(α1→6)グルカンともいう.乳酸菌Leuconostoc mesenteroidesやL. dextranicumなどによって,スクロースから生成する(α1→6)結合を主体とする粘質性のグルカン.分子構造は生産菌株によって異なり不均性が高いが,65% 以上の(α1→6)結合をもつものをいう.平均分子量は少なくとも4×106.+180~+210°(水).α-D-1,4-,α-D-1,3-,α-D-1,2-結合を分岐鎖にもつが,α-D-1,3-結合が多い.デキストランを希酸で部分分解し,平均分子量7.5万~10万としたものは代用血漿として輸血に用いられるほか,ビールの醸造の際に,麦芽に添加して泡持ちをよくしたり,アイスクリーム,そのほかの食品の粘性保持のために用いられる.また,分子量2000~4000のデキストランを部分的に硫酸エステル化して分子量6500程度にしたものは,デキストラン硫酸(dextran sulfate)とよばれ,血液凝固阻止作用,抗食餌性脂血症の清澄作用を示し,経口的動脈硬化治療剤として使われている.そのほか,種々の分子量のものをエピクロロヒドリンで架橋して不溶化したものが,セファデックスの名称で生化学的ゲル濾過剤(アフィニティークロマトグラフィーの担体)として用いられる.LD50 10700 mg/kg(ラット,皮下).[CAS 9004-54-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
微生物が生産する多糖類の一種。D-グルコースのみからなり,その結合様式はα-(1→6)結合が主体でα-(1→4)またはα-(1→3)結合の枝分れ構造をもつものもある。乳酸菌の1種であるロイコノストク・メセンテロイデスLeuconostoc mesenteroidesなどの細菌がショ糖を含む培地で繁殖したときに,デキストランスクラーゼによるグルコース転移反応によって生成する。細菌により作られたデキストランは代用血漿(けつしよう)として医療に用いられる。また虫歯の原因となる歯垢(しこう)は口腔内に生棲(せいせい)する乳酸菌の1種ストレプトコッカス・ムタンスStreptococcus mutansがショ糖から作る不溶性デキストランが主体である。
執筆者:別府 輝彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
D-グルコースの重合体で、多糖類の一種。ある種の細菌をショ糖だけを含む培養液で育てると、デキストランが合成される。分子量は、天然の状態では400万にもなる。構造はデンプンやグリコーゲンとよく似ており、D-グルコースがα-1・6結合で直鎖状につながり、ところどころにα-1・4結合で枝分れしている。これは、デンプンやグリコーゲンがα-1・4結合をしていて、枝分れの点がα-1・6結合であることと対照的である。ほかにα-1・2結合やα-1・3結合の存在も知られているが、これらの量や種類はデキストランの起源によって異なる。
デキストランはシロップ剤などの原料にされるほか、酸で部分的に加水分解したものは血漿(けっしょう)増量剤として知られる。日本薬局方には分子量7万5000の高分子デキストラン(デキストラン70)と分子量4万の低分子デキストラン(デキストラン40)の2種類が収載されている。
[村松 喬・幸保文治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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