デキストラン

デジタル大辞泉 「デキストラン」の意味・読み・例文・類語

デキストラン(dextran)

ぶどう糖で構成される多糖体。血漿けっしょうの代用剤にする。

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精選版 日本国語大辞典 「デキストラン」の意味・読み・例文・類語

デキストラン

〘名〙 (Dextran dextran) 蔗糖(しょとう)を、ある種の細菌を用いて分解させ、ブドウ糖重合体にしたもの。大量出血、ショックなどの時に血液代用の補液に用いる。血漿代用液の一種。〔人間改造の医学(1965)〕

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化学辞典 第2版 「デキストラン」の解説

デキストラン
デキストラン
dextran

(α1→6)グルカンともいう.乳酸菌Leuconostoc mesenteroidesやL. dextranicumなどによって,スクロースから生成する(α1→6)結合主体とする粘質性のグルカン.分子構造は生産菌株によって異なり不均性が高いが,65% 以上の(α1→6)結合をもつものをいう.平均分子量は少なくとも4×106+180~+210°(水).α-D-1,4-,α-D-1,3-,α-D-1,2-結合を分岐鎖にもつが,α-D-1,3-結合が多い.デキストランを希酸で部分分解し,平均分子量7.5万~10万としたものは代用血漿として輸血に用いられるほか,ビールの醸造の際に,麦芽に添加して泡持ちをよくしたり,アイスクリーム,そのほかの食品の粘性保持のために用いられる.また,分子量2000~4000のデキストランを部分的に硫酸エステル化して分子量6500程度にしたものは,デキストラン硫酸(dextran sulfate)とよばれ,血液凝固阻止作用,抗食餌性脂血症の清澄作用を示し,経口的動脈硬化治療剤として使われている.そのほか,種々の分子量のものをエピクロロヒドリンで架橋して不溶化したものが,セファデックス名称で生化学的ゲル濾過剤(アフィニティークロマトグラフィー担体)として用いられる.LD50 10700 mg/kg(ラット皮下).[CAS 9004-54-0]

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改訂新版 世界大百科事典 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン
dextran

微生物が生産する多糖類の一種。D-グルコースのみからなり,その結合様式はα-(1→6)結合が主体でα-(1→4)またはα-(1→3)結合の枝分れ構造をもつものもある。乳酸菌の1種であるロイコノストク・メセンテロイデスLeuconostoc mesenteroidesなどの細菌がショ糖を含む培地で繁殖したときに,デキストランスクラーゼによるグルコース転移反応によって生成する。細菌により作られたデキストランは代用血漿(けつしよう)として医療に用いられる。また虫歯の原因となる歯垢(しこう)は口腔内に生棲(せいせい)する乳酸菌の1種ストレプトコッカス・ムタンスStreptococcus mutansがショ糖から作る不溶性デキストランが主体である。

 
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン
できすとらん
dextran

D-グルコースの重合体で、多糖類の一種。ある種の細菌をショ糖だけを含む培養液で育てると、デキストランが合成される。分子量は、天然の状態では400万にもなる。構造はデンプンやグリコーゲンとよく似ており、D-グルコースがα-1・6結合で直鎖状につながり、ところどころにα-1・4結合で枝分れしている。これは、デンプンやグリコーゲンがα-1・4結合をしていて、枝分れの点がα-1・6結合であることと対照的である。ほかにα-1・2結合やα-1・3結合の存在も知られているが、これらの量や種類はデキストランの起源によって異なる。

 デキストランはシロップ剤などの原料にされるほか、酸で部分的に加水分解したものは血漿(けっしょう)増量剤として知られる。日本薬局方には分子量7万5000の高分子デキストラン(デキストラン70)と分子量4万の低分子デキストラン(デキストラン40)の2種類が収載されている。

[村松 喬・幸保文治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン
dextran

D-グルコースの重合多糖類。ショ糖液で細菌 Leuconostoc mesenteroidesL. dextranicumを培養すると,培養液中に蓄積される。これらの細菌がもつ酵素がショ糖を分解し,果糖 (D-フルクトース) を養分とし,残基のD-グルコースのほうを重合させる。グルコース間の結合は,全体としては分岐構造となっているので,種々の分子量の違った物質をふるい分けるときに用いるセファデックス系ゲルろ過剤の原料となる。また,加水分解して分子量約7万としたもの (デキストラン 70) の6%溶液,または分子量約4万としたもの (デキストラン 40) の 10%溶液は,血漿に近い粘稠度,コロイド浸透圧,比重をもち,薬理学的にはほとんど不活性であり,血中に比較的長くとどまるが,蓄積されずに排泄される。したがって,出血などの場合,血漿代用薬として用いられる。使用に際しては,抗原性のないことを確かめなければならない。

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百科事典マイペディア 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン

ブドウ糖からなる多糖類の一種。ショ糖溶液に乳酸菌の一種であるロイコノストク・メセンテロイデスを作用させるとその酵素デキストランスクラーゼによって生ずる。構造は菌株によって異なるが,D-グルコース(ブドウ糖)から成るα-1,6結合が主体でα-1,4やα-1,3の枝分れをもつものもある。分子量は数万〜数百万。代用血清,食品の粘性保持剤,粘着剤など用途は広い。
→関連項目人工血液

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栄養・生化学辞典 「デキストラン」の解説

デキストラン

 α-1,6-グルカン.α1→3,α1→2の分枝もある.細菌によってショ糖から作られる.

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