタイプを広義にとらえれば,H.セーヘルスの,1点ずつ版や色を変えた色刷版画や,シュルレアリストの用いたフロッタージュ,デカルコマニー,あるいは版画に網,布片,紐などを置いて,それを台材に写し取らせる方法(例えば恩地孝四郎の作品)や墨流しもモノタイプといえる。【坂本 満】。…
※「デカルコマニー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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