デュティユー

百科事典マイペディア 「デュティユー」の意味・わかりやすい解説

デュティユー

フランス作曲家。アンジェに生まれ,パリ音楽院コンセルバトアール)に学ぶ。1970年に母校の作曲科教授に就任。第2次大戦後の前衛派とも保守的アカデミズムとも一線を画し,精緻な構成原理にもとづく作品でフランス音楽の伝統を担う第一人者となる。《ピアノ・ソナタ》(1948年),R.プティの委嘱によるバレエ音楽《狼》(1953年)などを経て,《交響曲第2番ル・ドゥーブル》(1959年),管弦楽曲メタボール(語句変換法)》(1964年)で〈変奏〉を軸にした独自の作風を確立。その後もロストロポービチの委嘱による《チェロ協奏曲・遠いひとつの国》(1970年),《弦楽四重奏曲・夜はかくのごとく》(1977年),I.スターンの委嘱による《バイオリン協奏曲・夢の木》(1985年),24の弦楽器,ツィンバロムと打楽器のための《瞬間の神秘》(1989年)など堅固なフォルムと官能性を合わせ持つ傑作を発表し,孤高の境地をさらに深めている。→E.C.カーターミュンシュ
→関連項目ダルシマー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デュティユー」の意味・わかりやすい解説

デュティユー
Dutilleux, Henri

[生]1916.1.22. アンジェ
[没]2013.5.22. パリ
フランスの作曲家。画家や音楽家の多い家系に生まれ,1933年パリ音楽院に入学,1938年ローマ大賞受賞した。1942年パリのオペラ座に職を得たが,第2次世界戦後は 1963年までフランス国立放送に勤務した。1961~70年パリ・エコール・ノルマル音楽院で,1970~71年パリ音楽院で作曲を教えた。特定の演奏者のための作品や委嘱作品を多く手がけており,代表曲に,オーケストラと室内楽の二重編成が特徴的な交響曲第2番『ル・ドゥーブル』(1959),『五つの変遷』(1965初演),チェロ協奏曲『遙かなる遠い国へ』(1970),弦楽四重奏曲『夜はかくの如く』(1977),管弦楽曲『響き,間隙,動き』(1978),バイオリン協奏曲『夢の樹』(1985),ソプラノとオーケストラのための『往復書簡』(2003初演),『時間,大時計』(2007初演)などがある。クロード・ドビュッシーやアルベール・ルーセルモーリスラベル,さらにはジャズ影響を受けながらも,神秘的な感覚に満ちた,独自の現代的スタイルを特徴とする。1967年国民音楽大賞,2005年エルンスト・フォン・ジーメンス音楽賞を受賞。レジオン・ドヌール勲章を授与され,1981年アメリカ芸術科学アカデミーの名誉会員となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「デュティユー」の意味・わかりやすい解説

デュティユー
Henri Dutilleux
生没年:1916-

フランスの作曲家。パリ音楽院で学び,1938年にローマ大賞を受ける。現在のフランスで,J.M.ラベルA.ルーセルの伝統につらなる第一人者と目され,1967年に文化省から国の名において大賞を授与された。70年以来母校の作曲科教授。寡作だがその作品はきわめて精密に組織され,出発時は新古典主義的であっても,彼自身が言うように,〈内面的な進展に従いおのおの特色のある形態をとっている。その形式,構成はしだいにできあいのものから遠ざかる〉傾向を見せ,無調性,旋法性などをしめす。《フルート・ソナタ》(1942),《ピアノ・ソナタ》(1948),弦楽四重奏曲《かくて夜は》(1976),《交響曲第1番》(1951),《同第2番》(1959),バレエ曲《狼》(1953),管弦楽曲《メタボール(語句変換法)》(1964),同《音色・間・運動》(1977),チェロ協奏曲《遠いひとつの国》(1970)などいずれも評価が高い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デュティユー」の意味・わかりやすい解説

デュティユー
でゅてぃゆー
Henri Dutilleux
(1916―2013)

フランスの作曲家。アンジェ生まれ。パリ音楽院でガロン兄弟、ビュッセルHenri Büsser(1872―1973)らに師事。1938年ローマ大賞受賞。1961年高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)作曲科教授、1969~1974年同学長を務めた。1970年パリ音楽院作曲科教授に就任。ドビュッシー、ラベル、ルーセルなどの影響を受けるが、伝統や流派にとらわれずに独自の音楽語法を確立した。代表作には『ピアノ・ソナタ』(1947)、二つの交響曲(1950/1959)、バレエ音楽『狼(おおかみ)』(1953)、オーケストラのための『メタボール』(1964)、チェロ協奏曲『遠き世界へ』(1970)、弦楽四重奏曲『夜はかくのごとく』(1977)、管弦楽曲『音色・空間・運動』(1978)、バイオリン協奏曲『夢の樹(き)』(1985)などがある。1997年(平成9)武満徹(たけみつとおる)作曲賞(この年はネクスト・ミレニアム作曲賞の名称で実施)の審査員を務めた。二度来日している。

[寺田兼文]

『Caroline Potter:Henri Dutilleux;His Life and Works(1997, Ashgate Publishing Company)』

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「デュティユー」の解説

デュティユー

フランスの作曲家。曽祖父は高名な画家で、ドラクロワの友人でもあった。1916年アンジェ生まれ。33年にパリ音楽院に入学し、作曲をビュッセールに師事。38年、ローマ賞受賞。
初期の作品にはラヴェルの影響 ...続き

出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報

世界大百科事典(旧版)内のデュティユーの言及

【フランス音楽】より

…蓋然性の音楽で注目を集めている作曲家クセナキスは,ギリシアの音楽家である。こうした新しい音楽へのかつてない要求を回避せず,しかも伝統的なフランス音楽を継承していこうとする,デュティユーらの存在を,決して忘れるわけにはいかないであろう。【平島 正郎】
[民俗音楽]
 フランスの民謡,民俗音楽は,すべてが中庸で,調和のとれた穏やかな風土,環境から生まれた。…

※「デュティユー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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