死者の顔面の型取り像。死面と訳す。石膏もしくは蠟(近代では寒天などのゼラチンあるいは化学的材料が用いられる場合も多い)によって,死者の顔面を型取りし,その雌型から,石膏,蠟,金属の薄葉などの材料によって像を起こす。生きている人間の顔から起こしたものはライフマスクlife maskと呼ばれるが,両者の起源の区別は明らかではない。また仮面との関連も明確ではない。
エジプトではすでに前3千年紀の中ごろからデスマスクが制作され,またアマルナ時代には肖像制作の技法の一種となっている。エトルリア,ローマでは葬祭用,祖霊信仰の際に用いられた。ルネサンス期以降は,著名な人物の記念としての制作が一般化し,ナポレオン,ゲーテ,ベートーベンなどのデスマスクなどがある。またウードンがルソー像(1779)を制作したときデスマスクを使用したように,肖像制作に利用される場合も多い。
なお,日本では大正期ごろから一般化したといわれている。
執筆者:中山 公男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
死者の顔からじかに型取りしてつくった面型。死面(しめん)。生きている人の顔を型取ったものは、ライフマスクlife maskという。古くは、紀元前6、7世紀のエトルリアで、死者崇拝のために蝋(ろう)で顔面を型取り、肖像彫刻の原型とした。今日では一般に、石膏(せっこう)を用いる。すなわち、死の直後、顔面を清め、頭髪などを整え、クリームやポマードなどの油性のものを離型剤として塗布し、顎(あご)の稜線(りょうせん)に沿って土手を築き、前顔面に筆を用いて石膏を塗り型取る。この雌型に石膏を流し込んで、外型を割る。代表的なデスマスクとしては、ベートーベン、日本人では夏目漱石(そうせき)などが知られる。
なお、身体を型取りしたものをボディーキャスティングbody castingといい、西欧では古来しばしば行われてきた。ロダンの『青銅時代』はそれと疑われて物議を醸したが、現代では、イブ・クラインやシーガルなど、これを手段とする作家もいる。
[三田村畯右]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 理想主義的傾向を基調とするギリシアにおいては,前5世紀に偉人の像を公共の場に置く習慣が始まったものの,肖似性は前4世紀後半,ヘレニズム期にはいってようやく追求されるようになった。これに対し,祖先崇拝にデスマスクを用いる伝統のあったローマ人の肖像彫刻は,ローマ美術の最も独自の分野であり,かつ美術史上最も徹底的に個人の外貌を表現した例に数えられる。帝政期にはいるとギリシアの影響で,ことに支配者像に理想化が施されるが,性格や心理の表現をも含む写実性はローマの肖像の基本的特色である。…
…人体からの直接の型取りは,近代彫刻でも行われることがあったし,現代の前衛彫刻でも見られる。デスマスクもその例である。彫刻の完成品からの型取りは,ギリシア彫刻の賛美されたローマ時代に盛んに行われ(グレコ・ロマン様式),その後ルネサンス期以降ふたたび盛んになる。…
※「デスマスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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