デルフィニウム(その他表記)rocket larkspur
Delphinium ajacis L.

デジタル大辞泉 「デルフィニウム」の意味・読み・例文・類語

デルフィニウム(〈ラテン〉Delphinium)

キンポウゲ科デルフィニウム属の植物総称ヒエンソウなど。

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精選版 日本国語大辞典 「デルフィニウム」の意味・読み・例文・類語

デルフィニウム

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] delphinium ) キンポウゲ科ヒエンソウ属植物の総称。北半球の温帯に約二〇〇種知られている一年草または多年草。葉は三出の掌状複葉で柄があり、花は左右相称、両性。総状または穂状花序に咲く。萼片は五で花弁状、後部のものは距になる。花弁は二~四枚。通常青色で多数の雄蕊がある。ヒエンソウは南ヨーロッパ原産で、明治初年日本へ渡来した。花穂が長く、花が青色で中心が暗紫色になり、虫がとまっているように見える。この仲間のデルフィニウム‐エラーツムはピレネーから西アジアの乾燥地に自生し、これを原種にして約四〇〇〇の園芸品種が作り出されたという。

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改訂新版 世界大百科事典 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム
rocket larkspur
Delphinium ajacis L.

切花用として,また花壇に栽培されるキンポウゲ科の秋まき一年草。花の形からチドリソウ(千鳥草)とも,ヒエンソウ(飛燕草)とも呼ばれる。茎は高さ80~100cm,直立し,上部で小枝を分け,5月に総状にたくさんの花をつける。葉は秋から冬の苗のうちは根生しているが,春に茎が直立すると,掌状に3裂し,さらに2~3回羽状に細裂した葉を茎に互生する。花は赤,紫,ピンク,白などに彩られた5枚の萼が花弁のように見え,大小不同で,基部の最も大きな1片に距がある。八重咲品もある。種子発芽は15~17℃であるから,まきどきは東京地方で10月中旬。移植は好ましくないので直まきする。苗の育ちをみて逐次間引き,最後に株間を20cm程度とする。花壇や畑のつごうではビニル小鉢で育苗し春になって定植してもよい。寒気には強いので,軽い霜よけ下に保護するとよい。暖地では8月中に適湿の冷蔵庫で発芽させ,ビニルポットで育苗したものをハウスに定植すると早咲きさせることができる。一般に鉢植えは行われないが,矮性(わいせい)の1品種ドワーフ・バタフライdwarf butterflyは鉢植え,花壇専用の青藍色花で,草丈30cmで開花する。また高性種でも苗のうちに心摘みして分枝させると,鉢植栽培ができる。

 ヒエンソウ属Delphinium(英名larkspur)は,北半球の温帯域に約250種が分布し,それらの多くは美しい花を有し,数種が園芸植物として栽植される。オオバナヒエンソウD.grandiflorum L.は,中国やシベリア原産の多年草であるが,この種と他のヒエンソウ属植物との交配改良種ジャイアント・パシフィック・ヒブリダGiant Pacific Hybridaは,草丈1m,花径は5~6cmの大輪で,淡青,青,紫,ピンク,白などの花色があり,1茎に数十輪もつける雄大な花穂をつける。高冷地で切花用に栽培されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム
でるふぃにうむ
[学] Delphinium

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)デルフィニウム(オオヒエンソウ)属の総称。英名ラークスパーlarkspur。直立性の多年草または一年草。葉は有柄で3出複葉または掌状。花は総状、穂状、円錐(えんすい)花序につき、おもに青紫、赤紫、淡紅、白色などの花を開く。萼片(がくへん)は5枚、花弁状で、後部のものは伸びて距(きょ)となる。花弁は2~4枚、上部の2枚は萼距の中にある。属名はギリシア語のdelphin(イルカ)により、花の形からついた。山地に生え、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに約200種分布し、園芸品種は数千種に上る。日本では秋播(ま)き一年草のヒエンソウ(飛燕草)Consolida ajacis (L.) Schur(D. ajacis L.)が多くつくられていたが、近年はD. elatum L.、D. formosum Boiss. et Huet.、D. grandiflorum L. var chinense Fisch、などを材料として育種した八重咲きの高性種(高さ2メートル、花穂は長さ1メートル)や鉢物用の矮性(わいせい)種が盛んに栽培されるようになった。土質は排水のよい肥沃(ひよく)な弱アルカリ性土壌が適する。日光に当てるとよい。本属の植物はデルフェニンほかのアルカロイドを含むものがある。

[鈴木龍二 2020年3月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム
Delphinium; larkspur

キンポウゲ科デルフィニウム (オオヒエンソウ) 属の総称で,北半球の温帯各地とアフリカの山岳部に 200種以上が分布する。一,二年草または多年草。多くの品種が切り花や鉢植え,花壇用に栽培されている。葉は掌状に裂け,対生する。花は左右総称で,直立する総状花序を形成。5枚の花弁状の部分は萼片 (がくへん) にあたる。デルフィニウム・エラツム D.elatumを中心にいくつかの原種を交雑し,たくさんの園芸品種が作出された。花色は青色を中心に,空色,淡青色,紫色,紫紅色,赤色,桃色,白色のほか,黄色系の品種も生れている。花穂が 40cm以上になる品種もあり,壮大で美しい。夏に冷涼で乾燥した気候が適している。日本の夏の気候は元来あまり適さないが,夏期冷涼な地域ではみごとな花を見ることができる。種子は秋にまく。多年草系の種類は株分けでふやすことができる。

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百科事典マイペディア 「デルフィニウム」の意味・わかりやすい解説

デルフィニウム

北半球に広く分布するキンポウゲ科の草本で,200種以上ある。かつてはチドリソウ(ヒエンソウとも)と同属とされていたが,現在は植物学的にも園芸的にも区別される。草丈は30cm〜2mのものまであり,長い柄をもち掌状に浅〜深裂する葉を互生し,茎の先に総状花序をつける。花は,着色した花弁状の萼(がく)が目立つことではチドリソウに似るが,花弁が4個ある点で異なる。ただし,デルフィニウムの名でもっぱら栽培されるのは,19世紀半ばから欧米で交雑育種された,豊富な花色と長大な花序をもつ膨大な園芸品種群で,花型は一重から半八重・八重咲まである。

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